- (更新:2023年05月29日)
- 企業法務
知的財産権の侵害リスクとは? 基礎知識と回避方法を解説
技術・コンテンツの重要性は年々高まっており、今日ではほとんどの企業が、知的財産権と何らかの関わりを持っています。こうした状況の中で、他の会社から知的財産権の侵害を理由として訴えられてしまうと、自社にとって不測の損害が生じてしまいかねません。
この記事では、知的財産権の侵害に関する基礎知識や、侵害リスクの回避方法などについて解説します。
1. 知的財産権の侵害とは?
まずは、知的財産権侵害に関する基礎知識について解説します。
(1)知的財産権=独占利用権|勝手に利用すると侵害に
「知的財産権」とは、人間の創造的活動によって生み出された無形の資産について認められる権利の総称を意味します。
各種の知的財産権に共通しているのは、知的財産権を有する権利者に一定の範囲で権利の独占利用が認められていることです。つまり、誰かが知的財産権を有している技術・コンテンツなどについては、他の人が権利者に無断で利用すると違法になります。
したがって、知的財産権に関連する技術・コンテンツなどを取り扱う企業としては、自社のビジネスが他者の知的財産権を侵害していないか、常に気を配っておく必要があるのです。
(2)主な知的財産権の種類
知的財産権にはさまざまな種類があり、それぞれ個別の法律によってルールが決められています。日本における主な知的財産権の具体例としては、以下のものが挙げられます。
①特許権
自然法則を利用した、新規かつ高度で産業上利用できる発明を対象として認められる知的財産権です。物の発明、方法の発明、物の生産方法の発明と3つのタイプがあります。また、保護期間は原則として出願から20年で、医薬品などに見られるように一定の場合は延長できます。
②実用新案権
物品の形状・構造・組み合わせに関する考案を対象として認められる知的財産権です。例として「ペットボトルのキャップ」など生活用品が対象となることが多く、身近なもののちょっとした発明がこれに当たるといえます。保護期間は出願から10年です。
③意匠権
物のデザインを対象として認められる知的財産権です。独創的で美感を有する物品などの形状、模様、色彩などのデザインがこれに当てはまります。コピー商品や類似商品の対策として自社の権利を保護するために有効な手段とされています。保護期間は出願から25年です(平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願は設定登録の日から最長20年、平成19年3月31日以前の出願は設定登録の日から最長15年です)。
④商標権
商品やサービスに使用されるマーク(文字、図形など)を対象として認められる知的財産権です。商標登録をすることで模倣でのブランドイメージ低下などを防ぐことができます。保護期間は出願から10年ですが、必要な場合には更新登録の申請により何度でも延長可能です。
⑤著作権
文芸・学術・美術・音楽・プログラムなどの思想又は感情を創作的に表現したものを対象として認められる知的財産権です。著作権の内容は大きく分けて2つで、著作物を通して表現されている著作者の人格を守るための「著作者人格権」と著作権者が著作物の利用を許可してその使用料を受け取ることができる「著作権(財産権)」となります。著作権の保護期間は、原則として著作者の死後70年経過するまでです。
⑥営業秘密(不正競争防止法)
企業が保有する事業活動に有用なノウハウなども、営業秘密として法律上の保護を受けます。営業秘密には「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の3つの要件があります。また、営業秘密の不正使用行為に対する差止請求権については、営業秘密の保有者が侵害行為と侵害者を知ってから3年、または侵害行為開始時から20年の期間制限があります。
(3)知的財産権侵害に対するペナルティ
知的財産権を侵害した場合、大きく分けて以下の3つのペナルティが科される可能性があります。
①差し止め
裁判所により、知的財産権の侵害に該当する利用行為(販売・掲示など)の差し止めが命じられます。
②損害賠償
知的財産権の侵害行為により権利者に与えた損害を賠償する責任を負います。なお、不当に得た利益が権利者に与えた損害として扱われる場合もあります。
③刑事罰
知的財産権侵害のうち、特に法律で定められた行為類型については、刑事罰の対象となる可能性があります。
2. 知的財産権を侵害するリスクを回避するには?
知的財産権の侵害で訴えられてしまうと、自社に経済的な面での実害が生じるほか、対外的なレピュテーションの面でも大きくマイナスに働いてしまいます。
知的財産権の侵害リスクを回避するには、以下の点に留意した対応が求められます。
(1)行政のデータベースを利用して事前調査を行う
自社として公式に技術やコンテンツを利用した商品・サービスをリリースする場合、知的財産権に関する網羅的な事前調査を行うことが不可欠です。
登録が必要な知的財産権(特許・実用新案・意匠・商標)については、行政機関が運営している専用のデータベースが存在します。
(参考:「特許情報プラットフォーム」(独立行政法人工業所有権情報・研修館))
一方著作権については、著作物が生み出された時点で権利が発生するため、専用のデータベースは存在しません。
そのため、適宜Google検索などを利用した調査を行うことが考えられますが、ネット上に公開されていない著作物もあるので注意が必要です。
上記の各方法を用いて、自社がリリースしようとしている商品・サービスの中で、既存の知的財産権と類似した技術・コンテンツなどが利用されていないか、事前にきちんと調査しましょう。
(2)侵害の疑いが生じたら速やかな危機管理対応を
しかし、世の中には無数の知的財産権が存在するので、事前調査に漏れが生じ、後から知的財産権の侵害が判明するというケースも、一定の確率で生じてしまいます。
自社が知的財産権を侵害している可能性が浮上した場合には、速やかに調査に着手することが大切です。
そのうえで、侵害に当たると判断されるのであれば、商品・サービスを回収して謝罪し、再発防止策の徹底に努めましょう。
迅速かつ適切な危機管理対応をとることにより、自社に生じる経済的ダメージや、レピュテーションの毀損を最小限に食い止めることができます。
一方、知的財産権の侵害には当たらないと判断される場合には、弁護士に相談して法的な観点から反論を行いましょう。訴訟対応には膨大な労力を要しますが、迅速な問題解決に繋がります。
- こちらに掲載されている情報は、2023年05月29日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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