【刑法改正】不同意性交等罪とは|成立要件と刑罰を解説
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【刑法改正】不同意性交等罪とは|成立要件と刑罰を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

不同意性交等罪とは、同意していない強制的な性交を罰するものです。2023年7月に施行された改正刑法によって新設されました。

本コラムでは、この罪の定義や刑罰、成立するための要件に加え、従来の強制性交等罪との違いについても解説しています。

1. 不同意性交等罪とは

不同意性交等罪は、従来の強制性交等罪と準強制性交等罪とが一本化されて新設されたものです。ここでは、この罪の定義と刑罰について解説します。

(1)不同意性交等罪の定義

その名の通り、被害者の同意を得ぬまま性交などを行った場合に適用されます。暴行や威嚇、飲酒、心神喪失などによって、同意してはいないことを被害者が表明するのが難しかったと認められた場合にも適用されます。

従来は、こうした行為に対して適用できたのが強制性交等罪と準強制性交等罪であり、加害者から暴力や脅迫を受けるなどして、被害者の心身が正常ではない状態に陥っていた状況が認められることが要件となっていました。

不同意性交等罪ではたとえば、被害者がアルコールや薬物を摂取して、正常な判断力を喪失していたり、加害者の威嚇で恐怖を感じて動けなくなってしまったりした場合などにも同罪に問われるようになりました。

(2)不同意性交罪等の刑罰

5年以上の有期拘禁刑が科されます。ただし、拘禁刑は2025年に施行される予定の改正刑法で規定されることになっているものです。それまでは5年以上の有期懲役刑が科されます。これは強制性交等罪・準強制性交等罪の刑罰と同様です。

拘禁刑とは一定期間、刑事施設に身柄を拘束される刑罰です。刑法の刑罰は、死刑である生命刑、罰金・科料が科される財産刑、懲役・禁錮・拘束の自由刑の3つに分けられます。このうち刑務が義務付けられる懲役と、義務付けられない禁錮とが実情に合っていないという理由から、改正刑法で拘禁刑に一本化されることになります。

2. 不同意性交等罪の改正点

不同意性交等罪が成立するための要件、行為の同意が認められる年齢、時効のそれぞれについて、どのように改正されたのかを解説します。

(1)成立要件

強制性交等罪と準強制性交等罪の要件が、加害者による暴行や脅迫といったことであったのに対し、かなり拡大されています。行為を強要された際の被害者の状況が以下に該当する場合は、罪に問われます。

  • 暴行や脅迫を受けた
  • 心身に障害があった
  • 薬物やアルコールを飲んでいた
  • 睡眠中などであり、意識がはっきりしていなかった
  • 同意しない意思を持てなかったり、表明できなかったりした、またはその時間がなかった
  • 予想できない事態に直面し、恐怖を感じたり、驚愕(きょうがく)したりした
  • 虐待による心理的反応があった
  • 経済的や社会的な地位の影響力で、自身に不利益が生じることを危惧した

(2)性交同意年齢の引き上げ

従来の13歳から16歳に引き上げられました。相手が13歳未満の場合には、同意があったとしても罪に問われます。13歳以上16歳未満のときは、

  • 加害者と被害者との年齢差が5歳未満であり、被害者が同意していれば罪には問われない
  • 年齢差が5歳以上である場合には、たとえ同意があっても罪に問われる

と、双方の年齢差が問題になってきます。

(3)時効の延長

刑法と同時に改正された刑事訴訟法によって公訴時効が延長されました。従来は10年だった時効が15年になりました。被害者が18歳未満だった場合には、18歳を迎えるまでの期間が時効に加えられるようになったため、被害者が33歳を迎えるまでは時効にはなりません。

3. 不同意性交等罪以外の改正点

刑法が改正されたことによって、新設・改正などが行われたものがあります。

(1)不同意わいせつ罪

強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪とが不同意わいせつ罪に統合されました。被害者が行為に同意していないことを表明したり、まっとうしたりするのが難しい状況において、抱きついたり、キスをしたりした場合に適用されます。罰則は6か月以上10年以下の拘禁刑です。公訴時効は従来の7年から5年延長され、12年になっています。

(2)性的姿態等撮影罪

いわゆる性的姿態撮影等処罰法が施行されたのにともない、性的姿態等撮影罪が新設されました。下着や性器の盗撮、性的行為の無断撮影、芸術などにカムフラージュし、性的なものではないと信じさせたうえでの撮影が罪に問われます。3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されます。

(3)面会要求罪

16歳未満の子どもに対して、わいせつな行為を目的に面会を要求することも新たに処罰の対象になりました。脅迫や金銭の提供などによって面会を要求すれば1年以下の懲役または50万円以下の罰金が、また実際に面会した場合には2年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。さらに、わいせつな写真や動画を送るように要求することも罪に問われ、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

改正刑法によって、性犯罪に対する司法の目はより厳しくなりました。性犯罪での前科がつくと、自身が身柄を拘束されたり、罰金を科されたりするだけでなく、家庭にも大きな影響を与えます。

万が一性犯罪の疑いをかけられ、逮捕されることになってしまった場合には、不当な罪に問われることがないよう、専門知識を持つ弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年11月14日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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