ネットストーカーの被害に遭っている! 訴えることはできる?

ネットストーカーの被害に遭っている! 訴えることはできる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

インターネットの進化とともに、ネットストーカーという新たな問題が起こっています。特にSNSなどで情報を発信している方は、顔も知らない相手から執拗(しつよう)に絡まれるといった経験をしたことがあるのではないでしょうか。

本コラムでは、ネットストーカーについて定義や事例をはじめ、関連する法律や相談先などを詳しく解説します。

1. ネットストーカーとは?

ネットストーカーとは、インターネットを通じて特定の個人を執拗に付け回したり、嫌がらせをしたりする加害者のことです。ネットストーカーはSNSやブログで発信された情報を基に被害者の個人情報を特定し、無理な要求や付きまとい、脅迫などに及びます。

たとえ被害者から返信を拒否されたり、アカウントをブロックされたりといった対策がなされても、多くのネットストーカーは簡単に諦めることはありません。さまざまな手段を使って執拗にストーキング(ストーカー行為)を継続します。また、被害者について詳しく知っていることを誇示するように、不特定多数が見るSNSや掲示板などでその個人情報をさらす場合もあります。

インターネット上でのこととはいえ、こうしたストーカー行為は被害者に脅威や精神的苦痛を感じさせるものです。特に住所や実名などの個人情報を特定されてしまうと、ネットストーカーは現実世界でも付きまといなどのストーカー行為をし、最悪の場合は被害者の身に危害を加えるケースへと発展しかねません。

平成28年のストーカー規制法改正によって、拒否されているにもかかわらず執拗にメールやメッセージを送り続けることもストーカー行為として認定されるなど、これまで対象外だったネットストーカー行為も規制対象になりました。これにより、SNSなどを利用したネットストーカー行為に対しても警察が介入することが可能となり、被害者の保護が強化されています。

(1)ネットストーカーが現実の殺人未遂事件に発展した事例

ネットストーカー行為が現実の痛ましい事件にまで発展した事例を紹介します。「小金井ストーカー殺人未遂事件」と呼ばれる、芸能活動をしていた若い女性がネットストーカーにナイフで刺された事件です。

この事件の加害者は、芸能活動をしていた女性に恋愛感情を抱き、腕時計などのプレゼントを送り付けたあと、被害者に「いらないなら返してほしい」とSNS上でメッセージを送りました。女性がプレゼントを返送したところ、加害者は自尊心を傷つけられたとして、女性のSNSやブログなどに罵倒の書き込みを執拗に続けました。

女性は被告人からの投稿や閲覧をブロックしましたが、余計に被告人の逆恨みにつながることとなりました。加害者はブログの投稿から、被害者が東京の小金井市でライブを行うことを知り、女性に接触を図りました。そして加害者は折りたたみナイフで女性を何度も突き刺すなどの凶行に及びます。女性は重傷を負いましたが一命をとりとめました。

加害者はその後、殺人未遂の罪で14年6か月の懲役刑を言い渡されています。

2. ネット上でのストーカー行為で訴えることはできる?

小金井ストーカー事件の加害者は現実世界においてナイフで刺す行為に及んだため、逮捕に至りました。しかし、インターネット上でのストーカー行為にとどまっていたとしても、場合によっては以下のような犯罪が成立するため、訴訟などの対応をとることが可能です。

(1)脅迫罪

脅迫罪とは、他人に対して危害を加えると明示的または暗示的に伝え、その人の自由を奪ったり恐怖を感じさせたりする犯罪のことです。SNSやメールなどを介したものであっても成立します。そのため、たとえばSNSで「住所を特定した。家に行って殺してやる」などのメッセージを送った場合、加害者を訴えることが可能です。

(2)名誉毀損(きそん)罪

名誉毀損罪は他人の社会的評価を低下させるような情報を広める行為を指します。たとえ広めた情報が事実であったとしても適用されうる点が特徴です。たとえばネットストーカーがSNSや掲示板などで「あいつは男を誘惑しまくっている」などの被害者の社会的評価を損なうような投稿をした場合、それが真実であろうとなかろうと被害者は名誉毀損で訴えることが可能です。

(3)リベンジポルノ防止法違反

リベンジポルノとは、かつて恋愛関係にあった元パートナーや、恋愛感情を寄せている相手の性的な画像を、その人の同意なく公開したり、脅迫の手段として使ったりする行為のことです。インターネットの普及によってこのような行為に及ぶ事例が増加したため、平成26年にリベンジポルノ防止法が成立しました。ネットストーカー行為の一環として画像が公表・提供されることで、罰金や懲役の罪に問われる場合があります。

(4)暴行罪・傷害罪

暴行罪・傷害罪は、他人の身体に対して物理的な危害を加える犯罪です。大まかに分けて、暴力行為によって被害者が実際にけがを負った場合は傷害罪、けがを負わなかった場合は暴行罪が適用されます。ネットストーカーが現実世界での物理的な危害を加える行為にまで及んだ場合、暴行罪や傷害罪で訴えることが可能です。

3. 被害に遭った場合の相談先

ネットストーカーの被害に遭った場合、まずは一人で抱え込まないことが大切です。上記で挙げたとおり、ネットストーカーはさまざまな犯罪に抵触する可能性があるため、法的な措置をとることも検討しましょう。

(1)警察

身の安全を守るためにも真っ先に相談すべきなのはやはり警察です。被害状況を具体的に伝え、証拠となるメールやSNSの画面などを見せることで、加害者へ警告したり自身との接触を禁じる命令を発したりする対応が期待できます。ただし、特に被害がインターネット上に限定されている場合は、事件性(実害)はないと軽視されてしまい、すぐに動いてもらえない可能性も否定できません。

(2)弁護士

もうひとつの有力な相談先が弁護士です。法律の専門家であり、被害者の立場から最善の対策を行います。たとえ警察が動かない場合でも、弁護士であれば犯人の特定や交渉、裁判所に接近禁止の仮処分の申し立てを行うといった対応をとることが可能です。また、弁護士が警察に働きかけることで、本格的な捜査が開始される場合もあります。

ネットストーカーは、現実世界での傷害事件などに発展する場合もある危険な犯罪です。もし被害に遭ったら、決して事態を軽視せず、すみやかに警察や弁護士に相談しましょう。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年11月22日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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