給料未払い、どこに相談すべき? 相談先・請求の流れ・注意点を解説

給料未払い、どこに相談すべき? 相談先・請求の流れ・注意点を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

会社から給料が支払われないとき、どうすればいいと思いますか?

働いた分の給料が支払われない、残業代が未払いのまま――そんな状況に不安や怒りを感じている方は今すぐにでも対策が必要です。生活に直結する問題だからこそ、ひとりで悩まず、早めに行動することが大切です。

労働基準監督署や労働局に相談する方法もありますが、確実に未払い分を回収したい場合は、弁護士への相談が有効です。本コラムでは、相談先の選び方や請求の流れ、注意点を詳しく解説します。泣き寝入りせず、適切な対策をとりましょう。

1. 給料未払いの相談先|各機関のメリット・デメリット

給料の未払いは、労働者の生活を脅かす重大な問題です。もし給料が支払われなかったり、支払いが遅れたりする場合には、ひとりで悩まず、すぐに専門機関に相談しましょう。

ここでは、給料未払いの相談先として代表的な機関を紹介します。

以下の表に、給料未払いの相談先とそのメリット・デメリットを簡潔にまとめました。

相談先 メリット デメリット
労働基準監督署 ・無料で相談可能
・会社に指導・勧告してくれる
・強制力はない
・解決までに時間がかかる可能性がある
労働局 ・無料で相談可能
・専門的な事案にも対応
・あっせん制度で話し合いによる解決が目指せる
・あっせんは強制力がなく、会社が応じない場合もある
労働組合 ・無料で対応してくれることが多い
・労働問題に詳しい担当者が迅速に対応してくれる
・組合に加入していないと利用できない
総合労働相談コーナー ・無料で相談可能
・幅広い労働問題に対応
・弁護士等の専門家に相談できることもある
・相談日時が限られる場合がある
労働条件相談ほっとライン ・無料で相談可能
・電話で気軽に相談できる
・幅広い労働問題に対応
・相談のみで解決までの対応はできないことが多い
法テラス ・条件を満たせば無料相談可能
・弁護士等の専門家に相談できる
・予約が必要な場合がある
・相談時間が限られている
弁護士 ・強制力のある対応が可能
・直接請求や法的手続きができる
・費用がかかる(法テラスなどを活用すれば無料の場合もあり)

続いて、上記の表の内容についてそれぞれの相談先ごとに説明します。

(1)労働基準監督署

労働基準法などの法律に基づいて、労働条件の監督や労働者に対する相談指導などを行う機関です。会社に対して指導や勧告を行い、未払い給料の支払いを促してくれます。

労働基準監督署は、電話、メールのほか、直接訪問して相談することができます。直接訪問する場合は、勤務先の所在地ごとに管轄が異なりますので、事前に厚生労働省のホームページから、担当の労働基準監督署を確認しておきましょう。

なお、相談料は無料ですが、会社への指導・勧告に強制力があるわけではありません。あくまでも監督官庁としての立場から、労働基準法違反にあたる給料未払いの是正を図るにとどまる点に注意が必要です。

(2)労働局

労働基準監督署の上部機関であり、都道府県ごとに設置されています。労働基準監督署では対応できないような、より専門的な知識や経験を必要とする事案について相談することができます。

労働局では、個別労働紛争解決制度のひとつである「あっせん制度」を利用することができます。あっせん制度を利用することで、会社と労働者の間で話し合いを行い、合意による解決を目指すことも可能です。

ただし、あっせんは参加が強制ではないため、あっせんによって必ず労働トラブルが解決するとは限りません。

(3)労働組合

加入している労働組合があれば、相談することを検討してみましょう。労働問題に精通した担当者が、速やかに未払い給料の支払いを求めてくれます。

労働組合に加入していないと相談ができないため、未加入の場合は、加入を検討してみましょう。

(4)無料相談窓口

①総合労働相談コーナー

労働基準監督署や労働局に設置されており、労働問題全般に関する相談を無料で受け付けています。弁護士や社会保険労務士による相談日も設けられている場合があります。

専門の相談員が対応してくれますが、相談日時が限られている場合があるため注意が必要です。

参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内

②労働条件相談ほっとライン

厚生労働省が設置している、労働条件に関する無料電話相談窓口です。

給料未払い問題だけでなく、労働時間、ハラスメントなど、様々な労働問題に関する相談が可能です。専門の相談員が、相談者の状況に応じて、法的なアドバイスや問題解決のための情報を提供してくれます。

しかし、あくまで相談窓口であるため、必ずしも問題解決につながるわけではありません。

参考:厚生労働省「労働条件相談「ほっとライン」に相談してみよう!

③法テラス

法制度や手続きに関する情報提供や、弁護士・司法書士による無料法律相談などを行っている機関です。収入などの条件を満たせば、無料で弁護士に相談することができます。

専門家による相談は、予約が必要な場合や、相談時間が限られている場合があります。

参考:日本司法支援センター法テラス「お近くの法テラス(地方事務所一覧)

(5)弁護士

弁護士は、法律トラブルの解決を取り扱う専門家です。給料未払いに悩む労働者のために、未払い給料の回収についても相談を受け付けています。

弁護士は、給料を適切に支払わない会社に対し、依頼者である労働者のために直接請求を行います。

支払いの交渉だけでなく、労働審判や訴訟などの法的手続きについても、弁護士に依頼することが可能です。

すでに未払いとなっている給料をスムーズに回収したい場合は、弁護士に依頼するのがよいでしょう。

弁護士JPの「給料・残業代請求に強い弁護士検索」を利用して、ご自身に合う弁護士を探してみることをおすすめします。

2. 未払い給料の請求の流れ

支払われていない給料があることに気づいたら、以下の手順で対応を行いましょう。

(1)給料明細と労働契約書を確認する

まず、給料明細から、「いつ、どの分の給料が支払われていないのか」「基本給、時間外労働、深夜時間外労働、休日労働、有給休暇など、それぞれの項目で未払いが発生しているのか」「交通費など、賃金以外の項目で未払いが発生しているのか」を確認しましょう。

