“孤独死”の4割「20~50代」の衝撃…20代女性「自死」が圧倒的に多いワケ

弁護士JP編集部

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“孤独死”の4割「20~50代」の衝撃…20代女性「自死」が圧倒的に多いワケ
「本当の意味で繋がっている人」がいないケースも(tsuchimasp / PIXTA)

孤独死した人のうち、50代以下のいわゆる「現役世代」が全体の40%を占める――。

そんな衝撃的な結果が、日本少額短期保険協会の「第6回孤独死現状レポート」(※1)に示されている。

このレポートによると、孤独死とは「自宅内で死亡した事実が死後判明に至った1人暮らしの人」。孤独死といえば「高齢者が病気で亡くなる」というイメージが強いかもしれないが、なぜこれほどまでに孤独死に至る現役世代の割合が高いのだろうか。

(※1)賃貸住居内における孤独死の実像を示す統計資料。賃貸物件で入居者が加入する保険など、少額で短期間の引受のみを行う「少額短期保険」の普及啓発活動などをする一般社団法人「日本少額短期保険協会」がデータを集積・分析し、孤独死の問題点やリスクについて業界内外に広く発信している

20代女性「自殺による孤独死」が圧倒的に多いワケ

前出のレポートで孤独死の死因を見ると、若年層ほど自殺者の割合が高くなっていることが分かる(下図青線)。

孤独死・全死因別自殺者の割合比較(第6回孤独死現状レポートより)

さらに細かく年代・男女別に見ると、女性の場合は20代以下の割合が39.2%と、突出して高くなっている。全国平均と比較すると、その差は約3倍だ。

年齢階級別自殺者の割合(第6回孤独死現状レポートより)※一部加工

その理由について、孤独死現状レポートを発表している日本少額短期保険協会の杉本茂也さんは「不明確な点も多い」とした上で、以下の可能性を指摘する。

「価値観やライフスタイルの多様化が進んでいるとはいえ、結婚、恋愛、キャリアといった人生の転換期を20代で迎える女性も少なくありません。ご自身に限らず、周囲の人たちがこうした転換期を迎えることによって、少なからず精神面に影響を及ぼすということもあるのではないでしょうか。

いずれにしても、調査を始めてからこれまで、孤独死における20代女性の自殺率がどの世代・性別と比較しても継続して最も高い数値となっていることは確かです」(日本少額短期保険協会・杉本さん)

「長期間発見されないリスク」男性が高い!?

「孤独死」と聞いて「長期間発見されないリスク」を想像する人は多いのではないだろうか。

孤独死現状レポートで「発見までの期間」を見てみると、「3日以内」に早期発見された割合は、男性が38.4%、女性が50.1%と、男女で大きな開きがあることが分かる。

男女別発見期間の割合(第6回孤独死現状レポートより)

この集計データには、社会問題となりつつある「中高年男性の孤独・孤立」の影響が考えられるという。

「第一発見者を男女別に見ると、親族や友人といった『近親者』に発見された割合は女性のほうが高いのに対し、不動産管理会社や福祉サービス従事者、警察・消防などの『職業上の関係者』や『他人』に発見された割合は男性のほうが高くなっています。

この結果からも、『何かあったときに気づいてもらえる』ような関係性を周囲の人と築いておくことが、早期発見にあたって重要なポイントだと言えるでしょう」(日本少額短期保険協会・杉本さん)

性別による第1発見者の構成比。「近親者」は親族・友人、「職業上の関係者」は不動産管理会社・オーナー・ケアワーカー・自治体・配達業者・警察・消防など(第6回孤独死現状レポートより)

孤独死しないためには…

「これだけ『SNSでフォロワーが●人』と言いながら、本当の意味で繋がれている人がいない。まさに今の日本社会を象徴していると思います」

そう指摘するのは、LINEを使った見守りサービスを提供するNPO法人「エンリッチ」代表の紺野功さんだ。見守りサービスと言えば、電気ポットや人感センサーを使った高齢者向けのものを連想するが、エンリッチは50代以下の「現役世代」を主な対象に、日常的なコミュニケーションツールであるLINEを活用することで、ユーザーの利用ハードルを下げている。

