過失割合が10対0の交通事故で、被害者が弁護士に相談すべき理由
交通事故に遭った場合には、過失割合によって、被害者が加害者に請求することができる賠償金の金額が変わってきます。そして、交通事故の被害者に過失がなく、過失割合が「10対0」の事故である場合には、過失割合による減額は発生しませんが、被害者自身の任意保険が使えなくなる場合があります。
今回は、過失割合が10対0の交通事故で被害者が弁護士に相談すべき理由について、説明します。
1. 過失割合が10対0の交通事故とは?
まず、「過失割合」に関する基本的な事項と、過失割合が「10対0」となる交通事故の具体例について説明します。
(1)過失割合とは
交通事故は、当事者の一方または双方の不注意や過失が原因となって生じます。過失割合とは、このような不注意や過失を数値化した割合のことを指します。
交通事故の損害賠償額を算定する際には、過失割合に相当する金額を賠償金額から控除して請求することになりますので、過失割合の大きい事故については、請求することができる賠償額も減少することになります。
個々の具体的な事故において、その事故がどの程度の過失割合になるかについては、ある程度、過去の裁判例によって類型化されています。
したがって、交通事故が発生した際には、その事故がどの事故類型に該当するかを判断して、まず、ベースとなる基本過失割合を割り出します。そして、事故ごとの細かな事情に基づく修正要素を加味することによって、過失割合の具体的な数値を算出することになるのです。
(2)過失割合が10対0になる交通事故の具体例
過失割合が10対0になる交通事故とは、「被害者にはまったく過失がなく、加害者の側にすべての過失がある」ということになります。
①自動車同士の事故の場合
・停車中の追突事故
追突事故においては、追突された車両が停止中であった場合には事故を避けることができません。したがって、被害者側には過失は認められないのです。もっとも、急停車した場合に後ろの車が追突した場合、停止している被害者側にも過失が取られることがあります。
・センターラインオーバーによる正面衝突事故
対向車同士が正面衝突をした場合や、加害者側の車がセンターラインオーバーをしていたときには、加害者の一方的な過失によるものと考えられるため、被害者側には過失は認められません。
・交差点での赤信号無視による衝突事故
信号機の設置されている交差点では、表示されている信号にしたがって運転しなければなりません。そのため、赤信号無視により衝突事故が生じた場合には、信号を違反した加害者の一方的な過失によるものと考えられるため、被害者には過失は認められないのです。
②歩行者と自動車の事故の場合
・歩行者が青信号で横断中に衝突した事故
信号機の設置されている横断歩道上において、歩行者が青信号で横断を開始した場合に、自動車と衝突事故が発生したときには、途中で黄色信号や赤信号になったとしても、被害者である歩行者に過失は基本的に認められません。
・信号機の設置されていない横断歩道上の事故
信号機の設置されていない横断歩道上では、自動車よりも歩行者が優先されます。そのため、横断歩道上で自動車と歩行者による事故が発生した場合には、原則として、被害者には過失が認められないのです。
・歩道上の歩行者との衝突事故
法律では、歩道を歩いている歩行者の保護は、絶対的なものとされています。したがって、自動車が歩道を横断する際に歩道を歩いている歩行者と衝突した事故では、被害者には過失は認められません。
2. 過失割合10対0の交通事故で弁護士に相談すべき理由
過失割合が10対0の交通事故では、以下の理由から、被害者は弁護士に相談をすることをおすすめします。
(1)示談交渉サービスが利用できない
過失割合が10対0の交通事故では、原則として、被害者は自身の加入する任意保険会社を利用することができません。したがって、保険会社のプランに含まれている示談交渉サービスも、利用することができないのです。そのため、加害者や加害者の任意保険会社との示談交渉は、保険会社を利用せずに被害者自身で行う必要が生じます。
交通事故によって肉体的にも精神的にも負担を被っている状態である被害者が、示談交渉のプロフェッショナルである任意保険会社と交渉をして、納得いく損害賠償額を獲得することは非常に困難であるといえます。そのため、過失割合が10対0の交通事故では、負担を減らすために、被害者に代わって示談交渉を行うように弁護士に依頼することをおすすめします。
(2)高額な「弁護士基準」で慰謝料を請求できる
弁護士に依頼することによって、慰謝料などをはじめとする損害賠償を、弁護士基準(裁判基準)という最も高額な基準で加害者に請求することが可能になります。
弁護士基準と、自賠責基準や任意保険会社の基準などとの間では金額にかなりの差があります。被害者が受けた損害に見合う賠償をしっかり請求するためには、弁護士に依頼することが重要になるのです。
(3)後遺症申請のサポートができる
治療を行っても症状が改善しない状態を「症状固定」といいます。弁護士に依頼することで、後遺症申請のサポートを受けることも可能になります。
- こちらに掲載されている情報は、2024年04月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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