そして、労働契約書と照らし合わせて、未払いになっている項目が、労働契約書でどのように定められているのかも確認しておきましょう。

(2)証拠を収集する

十分な証拠がなければ、労働基準法違反であることを証明できません。訴訟のときだけでなく、会社と直接交渉をするときにも証拠が必要です。

給料明細や労働契約書のほかに、以下のような証拠を収集しておきましょう。

  • タイムカードや勤怠表
  • 就業規則や退職金規定
  • 雇用契約書
  • 業務日誌
  • 録音やメモ

(3)会社に未払い給料の支払いを求める

給料の未払いが確認できたら、まずは上司や会社の人事部門に相談をしましょう。

未払いの理由と支払いの具体的な日にちを必ず確認しておきましょう。いつ、誰に、どのように相談したのか、どのような回答があったのかも記録しておくことが大切です。

(4)内容証明郵便を送付し会社と交渉する

上司や人事部門に相談しても支払いに応じなかった場合には、会社に対して内容証明郵便を送り未払い給料の支払いを求めましょう。

内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送ったのかを郵便局が証明してくれる郵便です。

万が一訴訟に発展した場合に強力な証拠となりますし、請求内容が本気であることが会社に伝わり、支払いに応じる可能性が高まります。

内容証明郵便は個人で作成することも可能ですが、弁護士に依頼し弁護士名義で作成してもらえばより効果的でしょう。

【内容証明郵便に記載する内容】

  • 請求者の氏名、住所、連絡先
  • 会社の名称、代表者名、住所
  • 請求する未払い給料の金額と内訳(基本給、残業代など)
  • 支払期限
  • 支払われない場合の対応(例:労働基準監督署への相談、法的措置)

(5)労働基準監督署への申告

会社に直接請求しても解決しない場合は、労働基準監督署に相談しましょう。労働基準監督署の指導や勧告には法的拘束力はありませんが、会社が未払い給料を支払うことが考えられます。

①民事調停

裁判所や調停委員を介して、当事者間の話し合いにより解決を目指す手続きです。

訴訟に比べて費用が安く、手続きが簡単です。ただし、あくまでも話し合いによる手続きのため、会社側が調停に応じない場合、調停は不成立となります。

また、強制力がないため、会社側が調停で合意した内容を守らない場合、改めて訴訟を起こす必要があります。

②少額訴訟

60万円以下の金銭の支払いを請求する場合に利用できる、簡易な訴訟手続きです。

1回の期日で判決が出るため、迅速な解決が可能です。しかし、請求額が60万円を超える場合には利用できません。

③支払督促

裁判所に請求し、相手方に異議がなければ、すぐに強制執行に移行できます。

費用が安く、手続きも簡便で、迅速な解決が可能です。しかし、会社側が異議を申し立てた場合、通常の訴訟手続きに移行するため、解決までに時間がかかる場合があります。

④労働審判

裁判官と労働審判員で紛争解決を目指す手続きです。原則として3回の期日で終了するため、比較的迅速に解決することができます。

裁判所が審判を下しますが、審判結果に対して異議申し立てがなされると、民事訴訟手続きに移行することになります。

⑤民事訴訟

支払督促や労働審判は、比較的簡便な手続きで行えますが、訴訟(裁判)手続きは複雑で法的知識が必要であるため、弁護士に依頼するのが一般的です。

3. 給料未払いについて知っておくべきこと

給料未払いの解決においての注意点と知っておくべきことを紹介します。

(1)未払い給料の請求には時効がある

未払い給料を請求できるのは、未払い発生から「3年」です。

以前は、賃金請求権の消滅時効は2年でしたが、民法166条の改正により5年に延長されました。現在はこの改正に伴う移行期間中のため、2020年4月1日以降に発生した未払い分の請求についても、引き続き3年という期限が適用されます。

時効が完成してしまうと、未払い給料の請求が認められなくなる可能性が高くなります。

時効成立を防ぐには、内容証明郵便の送付・労働審判の申し立て・訴訟提起など、時効の完成を阻止する手続きをとらなければなりません(「時効の完成猶予」または「時効の更新」)。

早期に弁護士などに相談し、適切な対応をとりましょう。

(2)退職後やアルバイト・パートでも請求できる

退職後でも、未払い給料を請求する権利は失われません。また、アルバイトやパートタイマーであっても、未払い給料を請求する権利があります。

賃金請求権の時効成立前であれば請求ができますので、雇用契約書や給与明細などを保管しておき、未払いがあれば、会社に請求しましょう。

(3)会社が倒産したら「未払賃金立替払制度」の利用を

会社が倒産した場合でも、国が未払い給料の一部を立て替えてくれる制度があります。倒産した会社の労働者を対象に、未払い給料や退職金の一定割合を支給してくれます。

会社が倒産しそうな場合や倒産した場合は、すぐに労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

(4)未払い給料を回収するには弁護士に相談を

未払いとなった給料を会社に請求したい場合の相談先は複数ありますが、弁護士に相談する方が、早期の解決につながります。弁護士は労働者の代理人として、会社に対して直接未払い給料を請求できるためです。

弁護士を通じて連絡することで、会社は未払い給料の支払いに応じる可能性が高まります。また、労働審判や訴訟などの法的手続きが必要になった場合にも、弁護士に依頼していればスムーズに対応してもらえます。

会社から適切に給料が支払われずお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2025年03月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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