家賃滞納者に対して差し押さえを行いたい! 方法や注意すべき点
  • 2021年07月23日
  • 債権回収

家賃滞納者に対して差し押さえを行いたい! 方法や注意すべき点

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

アパートやマンションの家賃滞納は、大家・オーナーにとって頭の痛い問題です。単純に支払いを忘れた程度であればまだしも、数か月にわたり滞納し、支払いを求めて訪問しても居留守を使うような状況では回収の見込みは低いでしょう。そこで考えたいのが、家賃滞納者の財産の差し押さえです。差し押さえられる財産や手順をご紹介します。

1. 差し押さえとは? どんな財産が差し押さえの対象?

「差し押さえ」とは、家賃支払いや借金返済などの金銭の支払いが滞った場合に、裁判所や執行官が債権者の申し立てを受けて、債務者が財産を売却するなどの処分をできないようにする手続きのことです。

滞納があるからといって、債権者である貸金業者や大家がいきなり債権者の財産を持ち去ることはできません。では、差し押さえはどのように実行すればいいのでしょうか?

一般的には「強制執行」という手続きを使って財産を差し押さえます。現金はそのまま、不動産などは競売にかけてお金に換えて、回収します。差し押さえは強制執行の流れの一つと考えてください。強制執行をするためには必要な手続があります。次章でご説明します。

(1)差し押さえ対象財産

差し押さえの対象となるのは、主に以下の財産です。

  • 債権:預貯金、給与、売掛金など
  • 動産:現金、貴金属など
  • 不動産:家、土地など

預貯金については差押命令が金融機関に送達されたときに、債務者の口座に残っている分を差し押さえられます。

給与を差し押さえられれば、債務者の勤務先から毎月一定額を回収できます。ただし債務者の生活費ともなるため、原則として手取り額の4分の1までしか差し押さえできません。手取り額が44万円を超えている場合は、33万円を差し引いた額まで差し押さえ可能です(民事執行法第152条)。

貴金属などは売却してお金に換えます。不動産がある場合には、競売にかければまとまった額が回収できますが、賃料を支払えないということは、不動産などの高額な財産を持っている可能性は低いと考えてください。
なお、差し押さえを求める場合には、差し押さえたい財産を債権者側が特定しておかなければいけません。「どこかの金融機関に預金があるはず」では、差し押さえはできないので注意してください。

(2)差し押さえが禁止されている財産

主に以下の財産については、差し押さえが禁じられています。

  • 66万円以下の現金
  • 1か月分の食料や燃料
  • 服や家具家電など、生活に必要なもの
  • 業務に不可欠な機械器具
  • 年金

このような生活や仕事に必要な最低限度のものは、差し押さえの対象外です。年金については、金融機関に入金された時点で預金という扱いになるため、差し押さえできるようになります。

2. 家賃滞納者の財産差し押さえに必要な手続と書類

先述したように、差し押さえは強制執行の流れの中で行われます。そこでここでは強制執行の利用方法をご紹介します。

強制執行をするためには、まず「債務名義」を得ておく必要があります。債務名義とは「裁判の確定判決」、「和解調書」、「調停調書」、「仮執行宣言付きの支払督促」などのことです。強制執行は非常に強力な手段であるため、利用するためには強制執行をする一定の根拠が求められているのです。

なおこの債務名義には、強制執行を行うことを認めるという趣旨の「執行文」が付けられている必要があります。執行文は裁判所書記官や公証人に依頼すれば付与してもらえます(一部の債務名義には執行文は不要です)。

債務名義以外に強制執行に必要な主な書類は以下の通りです。

  • 申立書
  • 送達証明書
  • 資格証明書(法人の場合)
  • 申立手数料、郵便切手
  • 「送達証明書」とは、債務名義の正本または謄本が債務者に送達されたことを証明する書類です。送達をすることで、強制執行をする前に債務者に裁判の結果などを知らせて、最後の弁明・反論のチャンスを与えます。

    なお、債務名義の種類によって裁判所が職権で債務者に送達してくれるケースと債権者が送達を申請しなければいけないケースがありますので、事前に確認しておきましょう。

    必要な書類がそろったら、債権執行であれば、債務者の住所地を管轄する裁判所に強制執行を申し立てましょう。裁判所からの差押命令の送達後、1週間を経過すると、差し押さえた債権を取り立てることができるようになります。

    強制執行は有効な回収手段ですが、債務者にほとんど財産がないこともあります。手間と時間をかけても徒労に終わる可能性があるのです。

    そういった事態を避けるために、賃貸借契約を結ぶ際には家賃保証会社と契約したり、連帯保証人をつけたりしている方も多いでしょう。
    そこで強制執行に移る前に、まずは滞納家賃を家賃保証会社に立て替えてもらうか、連帯保証人に支払ってもらうかして回収を進めるのがよいでしょう。

    また、3か月以上の家賃滞納があれば、貸主と借主の信頼関係が壊れたとして、催告を経て賃貸借契約の解除が可能です。退去しない場合には、部屋の明け渡しを求めますが、その際に滞納家賃の請求もできます。

    対応が遅れれば遅れるほど滞納額は膨らんでいき解決は難しくなりますので、弁護士に相談するなどして早めに対処しましょう。

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    • こちらに掲載されている情報は、2021年07月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。