暴行罪と傷害罪の違いは? 成立するケースと刑罰を解説
他人に暴力をふるうと「暴行罪」または「傷害罪」に問われることになります。暴行罪と傷害罪は非常に近い関係の犯罪ですが、逮捕される可能性の高さや刑罰の重さが異なるので、どちらの罪に問われるのかは重要な問題です。
本コラムでは、暴行罪と傷害罪の違いや、逮捕される可能性の高さなどを詳しく解説します。
1. 暴行罪と傷害罪の違い
刑法にはさまざまな犯罪が定められていますが、中でも暴行罪と傷害罪は発生件数が多い犯罪です。令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中に全国の警察が認知した暴行事件は2万6436件、傷害事件は1万8145件で、日常的に暴行事件や傷害事件が発生していることがわかります。
ここでは、暴行罪と傷害罪が成立する要件や刑罰を見ながら、それぞれの違いを確認していきましょう。
(1)暴行罪とは?
暴行罪は、刑法第208条に定められている犯罪です。「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立し、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料が科せられます。
ここで指す「暴行」とは、「人の身体に対する不法な有形力の行使」という意味です。典型的な暴力行為としては殴る・蹴るなどの行為が挙げられますが、ほかにも、背中を突き飛ばす・胸を押す・頭髪を引っ張る・胸ぐらをつかむなどの行為も暴行にあたります。
また、「傷害するに至らなかったとき」という要件も含まれているので、暴行を加えたものの相手にケガを負わせなかった場合も本罪の処罰対象です。
(2)傷害罪とは?
傷害罪は刑法第204条に定められている犯罪です。「人の身体を傷害した者」を罰するもので、15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
本罪は、暴行によって「人の身体を傷害した」場合に成立する犯罪です。この「傷害」とは「人の生理機能を障害すること」という意味で、ケガを負わせたり、病気にかからせたりすることを指します。
傷害の程度は問わないので、治療の必要がない程度の軽傷だったとしても、法律の定めに照らせば傷害罪の成立は妨げられません。
暴行罪は「暴力をふるったものの相手にケガをさせなかった」場合に問われるものであり、傷害罪は「相手にケガをさせた」場合に問われるという点がそれぞれの罪の違いです。また、暴行罪と比べ、傷害罪は重大な結果を生じさせているので、刑罰も傷害罪の方が厳しく定められています。
なお、相手にケガを負わせれば傷害罪ですが、相手にケガを負わせて死亡させてしまうと刑法第205条の「傷害致死罪」です。最低でも3年、最高30年の懲役という厳しい刑罰が科せられます。
2. 暴行罪と傷害罪はどちらが逮捕される可能性が高い?
暴行罪と傷害罪は、どちらもケンカなどで相手に暴力をふるった場合に問われることの多い犯罪ですが、相手が警察に被害届を出した場合には逮捕されてしまうのでしょうか?
(1)逮捕には条件がある
ニュースなどで報じられる事件の多くは「容疑者が逮捕された」というものが多いので「罪を犯せば逮捕される」というイメージが強いかもしれませんが、実際にはそうではありません。実は、刑事事件の多くは逮捕を伴わない「在宅事件」です。
令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中に全国の検察庁で処理された事件のうち、逮捕を伴った身柄事件の割合は34.1%でした。つまり、残りの約65%は在宅事件だったことになります。
逮捕とは、犯罪の容疑がある者について、逃亡や証拠隠滅を防ぐため、その身柄を拘束し、捜査機関のもとに置く強制処分を指します。日本国憲法が保障するさまざまな自由が大幅に制限されるので、条件を満たさない逮捕は許されていません。
逮捕が許されるのは、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあるので身柄を拘束する必要があると認められる場合のみです。この二つの条件を「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」といいます。
逮捕の理由と逮捕の必要性が存在することを審査するのは裁判官です。逮捕の許可を求めたが裁判官が許可しなかった場合、あるいは捜査の段階で「逮捕の理由があっても必要性が十分ではない」と判断されるときは、逮捕せずに捜査が進められます。
(2)逮捕の可能性が高いのは傷害罪
暴行罪と傷害罪は、どちらも等しく犯罪です。その点においては、どちらが逮捕されやすい・逮捕されにくいということはありません。
ただし、より悪質で重大な結果を生じさせてしまい、厳しい刑罰が予定されている方が、罪から逃れるために逃亡や証拠隠滅を図りやすいと評価されるのは当然です。
令和4年版の犯罪白書によると、傷害事件の身柄事件の割合は50.0%、暴行事件では34.2%でした。このように、傷害罪の方が逮捕の可能性が高いのは間違いありません。
ただし「傷害罪ではなく暴行罪が適用されれば逮捕されない」と考えるのは誤りです。暴行事件でも、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあると認められれば逮捕の危険があります。
逮捕を避けたいなら「どちらの罪が適用されるのか?」に注目するよりも、早期の示談成立を目指すことをおすすめします。直ちに弁護士に相談して、被害者との示談交渉を進めましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年06月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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