  • エンリッチ「見守りサービス」の仕組み
  • ①自分で設定した頻度・時間帯にLINEで安否確認のメッセージが届く
    エンリッチ「見守りサービス」より
  • ②メッセージが届いたら「OK」ボタンを押して安否確認完了
  • ③もし「OK」ボタンを押さなかった場合、24時間後に再び安否確認のメッセージが届く
    エンリッチ「見守りサービス」より
  • ④それでも「OK」ボタンを押さなかった場合、3時間後に電話が掛かってくる
  • ⑤電話に出なかった場合、事前に登録した近親者に電話を掛けてもらえる

2022年8月3日現在の利用者数は8118人で、当初対象として想定していた40〜50代が約50%を占めている。一方、最近は20〜30代の利用者も増えているというが、この状況は紺野さんにとっても予想外だった。

「最近は、SNSでたくさんの人と繋がっていても、リアルな人間関係は希薄だという方が増えているのではないでしょうか。

エンリッチの見守りサービスでは、LINEのメッセージで安否確認が出来なかった場合に利用者へ直接電話を掛けていますが、若い利用者の方ほど電話に出ない傾向にあります。でも、メッセージを送ってみるとすぐに返事が来るんです。

そもそも、人との関わりを煩わしく感じている方が多いのではないかと思います」(エンリッチ・紺野さん)

利用者からは、「通知が届くことで誰かと繋がっている実感が持てる」といった声も寄せられている。メッセージに対し「OK」を押すという最低限のアクションで「もしも」に備えられるサービスは、まさに現代の人付き合いのあり方を象徴しているのではないだろうか。

現代社会の孤独・孤立問題には、国も対策に乗り出している。2021年2月には「孤独・孤立対策担当室」が設立され、孤独・孤立の実態を把握するための全国調査が初めて行われた。調査結果によると、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人は、男女ともに30代が最多だった。

同室は「孤独・孤立は人生のあらゆる場面で誰にでも起こり得るもの」として、今後も実態把握や相談体制の強化などに努めていくという。

■NPO法人エンリッチ
「見守りサービス」は、LINEで友だち登録すれば無料で利用可能。グループLINEで知人同士が安否確認をできる「つながりサービス」(月額500円 ※税別)もある。
https://www.enrich.tokyo/service/

■内閣官房「孤独・孤立対策担当室」
選択式の簡単な質問に回答していくことで、約150の窓口から自分にあった相談先を紹介してくれる「あなたのための支援があります」などを提供している。相談方法もSNS、チャット、電話など選択可能。

■悩みを抱えたときの電話相談窓口

#いのちSOS
0120-061-338(月・木曜 00:00~24:00、火・水曜、金~日曜 8:00~24:00 ※日曜 8:00~月曜 24:00まで、水曜 8:00~木曜 24:00までは連続対応)

よりそいホットライン
0120-279-338(24時間対応)
※岩手県・宮城県・福島県から 0120-279-226
※050で始まるIP電話やLINE Outからは050-3655-0279(24時間対応)におかけ下さい。

いのちの電話
0120-783-556(16:00~21:00 ※毎月10日は午前8:00~翌日午前8:00)
※IP電話(アプリケーション間の無料通話を除く)からは03-6634-7830(通話料有料)におかけ下さい(毎月10日午前8:00〜翌日午前8:00)。

0570-783-556(10:00~22:00、ナビダイヤル受付センターに順次おつなぎします)
※IP電話からのご利用はできません。固定電話または携帯電話からご利用ください。

・こころの健康相談統一ダイヤル
0570-064-556
※相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります。(一覧はこちら
※050で始まるIP電話やLINE Outからは接続できませんので、各都道府県・政令指定都市の窓口(IP電話対応)の電話番号におかけください。

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