罰金刑を受けてしまった…ビザ更新に影響ある?

罰金刑を受けてしまった…ビザ更新に影響ある?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

日本に在留する外国人の方が、交通違反などの軽微な犯罪で罰金刑を受けてしまった場合、在留資格の更新に影響が生じることがあります。

今回は、罰金刑を受けたことが在留資格の更新に与える影響についてまとめました。

1. 罰金刑とは

罰金刑とは、刑法その他の法律・条例によって設けられた刑罰の一種です。外国人の方でも、日本の刑罰法規に抵触する行為をすれば、罰金刑が科される可能性があります。

(1)刑罰の種類

現在の日本の法律では、重い順に以下の6種類の刑罰が定められています。

  1. 死刑
  2. 懲役(無期・1か月~30年、刑務作業義務あり)
  3. 禁錮(無期・1か月~30年、刑務作業義務なし)
  4. 罰金(1万円以上)
  5. 拘留(1日~29日)
  6. 科料(1000円~9999円)

※付加刑として「没収」が科される場合あり

罰金刑は、死刑・懲役・禁錮に次いで4番目に重い刑罰です。比較的軽微な犯罪の中には、罰金刑が上限とされているものが多く見られます。また、懲役・禁錮刑と罰金刑の両方が法定刑とされている犯罪も多いです。

①罰金刑が上限とされている犯罪の例

  • 失火罪(刑法第116条第1項)
  • 単純賭博罪(刑法第185条)
  • 過失傷害罪(刑法第209条第1項)
  • 過失致死罪(刑法第210条)

②懲役・禁錮刑と罰金刑が併設されている犯罪の例

  • 公務執行妨害罪(刑法第95条第1項)
  • 犯人蔵匿等罪(刑法第103条)
  • 業務上失火等罪(刑法第117条の2)
  • 住居侵入罪、不退去罪(刑法第130条)
  • 公然わいせつ罪(刑法第174条)
  • 贈賄罪(刑法第198条)
  • 暴行罪(刑法第208条)
  • 業務上過失致死傷等罪(刑法第211条)
  • 脅迫罪(刑法第222条)
  • 名誉毀損罪(刑法第230条第1項)
  • 侮辱罪(刑法第231条)
  • 業務妨害罪(刑法第233条)
  • 窃盗罪(刑法第235条)
  • 背任罪(刑法第247条)
  • 器物損壊罪、動物傷害罪(刑法第261条)

(2)罰金刑でも前科が付く

罰金刑についても、有罪判決が確定すれば、懲役・禁錮刑と同様に「前科」として取り扱われます。

外国人の方の場合、罰金刑の前科があることは、在留資格(ビザ)の更新に影響を与えることがあるので注意が必要です。

2. 罰金刑を受けたことで、ビザ更新に生じる影響

外国人の方が罰金刑を受けると、犯罪の種類によっては退去強制となることがあります。

退去強制にならなかった場合でも、更新に関する審査において、罰金刑を受けた事実はマイナスに考慮される可能性が高いです。

(1)罰金刑によって退去強制となる場合がある

罰金刑を科された行為に関連して、外国人が以下のいずれかに該当する場合には、入国審査官の審査を経て退去強制となることがあります。

  1. 他の外国人の不正入国を助けるため、文書・図画の偽造・変造等を行った者
  2. 公衆等脅迫目的の犯罪行為、その予備行為、またはその実行を容易にする行為を行うおそれがあるとして法務大臣が認定する者
  3. 外国人に不法就労活動をさせる行為などを行い、唆し、または助けた者
  4. 在留カード・特別永住者証明書の偽造・変造などを行い、唆し、または助けた者
  5. 以下のいずれかの行為をした者
    ・在留資格に応じた活動の範囲に違反した収益活動(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く)
    ・人身取引等、またはその教唆、幇助
    ・売春やその周旋・勧誘・場所の提供、その他売春に直接関係がある業務(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く)
    ・他の外国人の不法入国の扇動、教唆、幇助
    ・日本政府を暴力で破壊することの企図、主張、またはそれを行う団体の結成、加入
    ・暴力的な政党その他の団体の結成、加入、またはこれと密接な関係を持つこと
    ・暴力的な政党その他の団体の目的を達するための、文書図画の作成、頒布、展示
    ・その他、日本国の利益・公安を害する行為

など

退去強制事由に該当すると、永住許可を受けている場合や、法務大臣が特別に在留を許可すべき事由があると認める場合などを除き、当該外国人は本国へ強制送還されてしまいます(出入国管理法第50条、第55条の3)。

(2)退去強制事由に当たらない場合でも、審査上マイナスに働き得る

退去強制事由に該当しない場合は、外国人が罰金刑を受けたとしても、直ちに日本から退去する必要はありません。

ただし、在留期間満了後の資格更新に当たっては、罰金刑を受けた事実がマイナスに働く可能性があります。在留資格の更新は、法務大臣が適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されるところ(出入国管理法第21条第3項)、罰金刑の前科は、在留資格の更新が不適当と判断する方向に働くからです。

罰金刑を受けた後で在留資格更新許可申請を行う場合には、その事実を正直に申告した上で、反省の態度を示すことが大切になります。さらに、本国に送還されると日本の家族が路頭に迷うなど、日本に在留する必要性を具体的に主張できれば、在留資格の更新が認められる可能性が高まるでしょう。

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