無期懲役とは|仮釈放される可能性はある? 終身刑との違いも解説
殺人罪や強制わいせつ等致死罪、現住建造物放火罪などの重大な罪を犯してしまった場合には、裁判によって「無期懲役」が言い渡される可能性があります。
本コラムでは、無期懲役とは何か、終身刑との違い、仮釈放の可能性などについて解説します。最後に、家族が無期懲役になった場合の対応法についても触れています。
1. 無期懲役とは?
無期懲役とは、期限が定められずに科される懲役のことです。懲役5年や禁錮2年といった有期懲役の場合には刑を終えると釈放され、社会復帰することが可能です(2022年に刑法が一部改正されたことにより、2025年以降、懲役と禁錮とは拘禁刑に一本化される予定です)。
一方、無期懲役の場合には、明示的な期間が設定されることなく、刑期が続くことになります。恩赦などの特別な理由で有期懲役に転換されて刑期が終了しない限りは一生涯、国の監視下に置かれます。
(1)終身刑とは?
終身刑も、期間が定められずに刑務所などの刑事施設に収監されるのは無期懲役と同様ですが、受刑者が死亡するまでと規定されている点が無期懲役とは異なります。日本の刑法では終身刑は規定されていません。
終身刑を採用しているのは、アメリカやオーストラリアの一部の州、オランダ、スイス、ハンガリー、中国などですが、世界的に見れば少数派です。無期懲役と異なる点は仮釈放がないことです。一定の条件を満たしたとしても、刑務所などの刑事施設を出て社会復帰を目指すことはできません。収監されてしまえば、死亡するまで残りの生涯を刑事施設内で過ごさなければなりません。
(2)無期懲役となる犯罪とは?
法定刑で無期懲役となる可能性がある犯罪の一例としては、
- 殺人罪
- 強盗致死傷罪、強盗殺人罪
- 強盗・強制性交等及び同致死罪
- 強制わいせつ等致死罪
- 現住建造物放火罪
- 身代金目的略取等罪
などが挙げられます。そのほかにも、国家体制の転覆をたくらむ罪を犯した場合には、無期懲役が科される可能性があります。
(3)無期懲役と死刑の判断基準とは?
無期懲役の判決が出るか、死刑判決が出されるかについては、両者を線引きする明確な判断基準が設けられているわけではありません。「より重大な罪を犯した」と判断された場合には、死刑判決が出されます。
これまでの判例を見る限りでは、犯罪の罪質や残虐性、死亡した被害者の数、社会的な影響、さらには受刑者に更生する可能性があるのか、といったことを含めて、さまざまな角度から判断されています。
2. 無期懲役でも仮釈放は可能なのか?
無期懲役では、一定の期間を過ぎると仮釈放が許可される場合があります。法律上は、刑の執行から10年が経過し、受刑者が自分の罪を反省して、再び罪を犯す可能性がない状態にあると判断されれば、仮釈放を決定してもよいことになっています。
ただし現在は、有期懲役の最長である30年を超えてから初めて仮釈放について審議されることがほとんどです。実際に仮釈放される可能性は極めて低いといわざるを得ません。
(1)仮釈放となる条件
懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。
刑法 第28条
刑期が10年を経過しており、かつ受刑態度が良好であって、受刑者が事件について反省している、再犯の可能性が低い、本人が仮釈放を希望している場合には、総合的な判断のうえ、仮釈放の可否が決定されています。
(2)仮釈放が認められる確率・平均期間
2012年から2021年までの10年間で見た場合、無期懲役受刑者の仮釈放が認められた確率が1%を超えた年はありません。2021年を例に挙げると、年末に刑事施設に在所した無期刑受刑者1725人のうち、仮釈放となったのは9人であり、仮釈放率は0.52%です。
仮釈放までの平均期間は、2000年が23年5か月だったのに対して、2007年には31年10か月となり、初めて30年を超えました。2022年には32年10か月となっており、2012年以降、2022年までの11年間では30年を下回った年はありません。
出典:日本弁護士連合会「裁判員の皆さまへ 知ってほしい刑罰のこと」
出典:法務省「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」
3. 無期懲役で仮釈放された後の生活は?
無期懲役で仮釈放を許可されたとしても、刑期が終わったわけではありません。刑務所などの刑事施設を出た後も国の監視下に置かれることになっており、罪を犯す前のように完全に自由な生活が送れるわけではありません。定期的に保護観察官や保護司と面談することが求められ、社会生活を送りながら、更生を図っていきます。
(1)一般遵守事項・特別遵守事項を厳守しなければならない
仮釈放された受刑者(保護観察対象者)には、守らなければならない決まりがあります。この「決まり」には、すべての保護観察対象者が守るべき一般遵守事項と、保護観察対象者ごとに内容が決められている特別遵守事項との2つがあります。
一般遵守事項には、健全な生活態度を保持することや、届け出た住所に居住すること、転居や7日以上の旅行をする場合には保護観察所の長の許可を得ることなどがあります。特別遵守事項には例えば、犯罪性のある者との交流や浪費、いかがわしい場所への出入りの禁止や、労働やボランティアへの従事、犯罪的傾向を回避するための特別なプログラムの受講などが記載されています。
4. 家族が重大な罪を犯したら弁護士に相談を
大事な家族であっても、重大な罪を犯してしまえば、無期懲役が科される可能性があります。仮釈放の可能性はゼロではないものの、これまでの実績から考えれば認められる可能性は非常に低く、長期にわたって服役しなければならないことを覚悟する必要があります。
有期懲役を獲得するためには、プロの視点からアプローチしていくことが重要です。万が一の際には、弁護士へ相談し、サポートを受けることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年10月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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