YouTubeなどで人気のファスト映画。著作権上の問題で逮捕される?

YouTubeなどで人気のファスト映画。著作権上の問題で逮捕される?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

動画投稿サイト「YouTube」では、人気映画を短く編集した「ファスト映画」が人気を集めていたようです。過去の名作を観たことがない、短時間で大まかなストーリーを把握したいといった方に人気で、動画による広告収入を得たいと考えるユーチューバーが動画をアップするケースが多数です。

ところが、最近ではファスト映画をアップロードした疑いで逮捕されたという事例も起きています。令和3年6月には、ファスト映画をアップロードした男女3人が逮捕される事件も発生しました。

ファスト映画の問題点や逮捕の可能性について考えていきましょう。

1. ファスト映画は違法? 問題視される理由は著作権?

「ファスト映画」にはどのような問題点があるのでしょうか? 法的な観点から確認していきましょう。

(1)「ファスト映画」とは

ファスト映画とは、映画の重要なシーンを切り取って短く編集したり、静止画データにテロップをつけたりして、長いストーリーを観なくても10分程度であらすじや結末を理解できるように仕立てた動画を指す用語です。

「ネタバレ動画」や「あらすじ動画」とも呼ばれており、名作を見逃してしまった人や手軽にストーリーを知りたいといった人の需要が高く、数10万~数100万のアクセスを獲得している動画もめずらしくありません。

(2)ファスト映画を公開すれば著作権法に違反する

ファスト映画として公開されている動画のほとんどが、実は映画配給会社などの許諾を得ずにアップロードされています。映画作品にはすべて配給会社や製作者の「著作権」が与えられており、権利者の許諾を得ないまま動画投稿サイトなどにアップロードする行為は複製権や公衆送信権、翻案権などの侵害です。

著作権の侵害には「引用」について例外を認めていますが、単純に短く編集しただけである、その動画を観れば映画作品の全編にわたるストーリーが理解できてしまう場合は、新たな創作を行う上での従たる存在として用いているとは到底言えず、引用にはあたりません。

2. 逮捕される可能性と問われる罪

ファスト映画となる動画を作成し、権利者の許諾を得ないままその動画を動画投稿サイトにアップロードすれば著作権侵害にあたります。著作権法第119条1項の違反となり、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられる重罪です。

厳しい罰則が設けられているため、重責をおそれて逃亡や証拠隠滅を図る危険が高いと判断され、逮捕に至る危険もあります。また、近年では違法アップロード・違法ダウンロードへの対策が強化されており「ファスト映画を公開すれば厳しい対処が待っている」と広く知らしめるためにも、権利者が刑事告訴に踏み切り、刑事事件に至る危険が高いと考えられます。

3. 警察が来たとき起こり得ることとすべきこと

ファスト映画を公開していた容疑で警察による捜査を受ける事態になった場合、どのような状況になるのでしょうか?

(1)逮捕されれば身柄を拘束される

権利者からの警告を受けているにもかかわらずファスト映画の公開をやめなかった場合は、悪質な著作権侵害事件であると判断され、逮捕もされる危険が高まるでしょう。

警察に逮捕されると、警察段階で48時間以内、検察官に送致されて24時間以内、合計72時間以内の身柄拘束を受けます。この期間は、自由な行動が制限されるため自宅へ帰ることも仕事や学校へ行くことも許されないうえに、弁護士以外との面会は認められません。

さらに、検察官からの請求を裁判官が認めれば、勾留による身柄拘束を受けます。勾留による身柄拘束は最大20日間なので、逮捕から数えて23日間も社会から隔離されてしまうのです。

(2)違法状態の解消と謝罪が最優先

著作権法違反の容疑をかけられてしまい、刑事裁判で有罪となれば、厳しい刑罰が科せられる事態は免れられません。さらに、刑罰に加えて多額の損害賠償を請求されるおそれも高いので、できるだけ早い段階で解決策を講じる必要があります。

明らかに著作権侵害にあたる動画は直ちに削除するのはもちろん、権利者からの警告を受けた場合は、疑わしい動画であっても削除し、違法な状態を解消しておいたほうが安全でしょう。

また、すでに警察から「事情を聴きたい」と出頭を求められている場合は、権利者との示談交渉を進めて、示談が成立し、刑事告訴が取り下げられれば、事件が終結し逮捕も回避できる可能性が格段に高まります。

権利者から損害賠償を請求される危険も高いため、直ちに事件化の回避と謝罪・賠償を含めた示談交渉を進めなければなりません。個人での対応は難しいので、知的財産トラブルの解決実績が高い弁護士にサポートを依頼することをおすすめします。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年04月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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