長期化する前に! 知っておきたいマンション管理費を回収する法的手段

長期化する前に! 知っておきたいマンション管理費を回収する法的手段

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

分譲マンションを購入すると、区分所有者としてマンション管理会社(管理組合)に対して、管理費や修繕積立金などを支払っていかなければなりません。管理費は、共用部分の清掃や備品の補充などに必要になりますし、修繕積立金は、大規模補修などにおいて必要になるなど、マンション管理にあたっては重要な費用になります。

しかし、入居者の中には、管理費などの支払いを拒否するケースもあるでしょう。管理費の支払い拒否は、管理会社としては非常に頭を悩ませる問題ですが、きちんと対応しなければ大きなトラブルに発展することもあります。

今回は、マンション管理費滞納に対してできる法的な対処法について解説します。

1. マンションの管理費滞納トラブルとは

マンションの管理費に関するトラブルでよくあるのが滞納です。滞納を放置してしまうと、以下のようなケースに発展するおそれがあります。

(1)長期化によって回収が困難になる

家賃や住宅ローンとは異なり、マンションの管理費は、金額としても低額なことが多いため、短期間の滞納であれば金額もそこまで大きくはなりません。滞納者への催促が面倒、請求するコストに見合わないなどの理由から、滞納が発生してもつい放置してしまいがちな問題です。

しかし、滞納が発生しているにもかかわらず放置していると管理費滞納者としても滞納しても問題ないと考え、支払いに対するモラルがどんどん低下していってしまいます。滞納期間が長くなればなるほど管理費の滞納額も大きくなり、滞納管理費を回収することが困難になっていきます。

(2)大規模修繕工事に影響が生じる

マンションは、期間の経過に伴い、外壁のひび割れ、給排水設備の老朽化などが生じることがあります。このような経年劣化による影響をできる限り抑え、快適に生活していくためには、定期的な修繕工事や大規模修繕工事が必要になります。

マンションの入居者は、将来に備えた修繕工事のために管理費を支払っていますが、管理費の滞納が生じた場合には、十分な積立金を確保することができず、将来、大規模修繕工事を実施することができないという弊害が生じる可能性があります。

(3)時効によって支払い義務が消滅する

マンションの管理費の支払いを滞納していると、各支払期日から5年の経過によって時効が成立します。なお、マンションの管理費の時効が5年であるのは、民法改正以前も同様です。時効によって、入居者が負っているマンション管理費の支払い義務は、消滅してしまいますので、滞納管理費のうちすでに時効で消滅してしまった部分については、請求することができなくなります。

時効による権利消滅を回避するためには、早めに管理費の回収に動くか、時効の更新などの法的手段を講じる必要があります。

(4)入居者の不公平感を助長する

マンション管理費を滞納している人の存在が明らかになると、毎月きちんと支払っている入居者からは不満が出てくることもあります。それによって、入居者同士で管理費滞納をめぐり、感情的な対立が生じる可能性もあります。

2. マンション管理費の回収方法

マンション管理費の滞納が生じた場合には、以下のような方法で回収を行います。

(1)管理会社からの請求

マンション管理費の滞納が生じた場合には、すぐに入居者に対して連絡をして支払いの催促を行いましょう。金額が少ないからといって放置するのではなく、早めに行動することが重要です。請求の方法としては、電話、メール、書面、訪問など適宜の方法によって行いますが、きちんと期限を設けて督促をすることが大切です。

(2)内容証明郵便の送付

電話、メール、文書、訪問などの方法でも滞納管理費が支払われないときには、内容証明郵便(送付した日時や送付内容を郵便局が証明してくれるサービス)で文書を送付します。

内容証明郵便を利用することによって、任意の支払いを促す心理的な効果が期待できるだけでなく、時効の完成猶予の効果や将来の裁判の証拠としても利用することができます。

内容証明郵便を送付する場合には、弁護士が管理会社の代理人として送付することも有効な手段となります。弁護士名の内容証明郵便は、管理会社名義のものに比べて管理費滞納者に与える精神的プレッシャーが大きくなり、滞納が解消されることが期待できるからです。

もしも滞納者が支払いを拒否したとしても、弁護士に滞納者との交渉や法的手続きなども一任することができます。

(3)裁判手続き

以上のような方法で滞納管理費が回収することができない場合には、裁判所の手続きを利用した法的手段によって解決を図ります。

①支払督促

支払督促とは、簡易裁判所の書記官による書面審査によって、滞納管理費の支払いを命じてもらうことができる手続きです。通常の訴訟とは異なり、シンプルかつ迅速な手続きで、強制執行に必要な債務名義を取得することができますので、管理費の滞納などの少額で争点の少ない事件に向いている手続きといえます。

②少額訴訟

少額訴訟とは、請求額が60万円以下の場合に限り利用することができる簡易裁判所の訴訟手続きであり、原則として1回の期日で審理が終結して、判決が言い渡されます。支払督促と同様に迅速な解決が可能な手段ですので、管理費滞納の解決手段に適しています。

③通常訴訟

支払督促で被告から異議の申し立てがあったり、少額訴訟で被告から通常訴訟での審理を希望する旨の申し出があったりする場合には、通常の民事訴訟の手続きに移行することになります。

(4)強制執行

裁判手続きで支払督促や判決を得ても、管理費滞納者が管理費の支払いをしない場合には、強制執行を申し立てることになります。強制執行では、管理費滞納者の給料、預貯金などの財産を差し押さえることによって、強制的に債権回収を行うことができます。

通常訴訟では、証拠に基づいた主張立証が必要になります。また強制執行までの一連の流れを適正に行うのは負担が大きいため、早めに弁護士に依頼して進めていくのがよいでしょう。

弁護士JP編集部
弁護士JP編集部

法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年04月13日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

お一人で悩まず、まずはご相談ください

まずはご相談ください

不動産・建築・住まいに強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?

弁護士を探す

関連コラム

不動産・建築・住まいに強い弁護士