
- 債権回収
債権回収に使える内容証明郵便とは? メリットとその他の解決方法
友人や親族にお金を貸すと、知り合いであるという甘えから返済が滞ることが少なくありません。「早く返してほしいけど、何からしたらいいか分からない」という場合には、内容証明郵便を利用するとよいでしょう。利用のメリットや効果と、また内容証明郵便でも返済してもらえない場合の回収方法をご紹介します。
1. 内容証明郵便の利用メリットと費用
「内容証明郵便」とは、郵便を出した日付や差出人の住所氏名、送り先の住所氏名、文書の内容を郵便局が証明してくれる郵便のことです。借金返済の請求のほか、損害賠償請求、契約解除などの際に利用されています。
一般の郵便や書留などと違って、配達の記録のほか文書の内容も記録に残るというのが大きな特徴です。
ただ支払いを求める文書を送るだけであれば、通常の郵便でもいいように思えるかもしれません。では内容証明郵便の利用にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
(1)内容証明郵便の主なメリット
①確実に書類を渡せる
一般の郵便では引っ越してしまっていたりポストから落下したりして、相手が受け取らないリスクがあります。受け取っていても「知らない」とシラを切られるかもしれません。内容証明郵便は郵便局の配達員が相手に確実に渡してくれるためそういった事態にはなりません。
受け取りがなかった場合には「転居先不明」や「受取拒否」など、理由がわかる形で返送されます。
②心理的プレッシャーをかけられる
口頭で支払いを求めても応じてもらえなかった場合でも、内容証明郵便を使えば債権者が本気になったことが伝わり、債務者に心理的なプレッシャーをかけられます。
「期日までに支払いがない場合は法的措置も辞さない」といった趣旨の文言を入れておけば、訴訟を避けるために債務者が態度を変えて支払いに応じるかもしれません。弁護士から送られたものであれば、より強い圧力をかけられるでしょう。
③時効を中断できる
時効の完成猶予という役割も大事です。借金や売掛金などの債権には、時効があります。民法上の通常の債権の場合、2020年3月31日までの分は「10年」、4月以降は「5年」です。時効が迫っている場合、内容証明郵便で催告(督促)することで、6か月間は時効の完成を猶予できます(民法第150条)。その間に訴訟を起こすなどしましょう。
④弁済期日を設定できる
弁済期日の設定については、親族や友人に期日を決めずにお金を貸してしまった場合に役に立ちます。内容証明郵便を利用すれば、送達された日を期日にでき、しかもそれを証拠上も明確にできます。するとその後の遅延損害金の請求もできます。
⑤裁判などで証拠になる
また内容証明郵便は送った時期や内容が明らかになるため、調停や裁判に発展した際に証拠として活用できます。先に督促をするなど、裁判に至る前にしかるべき対応をしたことを裁判所にアピールできます。
(2)内容証明郵便の費用
内容証明郵便を使う場合は、郵便局に文書を持ち込み利用したい旨を伝えましょう。費用は現在、次の通りです。
- 内容証明料:440円(2枚以上の場合は、1枚につき260円加算)
- 書留料:435円
- 郵便料金:84円〜
- 配達証明料:320円
配達証明料とは送達完了の日時を証明する「配達証明書」の発行費用です。任意ですが、裁判などで必要になりますので必ず頼みましょう。
2. 内容証明以外の債権回収の方法
内容証明郵便は債権回収では有効な手段ですが、それ自体に法的拘束力はありません。そのため相手に無視されてしまう可能性もあります。その場合には、次のステップに移りましょう。主に以下のような回収方法があります。
(1)調停
調停とは、裁判官と調停委員で構成された調停委員会が双方の話を聞き、トラブルの解決を目指す手続きのことです。
調停で分割払いや返済期限の延長など、支払いについて具体的な話がまとまれば「調停調書」を作成して終了します。話し合いが決裂したり、相手が出廷しなかったりした場合は調停不成立となります。
(2)支払督促
支払督促とは、裁判所を介して相手に債務の支払いを求める手続きのことです。
支払督促が債務者に送達されて2週間たっても異議申立てがなかった場合は、仮執行宣言の申し立てができます。
(3)裁判
裁判は、内容証明郵便による督促や調停、支払督促などの方法を使っても債権回収が進まない場合の、最終手段です。債権が60万円以下の場合には、「少額訴訟」も利用できます。
裁判で勝訴すれば、「仮執行宣言付判決」や「確定判決」を得られます。
上記3つの方法により得られる「調停調書」「仮執行宣言付支払督促」「裁判の判決」は、いずれも「債務名義」です。債務名義があれば、裁判で勝訴するなどしても支払ってもらえない場合に、強制執行をして財産を差し押さえ、回収できます。
債権回収では付き合いの長い取引先など、相手との関係性によっては内容証明郵便や裁判などをせずに解決を図る方がよいケースもあります。どういうことを記載するか、どの手段を用いるかには戦略的な判断が必要になる場合もあるため、弁護士に相談されることもおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2021年12月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
債権回収に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?