【強制執行】債務者の銀行口座を調べる方法は? 法改正で調査が容易に?
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【強制執行】債務者の銀行口座を調べる方法は? 法改正で調査が容易に?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

裁判で勝訴判決を得たとしても、債務者が任意に金銭を支払ってくれない場合には、債権者としては強制執行の手続きを行わなければなりません。債務者の預金債権を差し押さえて回収しようとする場合には、金融機関(本稿では銀行を前提とします)名と支店名を特定して強制執行の申し立てをしなければならず、それらの情報がない債権者としては事実上強制執行ができないこともありました。

しかし、民事執行法改正によって、債務者の銀行口座の調査がしやすくなりましたので、これまで諦めていたケースでも強制執行が可能になるかもしれません。

今回は、債務者の銀行口座を調べる方法について解説します。

1. 債権回収のために債務者の銀行口座を調べる方法は?

債務者の銀行口座を差し押さえる場合には、その前提としてどこの銀行のどこの支店に口座を有しているかを調べる必要があります。以下では、債務者の銀行口座を調べる方法について説明します。

(1)第三者からの情報取得手続の新設

第三者からの情報取得手続とは、金銭債権について債務名義などを有する債権者が債務者の財産に関する情報を保有する第三者からその情報の提供を受けるための手続きです。

これまでは、債務者の銀行口座を差し押さえようとしても銀行名と支店名がわからずに、手続きを断念するケースがありました。しかし、令和2年4月1日から施行された改正民事執行法により、第三者からの情報取得手続が新設されたことによって、このようなケースでも銀行口座の差し押さえのための情報を取得することが可能になりました。

(2)第三者からの情報取得手続の方法

第三者からの情報取得手続の具体的な方法は、以下のとおりです。

①申立人

預貯金に関する情報開示を求めることができる者は、執行力ある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者または債務者の財産に対して一般先取特権(給料先取特権など)を有する債権者です。

既に裁判で勝訴判決を得ている債権者であれば、当該判決が債務名義になりますし、民事調停調書、家事調停調書、公正証書なども債務名義になります。

②管轄裁判所

第三者からの情報取得手続は、債務者の住所地を管轄する裁判所に申し立てを行います。

③申し立ての要件

第三者からの情報取得手続を利用する場合には、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 強制執行の開始要件を備えていること
  • 強制執行の不奏功要件を備えていること

強制執行の不奏功要件とは、①強制執行または担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6か月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかったこと、又は、②知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったこと、のいずれかの要件を満たさなければならないことです(民事執行法197条1項)。債務者の銀行口座がわからずに第三者からの情報取得手続を利用する場合には、債務者の銀行口座が不明であること、銀行口座が見つかっている場合には、当該口座の残額では完全な弁済を受けられないことを疎明する必要があります。

なお、第三者からの情報取得手続には、預貯金情報以外にも不動産情報、勤務先情報などの開示を求めることができます。不動産情報、勤務先情報の開示を求める場合には、申立日の3年以内に債務者に対する財産開示手続きが行われたことが要件とされていますが、預貯金情報を取得する場合には、事前に財産開示手続を行っていたという要件は不要です。

2. 弁護士会照会との違いは?

債務者の財産を調べる方法としては、依頼を受けた弁護士が行う弁護士会照会という方法もあります。第三者からの情報取得手続きと弁護士会照会ではどのような違いがあるのでしょうか。

(1)弁護士会照会とは

弁護士会照会とは、依頼を受けた事件に関して、証拠や資料を収集し、事実の調査をするために弁護士会を通じて官公庁や企業などの団体に対して照会をする制度のことをいいます。

弁護士会照会は弁護士の職務の公共性から、弁護士のみに認められている情報収集の手段です。

(2)第三者からの情報取得手続と弁護士会照会の違い

弁護士会照会を利用することによっても債務者の銀行口座の照会を行うことができます。しかし、弁護士会照会は、照会を受けた銀行には回答の義務がありませんので、個人のプライバシーを理由に回答を拒否するところもありました。そのため、弁護士会照会で調査することができる銀行は、一部の限られた銀行のみであり、すべての銀行を対象に銀行口座の開示を求めることはできません。

これに対して、第三者からの情報取得手続は、日本国内にあるほとんどの銀行を含む金融機関に対して情報の開示を求めることができる制度です。このように対象となる金融機関に関しては第三者からの情報取得手続の方が優れた制度であるといえます。しかし、第三者からの情報取得手続は、強制執行の不奏功要件があるなど弁護士会照会よりも手続きのハードルが高いのも事実です。

どちらの制度を利用するのがよいかについては、一度弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2021年11月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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