公正証書に基づく強制執行とは? その方法と流れを分かりやすく解説
協議離婚をする際に養育費の支払いを確保したい場合や、金銭を貸した際に返還を確保したい場合などに、債務者の将来の不履行に備えて公正証書を作成することがあります。
公正証書を作成しておいた方がよいということを聞き作成をしたものの、いざ債務者の不履行があったときにはどうすればよいかわからないという方もいるかもしれません。
今回は、公正証書に基づいて強制執行を検討している方に向けて、強制執行の方法と流れを解説します。
1. 公正証書の執行力とは?
公正証書には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。また、強制執行をするためにはどのような公正証書を作成する必要があるのでしょうか。
(1)公正証書とは
公正証書とは、法律実務に深くかかわった公証人がその権限に基づいて作成する文書のことをいいます。法的有効性が認められた公文書ですので、公正証書は「高い証拠力がある文書」といえます。
また、公正証書は原本が公証役場に保存されるため、紛失や偽造のおそれがありません。
そして、公正証書を作成する最大のメリットは、公正証書に「執行力」があるという点です。執行力とは、債務者が契約で定めた債務の履行を怠った場合に、債務者の財産に対して強制執行ができる効力のことをいいます。
執行力を得るためには、通常は、裁判所に訴えを提起し、原告の請求を認容する判決が言い渡され、確定する必要があります。しかし、このような手段をとるには、ある程度の期間と費用を必要とするため、容易な手続きではありません。
しかし、「執行力を有する公正証書」は、このような裁判所を経由した手続きを省くことができますので、簡易かつ迅速な方法で債権回収の実現を可能にするものといえます。
(2)強制執行するためには強制執行認諾文言が必要
公正証書で強制執行をするためには、金銭の支払いを目的とする債務について、「強制執行認諾文言」が付されていることが必要になります。
たとえば、「○○は、本契約上の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服することを認諾する」というような条項が公正証書に記載されていることが必要です。
この文言があるかないかで、面倒な裁判手続きが必要になるかどうかが変わってきますので、金銭の支払いを目的とする債務について、公正証書を作成する際には、必ず入れるようにしましょう。
2. 強制執行手続きの流れ
強制執行認諾文言付きの公正証書を作成したときには、以下のような流れで強制執行の手続きをとることができます。
(1)送達証明書の交付
公正証書が作成されたら、公証役場はその正本を債務者に送達する手続きを行います。公正証書の作成のときに、債務者本人が出頭している場合は、その場で送達(交付送達)の手続きを行いますので、改めての送達の手続きはされません。
送達証明書は、申請をしなければ付与されませんので、公証役場に交付の申請をしましょう。
(2)執行文の付与
強制執行を行うためには、債務名義が執行力を現に有していることが必要になります。公正証書正本の末尾などに、「債権者は、債務者に対し、この公正証書によって強制執行をすることができる。」という執行文が付与されているか確認をしましょう。
そのような執行文が付与されていない場合には、強制執行を申し立てる前に、公証役場に執行文付与の申し立てを行い、執行文の付与を受けておく必要があります。
(3)裁判所に強制執行の申し立て
送達証明書と執行文の付与された公正証書正本、その他の必要書類を添えて、裁判所に対して強制執行開始の申し立て書を提出します。
また、申し立ての際には、差し押さえをする対象財産を特定する必要があります。たとえば、預金を差し押さえるのであれば金融機関名と支店名を、給料の差し押さえであれば勤務先を特定して行います。
令和2年4月1日から民事執行法が改正され、公正証書であっても財産開示手続を利用することができるようになりました。これによって、相手の財産を特定することも可能になります。
強制執行を考えているが相手の財産が不明な場合や、強制執行をどのようにしたらよいかわからないという場合には、弁護士への相談を検討しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2021年05月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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