大声で怒鳴ると暴行罪になる? 暴行罪が成立するケースと法定刑
  • 2021年07月05日
  • 犯罪・刑事事件

大声で怒鳴ると暴行罪になる? 暴行罪が成立するケースと法定刑

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

誰かと口論になったり、相手に厳しく注意をしようとしたりといった場面では、つい大声で怒鳴ってしまうこともあるかもしれません。しかし、周囲の人までもが驚くほどの剣幕で怒鳴ってしまうと、その場にいた人が異常を察知して警察に通報してしまうおそれもあります。

殴る・蹴るといった暴力をはたらいていなくても、怒鳴るのは乱暴な行為であることには変わりないので、暴行罪が成立してしまうのではないかと気になってしまう方もいるでしょう。

大声で怒鳴る行為は暴行罪に該当するのでしょうか?

1. 「怒鳴る」という行為は暴行罪に問われるのか?

暴行罪は、殴る・蹴るといった単純な暴力行為だけでなく、腕や胸ぐらをつかむ、髪の毛を引っ張るといった行為も処罰の対象とする犯罪です。このように考えると、大声で怒鳴る行為でも暴行罪が成立する可能性があるように感じられますが、実際に暴行罪は成立するのでしょうか?

(1)暴行罪に該当するかは「不法な有形力の行使」であるかが問題となる

暴行罪は、刑法第208条に規定されている犯罪です。暴行を加えた者が相手を傷害するに至らなかった場合に成立し、相手を負傷させた場合は刑法第204条の傷害罪が成立します。
たとえば、まったく同じ力で相手を殴ったとしても、相手が負傷しなければ暴行罪が、相手が負傷すれば傷害罪が成立することになります。

暴行罪が成立するのは、相手に暴行を加える故意をもったうえで「不法な有形力の行使」があった場合です。この「不法な有形力の行使」にあたる行為は実に幅広く、さまざまな行為が暴行罪の対象となります。
たとえば、殴る・蹴るといった暴力行為はもちろん、身体や衣服の一部をつかむといった暴力行為というには軽微な行為でも暴行罪が成立してしまいます。

また、不法な有形力の行使は、必ずしも相手の身体に接触する必要はありません。相手を驚かせてやろうと考えて足もとに石を投げつける行為や、近年では悪質な行為として認識されている自動車のあおり運転などでも、暴行罪が成立する可能性があります。

(2)「音」による暴行が成立するケース

暴行罪が成立するとした判例のなかには、”音”による暴行を認めたものがあります(最高裁 昭和29年8月20日)。この事例では、ブラスバンド用の大太鼓を室内で連打し、相手の頭脳の感覚を鈍らせて意識をもうろうとさせた行為について暴行罪の成立を認めています。

大声で怒鳴った場合でも、相手の耳元で大声を出し続けて相手をもうろうとさせるなどの過度な状況があれば「不法な有形力の行使」があったものと判断され、暴行罪が成立する可能性があるわけです。

ただし、音による暴行罪が成立するのは非常に限られた状況下においてのみでしょう。

単に大声で怒鳴っただけで暴行罪が成立するのではなく、不法な有形力の行使と認められるには、大声で怒鳴った状況や回数・時間・場所なども加味されることになります。

(3)暴行罪以外の罪に問われることも

大声で怒鳴る行為は、暴行罪だけでなくほかの犯罪が成立してしまうおそれがあるという点にも気をつけておきたいところです。
相手に危害を加える内容を告知して畏怖させた場合は刑法第222条の脅迫罪が成立するほか、衆人環視のなかで相手の社会的信用をおとしめる事実の摘示をすれば刑法第230条の名誉毀損(きそん)罪、事実の摘示をしない場合には刑法231条の侮辱罪が成立する可能性があります。

2. 暴行罪の法定刑

暴行罪に問われて刑事裁判で有罪判決を受けた場合は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留、もしくは科料の刑罰を受けます。

懲役の上限が2年であることや、ごく短期の身柄拘束である拘留、1万円未満の金銭徴収を受ける科料が規定されているといった点をみれば、数ある犯罪のなかでも軽微な犯罪であるともいえるでしょう。
ただし、罰金や拘留・科料でも有罪判決を受ければ前科がつくため、決して軽んじるべきではありません。

(1)微罪処分となる可能性もある

暴行罪は、比較的軽い刑罰が規定されているだけでなく、重大な危害を加えるといった悪意の高い犯罪ではないため、微罪処分の対象となる可能性もあります。
微罪処分とは、犯情が軽微な特定の犯罪に限って、被害者への謝罪や被害弁償が果たされており、被害者が被疑者の処罰を望まないことを条件に、警察限りで事件を集結させる手続きです。微罪処分となった場合は、検察庁へと事件を送致されないため、刑事裁判になることも有罪判決を受けることもありません。

加害者にとっては有利ともいえる処分ですが、微罪処分となる具体的な基準は明確にされておらず、どのようなケースであれば該当するかを判断するのは難しいといわざるを得ません。そのため、暴行罪で逮捕された場合は、微罪処分になる可能性はあるものの、刑罰を受ける可能性が高いと心得ておくべきでしょう。

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