二世帯住宅の共有名義は避けるべき? 相続で陥りやすいトラブル
老後のことを考えて、子ども夫婦と一緒に二世帯住宅を建てる方も増えてきています。二世帯住宅を建てる際には、親からも建築資金の提供がなされるケースも多く、共有名義で登記されるのが一般的です。
しかし、二世帯住宅を共有名義のままにしておくと、将来的に相続においてトラブルが発生する可能性もあるため注意が必要です。
本コラムでは、二世帯住宅の共有名義において起こり得る相続トラブルと、そのトラブルを回避する方法について解説します。
1. 二世帯住宅の名義の種類
二世帯住宅の名義にはどのような種類があるのでしょうか。
(1)二世帯住宅の名義には3種類ある
二世帯住宅の登記名義には、大きく分けて「単有登記」「共有登記」「区分登記」の3つのパターンが考えられ、それぞれ登記する方法が異なります。
- 単有登記
二世帯住宅を一戸の住宅とみなして、親または子どもが単独所有する形式で登記する方法 - 共有登記
二世帯住宅を一戸の住宅とみなして、親および子どもの共有名義で登記する方法 - 区分登記(区分所有登記)
二世帯住宅を二戸の住宅とみなして、親および子どもがそれぞれ登記する方法で、完全分離タイプの二世帯住宅で選択が可能
二世帯住宅では、親世帯からも建築資金の提供を受けることも多いので、贈与税の課税負担を避けるために、共有名義で登記するのが一般的です。
(2)共有名義にすることのメリット
二世帯住宅を共有名義にすることによって、以下のメリットがあります。
①贈与税の課税負担を回避できる
親に建築資金を支払ってもらい、子ども単有名義の登記をすると、その贈与を受けた建築資金相当の贈与となり贈与税の納税義務が生じる可能性があります。建築資金を親に払ってもらったのであれば、支払った金額相当の持ち分でそれぞれ正しく登記する必要があります。
②小規模宅地等の特例により相続税の負担が軽減される
小規模宅地等の特例とは、相続税の負担を軽減する制度で、一定の要件を満たした場合に、宅地の評価額を限度面積(330㎡)まで80%減額できるというものです。
注意点として、小規模宅地等の特例は、建物の登記が区分登記である場合には原則適用されません。親子それぞれ資金を出した場合は、区分登記ではなく、建物を共有登記にすることで、小規模宅地等の特例を利用して相続税対策ができます。
2. 二世帯住宅の相続で発生しやすいトラブル
二世帯住宅の相続では、以下のトラブルが発生する可能性があるため、注意が必要です。
(1)二世帯住宅の分け方をめぐるトラブル
親が亡くなった場合には、配偶者と子どもが相続人になるため、遺産を相続することになります。二世帯住宅を親と子どもで共有している場合には、二世帯住宅に居住し共有持分を持つ子どもが親の持ち分を相続するのが一般的です。しかし、同等の価値がある遺産がない場合には、兄弟姉妹の間に不公平感が生まれてしまいます。
このように被相続人に複数の子どもがいる場合には、二世帯住宅に住む子どもと他の子どもとの間で、遺産分割方法をめぐりトラブルが生じる可能性があります。
(2)二世帯住宅の処分をめぐるトラブル
親が亡くなり、二世帯住宅だと広すぎると感じた場合には、二世帯住宅の売却を検討することもあります。単有登記であれば、所有者が単独で売却できますが、共有名義の場合には、すべての共有者の同意がなければ不動産の売却をすることはできません。親が亡くなり、他の相続人との共有状態になってしまうと、二世帯住宅をどうするのかという利活用をめぐってトラブルが生じる可能性があります。
3. 相続トラブルを回避する方法
相続トラブルを回避するには、以下の方法が考えられます。
(1)共有名義を解消する
二世帯住宅のトラブルの多くは、親と子どもとの共有名義であることが理由で発生します。そのため、相続開始前に共有名義を解消することができれば、相続トラブルを回避することが可能です。
しかし、親が生前に共有名義を解消するためには、子どもに対して共有持分を譲渡することになりますが、これが贈与にあたる可能性があります。そのため、生前に共有名義の解消を検討している場合は、贈与税がかかったり遺産分割時に生前の贈与をどのように反映するかで紛糾したりするデメリットも踏まえて慎重に判断する必要があります。
(2)遺言書を作成する
共有者である親が生前に遺言書を作成することも、相続トラブルを回避できる有効な手段となります。遺言書を作成しておくことで、相続人による遺産分割協議が不要になるため、二世帯住宅の分け方をめぐってトラブルになるおそれはありません。
ただし、遺言で不平等な遺産の分け方をしてしまうと、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求を受けるおそれもあるため、注意が必要です。
遺言書を作成し、トラブルを回避したい方は、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年11月30日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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