債権回収の最終手段。少額訴訟の手続きはどのような流れで進む?
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債権回収の最終手段。少額訴訟の手続きはどのような流れで進む?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

どうしても金銭の支払いをしてもらえないときは、最終手段として法的措置をとることになります。法的措置といえば訴訟が思い浮かぶ方も多いと思いますが、訴訟は時間もお金もかかるため、二の足を踏む方も少なくありません。しかし、金額によっては少額訴訟制度が利用できるのをご存じでしょうか。

1. 少額訴訟とは?

訴訟というと、「長期にわたって何度も裁判所から呼び出されて、法廷の場で原告・被告が主張を戦わせるもの」というイメージがあるかと思います。しかし、少額訴訟制度は意外と手軽に利用できる制度です。

(1)少額訴訟の概要

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求めるときに使える訴訟手続きです。少額訴訟制度は原則として1回で審理が終わり、訴え提起から判決までおよそ2週間から1か月程度しかかからないため、スピーディーに結果が出ることが特徴です。少額訴訟手続きをとっていても、途中で和解が成立することもあります。

ただし、少額訴訟をするためには、以下の3つの条件をクリアしなければなりません。

  • 被告の氏名・住所などの個人情報、証拠がそろっていること
  • 被告が少額訴訟に同意していること
  • 同じ簡易裁判所の利用回数が年10回以下であること

(2)少額訴訟のメリット

少額訴訟には、以下のようなメリットがあります。

①手続きが簡単でスピーディー

少額訴訟は通常訴訟に比べて手続きが簡単です。また、審理が1回で終了し、その日のうちに判決が出るため、原告の負担も軽減されます。

②費用が安い

少額訴訟にかかる費用相場が通常訴訟に比べて安価なのもメリットのひとつです。

少額訴訟手続きにかかる費用は主に収入印紙代、切手代および交通費です。収入印紙代は、訴額が10万円までの場合は1000円で、以後10万円ごとに1000円が加算されます。最高でも6000円で済みますので、金銭的負担も少ないと言えるでしょう。切手代は、裁判所ごとに異なりますが、東京簡易裁判所の場合は5200円です。

このように、印紙代・切手代は安く済みますが、被告の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てをするため、被告が遠方に住んでいる場合は交通費が高額になることがある点に注意が必要です。

(3)少額訴訟のデメリット

一方、少額訴訟には以下のようなデメリットもあります。

①分割払い・支払猶予・遅延損害金免除となることがある

原告の請求が認められて勝訴しても、裁判所の判断で分割払い、支払猶予または遅延損害金免除となることがあります。分割払いや支払猶予を命じる判決が出た場合は、債権回収ができなくなるリスクもあるでしょう。

②判決に納得いかない場合でも控訴はできない

証拠が不十分だった、被告から有効な反論があったなどで敗訴することもあります。判決に納得いかない場合、不服申し立てをすることはできますが、控訴はできません。

③通常訴訟に移行することがある

被告の希望により、通常訴訟に移行することがあります。そうすると1回の期日で終わらせるために行った万全な準備が無駄になってしまう可能性もあります。

(4)少額訴訟は弁護士や司法書士に依頼すべきか

少額訴訟手続きは、もとより弁護士や司法書士に依頼することもできます。ただし、着手金や成功報酬といった費用がかかります。弁護士や司法書士に依頼すればよりスムーズに手続きが進むメリットはありますが、訴額によっては費用倒れとなってしまうこともあるため、慎重に判断すべきでしょう。

2. 少額訴訟の手続きの流れ

少額訴訟は次のような流れで進みます。

(1)訴状・証拠資料の提出

まず、訴状と証拠資料の準備からスタートします。訴状を作成するときは、裁判所のホームページにあるひな形を使うと便利です。請求金額や法的根拠など必要な内容を記載し、収入印紙を貼り、切手(予納郵券)とともに被告の住所地にある簡易裁判所に提出します。

(2)期日呼出状の受領

裁判所が届いた訴状と証拠資料を審査します。裁判所で訴状が受理されると、裁判期日が指定され、原告には期日呼び出し状と手続き説明書、被告には期日呼出状と訴状が送付されます。

(3)答弁書受理・準備

被告に訴状が届くと、被告は裁判所の要求にしたがって答弁書と証拠資料を準備します。この段階で、被告が通常訴訟に移行するか少額訴訟のままでよいかを選択します。作成された答弁書は裁判所を通じて原告にも送られてくるので、届いたら内容を確認して追加の証拠資料などの準備をしましょう。証人が必要であれば、連絡をとって期日に出席してもらえるよう依頼します。

(4)審理

期日では、原告・被告・裁判官がひとつのテーブルについて話し合いのような形で審理を行います。まず、原告・被告が主張を述べて証拠資料を提示し、それをもとに裁判官が争点を整理して証拠資料や証人の取り調べをします。審理自体にかかる時間は、だいたい30分から2時間前後です。

(5)判決(もしくは和解)

審理が終われば、裁判官が判決を言い渡します。なお、話し合いで決着がつくようならその場で和解が成立することもあります。判決に対し、当事者のどちらかが異議申し立てをしたときは、同じ簡易裁判所で控訴の認められない通常の審理・裁判が行われます。

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  • こちらに掲載されている情報は、2021年11月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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