相手の住所が不明でも支払督促は可能? 住所を調べることはできる?
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相手の住所が不明でも支払督促は可能? 住所を調べることはできる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

督促状や内容証明郵便を送っても、相手方が支払に応じようとしない。そのようなときに使える債権回収の法的手段のひとつが、支払督促です。
ところが、何度も請求や督促をしているうちに、相手が突然行方をくらまして音信不通になってしまうこともありえるでしょう。その場合でも、支払督促は使えるのでしょうか。

1. 相手の住所が不明な場合、支払督促はできない

支払督促とは、簡易裁判所の書記官が申立人の申し立てに基づいて支払の督促を行ってくれるものです。
相手方が支払督促に応じない場合は、相手方の財産や給与債権に対して強制執行をすることができ、そこから直接債権回収をすることができます。

(1)相手方が住所不明な場合は公示送達ができない

通常訴訟の場合で相手方の住所がわからないときは、「公示送達」という手段をとります。公示送達とは、裁判所の掲示板に掲示するだけで、相手方に訴状が届いたとみなす制度です。

申立人が相手方の住所が不明であることを示す資料を裁判所に提出すると、裁判所の掲示板に2週間掲示されます。そうすることで、書類が相手方に届いたことになります。

しかし、支払督促では法律上この公示送達を利用することは認められていないため、相手方の住所がわからない場合は支払督促ができないのです。

(2)仮執行宣言付支払督促の公示送達はできる

相手方に支払督促が届いたあと、2週間以内に異議申し立てがなければ、申立人は2週間目の翌日から30日以内に仮執行宣言の申し立ての手続きをしなければなりません。

この申し立てに基づき、裁判所は仮執行宣言付支払督促を送付します。相手方が支払督促をいったん受け取ったあとであれば、仮執行宣言付支払督促を送る際には、公示送達を利用することができます。

(3)住所不明以外に支払督促ができないケースとは

住所不明以外にも、支払督促のできないケースがあります。それは以下の2つの場合です。

①目的が金銭などの代替物や有価証券の給付以外の場合

相手方に金銭のなどの代替物や有価証券の給付以外の行動を求める場合には、支払督促は使えません。

たとえば、大家さんが家賃を滞納している借主に建物の明け渡しを求めるケースや、土地建物を譲渡した相手方に所有権移転登記を求めるケースでは、代替物や有価証券の給付を求めているわけではありません。したがって、このような場合は支払督促の利用はできないのです。

②相手方が外国に居住している場合

支払督促は、日本国内で送達することができるときのみ利用ができます。

また、相手方の住所地や事務所・営業所の所在地を管轄する簡易裁判所の書記官にしか申し立てができません。そのため、債務者が外国に居住している場合も、多くのケースで、支払督促を利用することができません。

(4)相手方の住所がどうしてもわからない場合は取り下げに

さまざまな方法を駆使して相手方の住所を探しても、どうしてもわからないケースもあるでしょう。

先述のとおり、支払督促で相手方が住所不明な場合は公示送達が使えないので、支払督促の申立書の取り下げが必要です。

相手方の住所がわかった場合でも、その住所が申し立てた簡易裁判所の管轄外のものであれば、一度取り下げて相手方の新住所を管轄する簡易裁判所に再度申し立てをすることが必要です。

2. 相手の住所を調べる方法は?

相手方の住所がわからない場合は、所在調査が必要です。
いくらかでも手がかりがあれば、そこから照会して現住所を割り出す方法もありますが、そのほかの手段として探偵に人探しを依頼する方法もあります。

どの方法がよいのかは、どの程度相手方の情報を握っているか、費用をかけられるかにもよるでしょう。

(1)旧住所から探す

旧住所や本籍地がわかっていれば、旧住所や本籍地のある自治体の役所に、弁護士が「職務上請求」をすることで、相手方の現在の住所がわかることがあります。

職務上請求とは、一定の有資格者が依頼を受けている事件や事務の処理のため、戸籍謄本などの交付を請求することができる制度です。この職務上請求を行って住民票や戸籍の附票を見せてもらえれば、今の住所がわかる可能性があります。
そのため、相手方の住所が不明で支払督促ができないという場合でも、あきらめずにまずは弁護士に相談されることをおすすめします。

(2)電話場号から探す

また、携帯電話や固定電話の番号がわかっていれば、電話会社に弁護士会照会(23条照会)をすることで、電話会社が把握している住所地を教えてもらうこともできます。

弁護士会照会(23条照会)とは、弁護士が受任した事件について調査の必要のあるときに、弁護士会を通じて法人や団体に情報の照会ができる制度のことです。

しかし、相手方がすでに電話を解約していた場合は、解約時の住所地までしか調べることができなくなるので注意が必要です。

(3)探偵に人探し(行方調査)を依頼する

また、探偵会社に人探し(行方調査・所在調査)を依頼する方法もあります。
先ほどの旧住所や電話番号のほか、顔写真、メールなどのデータをもとに調査をすることもあれば、聞き込み調査などをすることもあります。

ただし、探偵を利用すると費用がかかります。探偵にも調査を依頼するかどうかは、時と場合に応じて検討するようにしましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2021年07月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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