- (更新:2023年02月07日)
- 企業法務
デューデリジェンスとは? 目的・種類と、M&A時に注意すべき点
「デューデリジェンス」は、M&Aを成功に導くためにきわめて重要なプロセスです。
今回は、M&A取引に際してデューデリジェンスを行う目的と、さまざまなデューデリジェンスの種類についてご紹介します。
1. デューデリジェンスの目的
デューデリジェンスは「買収監査」と訳されるように、M&Aを実行する前段階として、対象会社の調査を行うことを意味しています。デューデリジェンスの目的は、大きく以下の点に集約されます。
(1)買収対象企業に潜む問題点・リスクを洗い出すこと
M&Aは時に大規模な取引であり、かつ一度実行してしまうと、元の状態に戻すことはきわめて困難です。そのため、本当にこの取引を実行して良いのかどうか、事前に慎重に調査・検討することが必要になります。
その一環として、対象会社についてさまざまな角度から調査・チェックを行うのが「デューデリジェンス」というプロセスです。
デューデリジェンスにより、対象会社に潜む問題点やリスクを洗い出したうえで、買い主側がM&Aによるリスクをとれるかどうかを判断することになります。
(2)M&Aにおける買収価格の決定
M&Aの対象企業に潜むリスク(=不確定要素)は、買収価格にも大きな影響を与えます。
たとえば、対象企業が訴訟で巨額の損害賠償責任を追及されている場合、敗訴額の幅を見積もったうえで、買収価格に反映させる必要があります。
このように、適正な買収価格を設定するためには、対象企業に関するリスク分析が必要不可欠であり、その意味でもデューデリジェンスが大きな意味を持ってくるのです。
2. デューデリジェンスの主な種類
デューデリジェンスはさまざまな観点から行われますが、その中でも主な種類は以下のとおりです。
(1)財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスでは、財務諸表などを参照資料として、資産・負債やキャッシュフローの状況などから、対象会社の企業価値や財務状態の健全性などを監査します。
また、帳簿上の不整合があればその原因を突き止めたり、簿外債務がないかを確認したりすることも、財務デューデリジェンスの重要な役割です。
(2)ビジネスデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスでは、対象企業の事業内容全般が監査の対象となります。
具体的には、商品やサービスの内容・ビジネスモデル・将来性や、M&Aによる買い主事業とのシナジー効果の大きさなどが、ビジネスデューデリジェンスにおける主な調査事項です。
(3)人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスでは、従業員との雇用関係を中心的な対象とする監査を行います。
たとえば、従業員数・人件費の内訳などの基本的な事項に加えて、人事戦略や労務に関する社内規則、労使関係が良好かどうか、中核的な人材がM&A後も残ってくれそうかどうかなどについても、人事デューデリジェンスの調査事項となります。
(4)ITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスでは、主に情報システムに関する監査を行います。
近年では情報システムが企業のオペレーションにおいて果たす役割は重大であるため、ITデューデリジェンスというひとつのカテゴリーを設けて監査が行われるのです。
ITデューデリジェンスにおける主な調査事項は、既存システムの陳腐化・劣化などに伴う刷新にかかる将来的な費用や、買い主側のシステムと統合するための費用・計画などです。
(5)税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスでは、過去と将来の双方における税務リスクを分析します。
たとえば、過去分については、法人税の未払いがないか、会計・経理は適切に行われているかなどを調査し、後に追徴課税などを受けるリスクがないかどうかを慎重にチェックします。
また、将来分については、M&Aによる経営統合に伴い問題となる課税関係が主な調査・検討事項になります。
(6)法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスでは、対象企業を法令・契約・社内規則などの観点から監査します。
法務デューデリジェンスの主な調査項目は、以下のとおりです。
- 契約に関する事項
- 資産、負債に関する事項(知的財産権などの無形資産を含む)
- 許認可その他の法令順守に関する事項
- 紛争、訴訟に関する事項
- 株主の状況に関する事項
- 労務に関する事項(残業代の支払い状況など)
など
法務デューデリジェンスを適切に行うためには、法律の専門家である弁護士に依頼することをおすすめいたします。企業法務を取り扱う大規模・中規模の弁護士事務所であれば、M&Aに関する法務デューデリジェンスの相談を積極的に受けているケースが多いです。
また、弁護士に相談をすれば、M&Aの契約交渉全般に関するアドバイスを受けることができます。M&Aを検討中の企業経営者・担当者の方は、一度弁護士に相談してみましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年02月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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