制限が多い!? 保釈の条件や保釈中に守らなければならないこと
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制限が多い!? 保釈の条件や保釈中に守らなければならないこと

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

有名人や芸能人が刑事事件を起こして逮捕されると、後日になって「○○万円で保釈された」といったニュースが報じられることがあります。

本人のコメントもあわせて報じられるので「お金を支払って身柄拘束が解かれた」という状況であるのは理解できるかもしれませんが、なぜ解放されるのか、どうすれば保釈されるのかといった条件が気になる方もいるでしょう。

保釈の条件や保釈中に受ける制限について見ていきましょう。

1. 保釈とは?

保釈は、刑事事件を起こして起訴された被告人の身柄を一時的に解放する制度です。

(1)「保釈」とはどのような制度なのか

保釈が認められると、勾留が解除されて被告人の身柄が解放されます。事件が終結したときの「釈放」とは異なり、あくまでも「一時的な解放」なので、保釈されても被告人として刑事裁判による審理を受けなければなりません。

(2)なぜ保釈制度があるのか

わが国の法律では、法律で定める手続きによらない限り刑罰を科せられず、犯罪の証明がないときは無罪が言い渡されなければなりません。

誰であっても、刑事裁判において証拠に基づいて有罪とされない限り、刑罰を受けることも、犯人として扱われることもないのです。これを「無罪の推定(推定無罪)」の原則と呼びます。

刑事事件の被告人として起訴された段階では、まだ「犯人だ」と決まったわけではありません。被告人の人権を尊重し、社会復帰へのハードルが高くなってしまう事態を防ぐために、一時的に身柄拘束を解く保釈制度が設けられているのです。

2. 保釈されるための条件

一時的にとはいえ、刑事事件の被告人の身柄拘束を解くのだから、保釈が認められるには一定の条件が設けられています。

(1)保釈の種類3つ

保釈には3つの種類があります。

①権利保釈

刑事訴訟法で定められている除外要件に当てはまらない限り、被告人や家族などによる請求があれば必ず許可されます。

②裁量保釈

権利保釈が認められない場合でも、裁判官の職権によって認められる保釈です。

③義務的保釈

勾留が不当に長くなってしまった場合に限って、裁判所が職権で認める保釈です。

(2)保釈されるための条件

保釈の請求権をもつのは、被告人やその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系親族もしくは兄弟姉妹です。これらの立場にある人からの請求があった場合は、まず権利保釈が認められるのかを判断します。

権利保釈が認められるための条件は、次の6点です。

  • 死刑、無期の懲役・禁錮、短期1年を超える懲役・禁錮にあたる重大犯罪ではない
  • 以前に死刑、無期の懲役・禁錮、長期10年を超える懲役・禁錮にあたる重大犯罪について、有罪判決を受けたことがない
  • 常習として長期3年以上の懲役・禁錮にあたる事件ではない
  • 証拠隠滅の疑いがない
  • 被害者・証人、その親族などに危害を加えたり脅したりする疑いがない
  • 氏名・住居が明らかである

これらの条件にひとつでも反していれば、権利保釈は認められません。その場合は、さらに裁判官による裁量保釈が認められるかを検討することになります。

裁量保釈には明確な条件がありません。犯罪の軽重やこれまでの前科・前歴、家族や仕事の有無、健康状態など、さまざまな点を考慮したうえで「勾留の必要がない」「勾留に耐えられない」と判断されれば裁量保釈が認められるでしょう。

義務的保釈が認められるケースはきわめてまれです。勾留の可否については、その都度、裁判官によって厳しく審査されるため、勾留が「不当に長引く」という事態が起きることはほとんどありません。

3. 保釈中に守らなければならないこと

保釈が認められる際には、必ずいくつかの指定条件がつきます。

ここで挙げる条件を守らないと、保釈が取り消されて身柄を拘束されてしまううえに、すでに支払った保釈保証金(保釈金)も没取されてしまうことがあるので注意が必要です。

(1)裁判所からの呼び出しには必ず応じること

保釈は、身柄を拘束しなくても刑事裁判への出頭が確保できていると判断された場合に認められるものです。裁判所からの呼び出しを受けた場合は、指定期日に必ず出頭しなければなりません。「仕事があるから」「その日は用事があるから」といった理由で無視していると、保釈が取り消されてしまうおそれがあります。

(2)無断で引っ越しをしないこと

保釈の際には住居地を届け出ることになります。住居地を変更する際は必ず裁判所に届け出て許可を得る必要があり、郵便物が届かず返送された、裁判所や検察庁の職員が訪問したが居住実態が確認できなかったといった場合は保釈が取り消されます。引っ越しだけでなく、長期の出張や旅行でも裁判所への届け出が必要となります。

(3)被害者や事件関係者に接触しないこと

保釈中は、事件の被害者や共犯者などの関係者との接触が禁じられます。たとえば、事件のことを謝罪したいと思い立って被害者に電話をかけたり、共犯者と会って近況を話し合ったりすれば、保釈が取り消されてしまうおそれが高いでしょう。

共犯者との関係を断ち切るのはもちろんですが、被害者に謝罪したいという気持ちがあっても連絡や接触は厳禁です。

どうしても謝罪の意思を伝えたい場合は、弁護士に相談して謝罪文を差し入れるなどの方法をとるべきでしょう。

(4)一定期間を超える移動、旅行には裁判所の許可が必要であること

保釈条件にも依りますが、一定期間を超える移動、旅行をする場合には裁判所に事前に申告し、許可を得る必要があります。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年02月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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