背任罪とは? 逮捕後の流れから罪の重さまで解説
「背任罪」という犯罪の名を耳にする機会はあまりないかもしれません。
令和3年中に全国の警察で認知した背任事件の数はわずか63件でした。このような実情をみると、よほど成立しにくいのか、あるいは発生すること自体がめずらしい犯罪なのではないかと思えるでしょう。しかし、背任罪は、実は意外と身近なところでも起きる犯罪です。
本コラムでは、背任罪とはどんな犯罪なのか、逮捕後の流れや刑罰の重さを解説します。
1. 背任罪とは?
背任罪は第247条に定められている犯罪です。ここでは、背任罪が成立する要件や実際の事例を紹介していきます。
(1)背任罪が成立する要件
背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図ったり、または本人に損害を加えたりする目的で、その任務に背く行為をして、本人に財産上の損害を加えたときに成立します。
これを整理すると、次のように解釈できます。
①他人のためにその事務を処理する者
本人からの委託によって事務処理をする者を指します。たとえば、会社から指示を受けて業務にあたる社員・従業員などが典型です。
②自己もしくは第三者の利益を図ったり、または本人に損害を加えたりする目的
事務処理は本人の利益を目的として委託されるものなので、別の第三者の利益を図ったり、本人に損害を加えたりする目的があった場合は本罪の処罰対象です。これを「図利加害目的」ともいいます。
③その任務に背く行為
本人から与えられた任務に背く行為です。不正融資や不良貸付のほか、虚偽の審査・鑑定結果を出すなどの行為も任務違背行為にあたります。
④本人に財産上の損害を加えた
図利加害目的をもった任務違背行為によって、本人に財産上の損害が生じれば本罪が成立します。なお、実際には損害が発生しなかったとしても、図利加害目的・任務違背行為があった場合は背任未遂として処罰されます。
(2)実際に背任罪に問われた事例
令和4年11月、配線器具などの製造販売会社で研究員として勤務していた男が、業務上必要のない金コイルを外部の業者に架空の物品名で発注し、代金約937万円などを請求させ、勤務先に損害を与えたとして、背任罪の容疑で逮捕されました。この逮捕された男は、工場内で製品開発の中心的役割を担っていたそうです。
このような事例に限らず、背任罪は特に会社と従業員という関係において発生するケースが多いことが特徴です。
2. 背任罪の容疑で逮捕されるとその後はどうなる?
背任罪の容疑で警察に逮捕されると、その瞬間から身柄拘束を受けます。取り調べなどの捜査を受けた後、逮捕から48時間以内に検察官への送致手続きがなされ、さらに24時間以内に、逮捕に引き続き勾留すべきかどうかを検察官が判断することになります。
交通事故のように事実が単純な事件だと、この段階で釈放される可能性もありますが、背任罪の場合、事実関係や犯行に至った動機・背景・手口の捜査が難しいため、さらに「勾留」して身柄拘束を続けたまま捜査が継続されるおそれが強いでしょう。
勾留が決定すると、初回で10日間、延長請求があればさらに最大10日間、合計で最大20日間にわたる身柄拘束が続きます。
勾留が満期を迎える日までに、検察官が起訴・不起訴を決定し、起訴が決まると刑事裁判が開かれ、証拠をもとに裁判所が審理して有罪と判断されれば刑罰が科せられます。
一方で、検察官が不起訴とした場合は、刑事裁判が開かれません。身柄を拘束する必要もなくなるので、直ちに釈放されます。
3. 背任罪に対する刑罰の重さ
刑事裁判で有罪判決が言い渡されると、法律が定める範囲内で刑罰が科せられます。
背任罪にはどのような刑罰が科せられるのか見ていきましょう。
(1)背任罪の法定刑
背任罪の法定刑は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
日本では、どのような行為が犯罪となり、どの程度の刑罰が科せられるのかは、すべてあらかじめ法律によって定められています。
(2)背任罪の量刑判断の基準
原則として、法定刑が5年以下の懲役の場合は、1か月から5年の範囲で、50万円以下の罰金なら1万円から50万円の範囲で実際に言い渡される「量刑」が決まります。
裁判官が量刑を判断し、事件の重大性、犯行に至った事情や背景、事件後の反省などを総合的に考慮して量刑が言い渡されます。
背任罪における量刑判断の基準で大きな影響を与えるのは「損害の大小」と「弁済の有無」です。
当然、大きな損害を与えたケースでは、量刑が重い方向へと傾きやすくなりますが、損害が多額であっても会社に対して損害額を支払うなどの弁済があった、あるいは弁済を約束して会社が許した場合は、被害者の実質的な損失が補塡(ほてん)されるため、量刑が軽くなる可能性が高いでしょう。
背任罪の容疑をかけられてしまい、できるだけ刑罰を軽くしたいと望むなら、被害者に対して誠実に謝罪し、弁済に向けた示談交渉を進めるべきです。
しかし、背任事件の多くは被害者が会社などの組織です。組織を相手に個人が交渉を有利に進めるのは難しいので、弁護士に依頼してサポートを受けることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年07月03日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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