- (更新:2023年02月07日)
- 医療
B型肝炎訴訟とは? 手続き・要件・給付金額などをご紹介
国による集団予防接種が原因でB型肝炎ウイルスへの持続感染を生じた場合、B型肝炎訴訟により給付金を受け取ることができます。ご自身が特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の対象ではないかと思った場合には、早めに弁護士に相談して訴訟の準備を進めるとよいでしょう。
この記事では、B型肝炎訴訟の手続き・要件・給付金額などについてご紹介します。
1. B型肝炎訴訟とは?
B型肝炎訴訟とは、集団予防接種によるB型肝炎ウイルス感染被害者に対して、国から給付金を支給するようにさせるための手続きです。
(1)集団予防接種による感染被害と給付金制度創設の経緯
昭和23年(1948年)から昭和63年(1988年)ごろまで、国が子どもに対して行う集団予防接種では、注射器の連続使用(使いまわし)が常態化していました。
この集団予防接種における注射器の連続使用が、B型肝炎ウイルスの持続感染者を40万人以上発生させたと見られ、大きな社会問題となりました。
現在のB型肝炎給付金制度は、感染被害者と弁護団が国を相手に損害賠償を求め続けた結果として成立した国と原告団の間の和解、さらに「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」という法律に基づいて創設されたものです。
(2)国家賠償請求訴訟を提起して行う
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の請求は、国に対する国家賠償請求訴訟を提起して行います。
国家賠償請求訴訟において、集団予防接種を原因とする持続感染の事実や具体的な症状などの立証に成功すると、症状に応じた給付金が支払われる仕組みになっています。
2. 特定B型肝炎ウイルス感染者給付金がもらえる人・給付金額
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の制度上、給付金がもらえる方と給付金額については、明確なパターン化が行われています。
(1)特定B型肝炎ウイルス感染者給付金がもらえる人とは?
特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給対象者には、以下の3パターンが存在します。
①一次感染者
自らが集団予防接種など(昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までの間)を受け、その際の注射器連続使用の結果として直接B型肝炎ウイルスに持続感染した人をいいます。
②二次感染者
一次感染者である母親からの母子感染により、B型肝炎ウイルスに持続感染した人をいいます。
③一次感染者または二次感染者の相続人
一次感染者・二次感染者は特定B型肝炎ウイルス感染者給付金を受け取る権利があるところ、その権利を相続した人についても、B型肝炎給付金を受け取る権利が認められます。
B型肝炎訴訟では、上記のいずれかに該当することを立証していく必要があります。それぞれの立証方法については、厚生労働省が公表している「B型肝炎訴訟の手引き」にまとめられています。
(参考:「B型肝炎訴訟の手引き 第5版」(厚生労働省))
しかし、所定の資料を集めることが難しい場合や、個別の事情によって追加の証拠が必要となる場合もありますので、詳しくは弁護士まで相談すべきでしょう。
(2)症状別の給付金額
B型肝炎給付金の金額は、以下の2つの要素により決定されます。
- 症状の有無・程度
- 除斥期間が経過したかどうか
具体的な給付金額は、以下の表のとおりです。
除斥期間未経過 | 除斥期間経過後 | |
---|---|---|
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 3600万円 | 900万円 |
肝硬変(軽度) | 2500万円 | 600万円(現在も治療を受けている場合) 300万円(それ以外の場合) |
慢性B型肝炎 | 1250万円 | 300万円(現在も治療を受けている場合) 150万円(それ以外の場合) |
無症候性キャリア | 600万円 | 50万円 |
上記2の除斥期間とは、症状別に以下の期間を意味します。
<特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の除斥期間>
- 無症候性キャリアの人:集団予防接種を受けた日(二次感染者については出生時)から20年
- 慢性肝炎などを発症した人:発症日から20年
- 亡くなった人:死亡日から20年
除斥期間が20年であるのは、2020年改正法施行前の旧民法において、不法行為に基づく損害賠償請求権の除斥期間が20年とされていたことに由来します(現行法上は消滅時効に変更)。
本来であれば、20年の除斥期間が経過すれば、国に対する損害賠償請求権は消滅します。しかし、集団予防接種によるB型肝炎ウイルス感染被害の広範さ・深刻さなどに鑑み、特例で除斥期間経過後も補償を行うものとされたのです。
ただし上記の表のとおり、除斥期間が経過していると、経過前と比べて大幅に給付金が減額されてしまいます。
(3)B型肝炎訴訟には弁護士費用の助成がある
B型肝炎訴訟に関しては、感染被害者の方に対して給付金の申請を促すため、弁護士費用の助成制度が設けられていることも特徴的です。
具体的には、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」に基づき、給付金額の4%に相当する弁護士費用が国庫から支給されます。
弁護士費用がかさむことを懸念して、B型肝炎訴訟を提起することを躊躇している方は、助成金制度の利用を検討しましょう。また弁護士によっては、B型肝炎訴訟を完全成功報酬制で請け負っている場合もあります。
B型肝炎ウイルスへの感染被害者として正当な権利を主張するためにも、一度弁護士まで相談されることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年02月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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