商標権侵害で差止請求や損害賠償請求を受けた場合の対処法を解説
商品やサービスなどに付されたマークなどの「商標」は、企業ビジネスにとって看板ともいうべき重要なものです。
もし他社から商標権侵害による差止請求や損害賠償請求を受けてしまった場合、自社のビジネスに生じる悪影響を最小限に食い止めるべく、弁護士・弁理士に相談しながら適切な対応を行いましょう。
この記事では、商標権に関する概略とともに、商標権侵害により他社から差止請求や損害賠償請求を受けてしまった場合の対処法について解説します。
1. 商標権とは?
商標権とは、業務上生産・提供される商品やサービスに用いられるマークなどを保護する権利です。
(1)商標に当たるマーク等の例
商標法の定義上、「商標」に当たり得るものは以下のとおりです(商標法第2条第1項)。
- 文字
- 図形
- 記号
- 立体的形状
- 色彩
- 上記の各要素の結合
- 音
(2)商標権を得るには商標登録が必要
商標権は、商標使用が開始されただけで自動的に発生するものではなく、特許権などと同様に「設定登録」が必要とされています(商標法第18条)。
商標権の設定登録の出願が行われた場合、同一又は類似する商標がすでに登録されていないか、その他の商標登録の要件を満たしているかについて、特許庁が審査を行います。
なお、商標登録の審査に関しては、特許庁が詳細な審査基準を設けていますので、ご関心のある方は下記のページをご参照ください。
(参考:「商標審査基準」(特許庁))
(3)商標権の効力範囲
商標権の効力には、「専用権」と「禁止権」の二つが存在し、それぞれ効力範囲が異なります。
①専用権
登録商標を独占的に使用できる権利です。商標登録された指定商品または指定役務そのものに、登録商標と同一の商標を使用することについて独占権が認められます(商標法第25条)。
②禁止権
登録商標との誤認混同を防ぐため、登録商標と類似した商標の第三者による無断使用等を禁止できる権利です。
禁止権の適用は、指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用にまで及びます(商標法第37条第1号)。
商標権者は、商標権の侵害者に対して差止請求(商標法第36条第1項)や損害賠償請求(民法第709条)を行うことができます。
(4)商標権の存続期間
商標権の存続期間は、設定登録の日から10年です(商標法第19条第1項)。ただし、商標権者が更新登録の申請を行うと、さらに10年間更新することができます(同条第2項)。
2. 商標権侵害で差止請求・損害賠償請求をされたら?
他社から商標権侵害の差止請求や損害賠償請求を受けた場合、自社にとっては大きな経済的ダメージを被る可能性があるピンチが訪れているといえます。自社にとっての危機を回避するため、以下の方針を基準として、弁護士・弁理士と相談しながら適切な対応を行いましょう。
(1)権利侵害の有無を客観的に分析・調査する
まずは、他社の主張どおりに自社による商標権侵害行為が発生しているのかどうか、客観的な状況分析・検討を行う必要があります。
その際には、他社の登録商標に関するリサーチに加えて、自社の商標が他社の登録商標と「類似」していると言えるのかどうか等、判例実務等も踏まえた法的な検討を行うことが不可欠です。
これらの分析・検討は、知的財産権に精通している弁護士・弁理士に相談しながら行うことをおすすめいたします。
(2)法的な反論を行う
商標権侵害の差止請求や損害賠償請求に関する主な反論としては、以下のものが考えられます。
①非侵害
非類似の主張です。典型的には、他社の登録商標と自社で使っている商標とは類似していないとの主張です。商標の類否判断は、原則として、商標の外観、称呼及び観念を基準に、これらが類似しているか否かとの観点から行われますが、指定商品等の取引の実情が明らかにされる場合には、この点を考慮した判断がなされることになります。
②商標としての使用ではない
他社の登録商標と同一又は類似の商標を使用していても、商品の品質の説明表示等、それが商標としての使用でないのであれば、商標権侵害には該当しません(「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法第26条第1項第6号))。
③商標無効の主張
他社の商標登録に無効事由(商標法第46条第1項各号)がある場合、商標権の行使は認められません(商標法第39条、特許法第104条の3)。
④先使用権の主張
他社の商標登録の出願前から商標を使用しており、自社の商標が需要者の間で広く知られている場合等には、「先使用権」に基づき、商標の継続使用を主張できる場合があります(商標法第32条第1項)。
⑤商標登録の取り消しの審判
代表例として、継続して3年以上、日本国内において他社の登録商標が、指定商品又は指定役務に使用されていない場合等には、商標登録の取り消しに関する審判を請求できます(商標法第50条第1項)。ただし、使用していない商標で権利行使してくる例は多くはないでしょう。
どのような反論が可能であるかはケースにより異なるので、弁護士・弁理士に相談しながら対応を検討しましょう。
(3)自社にとって分が悪いなら和解を検討する
他社の商標権侵害の主張に合理性があると考えられる場合は、商標権侵害物品を直ちに回収する等、その商標の使用を中止し、訴訟で損害賠償を命ずる判決が言い渡される前に、和解をして事態の収拾を図ることも有力な選択肢です。
商標権侵害事件に関して豊富な経験を有する弁護士・弁理士に相談すれば、和解をすべきかどうかについてのアドバイスを受けられるとともに、和解交渉をすべて任せることもできます。
商標権侵害に関する他社からの差止請求や損害賠償請求にお悩みの企業担当者の方は、お早めに弁護士・弁理士へご相談ください。弁護士・弁理士の双方と相談ができる事務所を選ぶことをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2022年01月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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