孫に生前贈与をしたい! メリットと注意することとは

孫に生前贈与をしたい! メリットと注意することとは

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

自分を慕っている孫のために、少しでも何かしてあげたいと願っている方は多いのではないでしょうか。その点、生前贈与は孫の学費や結婚資金などを直接援助できるだけでなく、相続税対策にもなる方法です。

本記事では孫に生前贈与をするメリットと、生前贈与をする際の注意点を解説します。

1. 孫へ生前贈与するメリット

通常、生前贈与と言えば、親から子への贈与を考える人が多いかもしれません。しかし、祖父母から孫への生前贈与には次のような特有のメリットがあります。

(1)相続税を1世代分スキップさせられる

通常、財産を相続するとき、親から子、子からまたその子(孫)へと一世代ごとに引き継いでいきます。しかし、相続では基本的にその都度相続税が発生するため、相続を繰り返せば繰り返すほど余計に税金がかかります。

その点、祖父母から孫へと1世代分スキップして直接贈与することで、子の世代における相続税の発生を避けられます。これにより、税金で財産を余計に目減りさせることなく、より多くの財産を孫へ残しやすくなります。

(2)3年以内の持ち戻しがされないため相続税の課税対象にならない

生前贈与には、贈与者が亡くなった場合、その贈与が3年以内であれば相続税の課税対象となるという規定があります(2024年1月1日以降の贈与は、最長7年になります)。

しかし、孫への贈与の場合、この3年のルールが適用されません。つまり、孫へ財産を贈与してから3年以内に自分が亡くなった場合でも、贈与された分について孫が相続税を納める必要はないということです。

これは、孫が法定相続人ではないことに由来するメリットであり、子に対する生前贈与よりも明らかに優位な点として挙げられます。

(3)経済的に孫を直接援助できる

学費にせよ結婚・子育てにせよ、人生の節目には多額のお金が必要です。生前贈与をすることで、そうした人生の転機に立っている孫を直接サポートできるのは祖父母としても喜ばしいことではないでしょうか。

学費や住宅購入などに対する資金援助は贈与税の非課税枠が大きく設定されているため、それらを活用すれば大きな節税効果も見込めます。

2. 孫へ生前贈与する方法

孫に少しでも多くの財産を残すには、贈与税の課税対象をなるべく少なくするように節税を意識することが重要です。非課税になるように孫へ生前贈与する方法を紹介します。

(1)教育資金として生前贈与する

教育費は、非課税で孫に生前贈与するために有力な手段のひとつです。30歳未満の孫に教育資金として一括贈与をする場合、一人当たり最大1500万円もの非課税枠が設定されています。

中学・高校・大学の学費、学習塾やスポーツ・芸術関係の習い事にかかる費用などを出してもらえれば、孫自身だけでなく、その親、つまり子世代にとっても経済的に大変助かることです。

手続きは金融機関の窓口で行います。祖父母は贈与した資金の管理契約を金融機関と結び、孫名義の口座に一括で入金します。孫は、領収書やレシートの提出などを通して、金融機関にそれらの出費が教育費として必要だったことを証明した上で贈与税非課税でお金を引き出せます(目的外の引き出しには贈与税がかかります)。

未成年の場合、保護者である親が手続きを代行します。孫が30歳になると同管理契約は終了し、口座に残っていた資金は贈与税の対象となります。

(2)保険を利用する

生命保険を利用した生前贈与も、税制上有効な手段とされています。保険に加入する際に、祖父母を被保険者、孫を受取人に指定することで、祖父母が亡くなった際に孫は相続税を納めず、所得税の一時所得だけを納める形で保険金を受け取ることができます。

(3)結婚・子育て資金として生前贈与する

孫の結婚・子育てのタイミングも、非課税で多額の財産を生前贈与できるチャンスとして挙げられます。結婚資金としての贈与は300万円、出産・育児費用も加算すると総額1000万円もの生前贈与を非課税にすることが可能です。

これに加え、孫がマイホームを購入する際は、住宅取得等資金として最大1000万円を非課税で贈与できます。これらの非課税制度を利用することで、効果的に節税対策をしつつ、孫が人生の重要なステージを迎える際の経済的援助ができます。

3. 生前贈与する際の注意点とは

上記のように、孫への生前贈与には大きな節税効果がありますが、他方でいくつかの注意点もあります。

(1)未成年者への贈与は親権者と契約する必要がある

未成年の孫への生前贈与は、親権者との契約が必要となります。したがって、未成年の孫への贈与を考える場合、祖父母視点から見た子、または子の配偶者の同意を得ることが欠かせません。万全を期すためには、贈与契約書を作成するのがおすすめです。

(2)定期贈与は課税対象

通常、年間の贈与額が110万円以内である場合は、非課税扱いになります。しかし、毎年一定額の贈与を繰り返していると、定期贈与とみなされて課税対象になる場合があります。たとえば、孫の誕生日に毎年100万円贈与するなどしていると、定期贈与と判断されてしまうかもしれません。定期贈与と判断されてしまうと、勿論贈与税が適用されます。

適切に非課税制度を利用して生前贈与をしていくことで、孫の人生を援助しつつ適切な節税を行えます。財産を効果的に次世代へつなげていくために、ぜひさまざまな制度を活用してください。

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  • こちらに掲載されている情報は、2023年08月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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