相続時精算課税制度とは? 改正後のメリットと注意点を解説
父母・祖父母からの生前贈与に対する課税方式のひとつに相続時精算課税制度があります。本コラムでは、相続時精算課税制度の概要、2024年1月から適用される改正後制度のメリット、さらに本制度を利用する際の注意点について解説します。
贈与税の節税対策として活用できる「相続時精算課税制度」ですが、2024年1月から適用される税制改正で110万円の基礎控除枠が追加され、節税という面から見ればプラスになります。
本記事では、本制度の概要とメリットや注意点、改正のポイントについて解説します。
1. 相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度とは、財産の生前贈与が2500万円まで非課税(特別控除)になり、2500万円を超えた金額に対して20%が課税される制度です。
18歳以上(2022年3月31日以前の贈与で財産を取得した場合は20歳以上)の人が60歳以上の父母や祖父母などから財産を贈与された際に選択できます。
選択届出書を提出していれば、同一の贈与者が受贈者に対して何回贈与を行ったとしても、合計額が2500万円に達するまでは贈与税がかかりません。
ただし、贈与者が亡くなって相続が発生した際には、相続人が受け取る相続財産に、これまでに受け取ってきた生前贈与分が加算されて相続税が課されます。相続時精算課税制度を利用する際には、贈与財産を受け取った年の翌年2月1日から3月15日に必要書類をそろえて税務署へ贈与税申告書を提出しなければなりません。
(参考:「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」(国税庁))
(1)暦年課税との違い
贈与税は、毎年1月から12月までの1年間に受け取った贈与財産の合計額に対して課税されます。贈与税の課税方式には上述した相続時精算課税制度のほかに「暦年課税」があります。
暦年課税では、毎年の贈与額の合計の110万円を超えた額に対して課税されます。たとえば、ある年に500万円を贈与された場合、110万円を超える390万円に対して課税されます。受贈額が110万円以下であれば、申告する必要もありません。
ただし、110万円以下であっても、毎年一定の額を一定の時期に受贈していると定期贈与とみなされ、贈与税を課せられる場合があります。
贈与税の原則的な課税方式といえるのは暦年課税です。相続時精算課税制度を選択しない限りは暦年課税が適用され、1年ごとに贈与税が計算されます。課税方式は、母や父などの贈与者ごとに変えることも可能です。
ただし、一度相続時精算課税制度を選択すると、選択した年以降で指定した贈与者から贈られたものはすべて本制度の対象となります。暦年課税に戻したいと思ってもできません。
(2)相続時精算課税制度の2024年1月改正のポイント
相続時精算課税制度には、2023年度の税制改正(2024年1月1日から適用)で、さらに年110万円の基礎控除が追加されます。指定贈与者からの110万円以下の贈与財産には課税されず、かつ2500万円の特別控除分に含める必要もありません。
さらに、110万円以下の贈与には贈与税の申告は不要です。2024年1月1日以降に贈与される財産で、本制度を選択している場合の贈与税および相続税に適用されます。
(3)適用対象者
本制度を利用できるのは、贈与者と受贈者が一定の血縁関係にある場合です。詳細な条件を見ると、贈与者が財産を贈った年の1月1日に60歳以上であり、かつ受贈者が贈与者の子や孫といった直系卑属であって、受け取った年の1月1日に18歳以上である場合です。
2. 改正後の相続時精算課税制度のメリット
基礎控除が追加された税制改正によって、本制度のメリットは拡大します。贈与の方法や贈与時期などを考慮してうまく制度を活用すれば、節税に効果があります。
(1)110万円の基礎控除
改正後には毎年110万円の基礎控除が追加されるため、累計2500万円の特別控除枠を使い切ったあとにも贈与税の非課税枠がなくなりません。
改正前には、2500万円を超える部分は全額が贈与税の対象になっていましたが、改正後は年間110万円までの基礎控除枠内の金額であれば、相続財産として計算する必要がなく、改正前に比べて税額が抑えられます。
(2)相続財産の値上がり対策
本制度を利用した場合には、一度に大きな金額が動く不動産などが贈与される際にも、2500万円以下であれば、その時点で高額の税金を支払う必要はありません。
将来的に値上がりする可能性が高い財産がある場合には、価格が上がる前に贈与を済ませておくと、贈与時の価格のまま相続財産にできるため、相続税を節税することが可能です。
(3)改正後の暦年課税との比較
今回の税制改正では暦年課税にも変更がありました。改正前は、相続開始前の3年以内に贈与された財産が生前贈与加算対象ですが、改正後は3年が7年に延長されます。
追加された4~7年前の贈与額合計からは、総額100万円を差し引いて生前贈与に加算しなければなりません。生前贈与加算対象期間が長くなったため、基本的にはこれまでよりも税金が増えます。
暦年課税のメリットは、相続開始から7年以上前の生前贈与を相続財産に加える必要がない点、相続や遺贈で財産を譲られた贈与者以外からの贈与は相続財産に加算しなくてもよい点です。
3. 利用する場合の注意点
相続時精算課税制度の利用には、注意しなければならない点もあります。贈与額が年間110万円を超えた場合には、贈与税の申告を行う必要があります。
また、本制度を利用して取得した宅地には、相続時に小規模宅地等の特例が適用できなくなります。贈与者と同居して生計を同じくしている家、別居しているが、生計が同じ親族が住んでいる家を相続する場合などで、小規模宅地等の特例が適用されるケースでは、制度を利用しなくても相続税を抑えられる場合があります。
暦年課税と相続時精算課税制度、それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらを選択するべきかは状況によって異なります。相続前から対策が必要になる相続税の節税、トラブルが生じやすい相続の問題は、専門家に相談して効率的に対策を行うことをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年10月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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