空き家は相続放棄すべきか? その注意点も解説

空き家は相続放棄すべきか? その注意点も解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

相続財産のなかに空き家が含まれている場合には、どのように遺産相続を進めていけばよいのか悩まれる方も少なくないでしょう。相続放棄をすることによって、空き家を手放すことができますが、相続放棄をした後の状況によっては、空き家の管理責任が残ってしまう可能性もあります。

今回は、空き家を相続放棄する手続きとその注意点について解説します。

1. そもそも相続放棄とは?

そもそも相続放棄とはどのような手続きなのでしょうか。

(1)相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人の遺産を相続する一切の権利を放棄する手続きのことをいいます。すべての遺産に関する権利を放棄することになりますので、現金、預貯金、不動産といったプラスの遺産だけでなく、借金などのマイナスの遺産についても相続する必要がなくなります。

相続放棄は、主に被相続人に多額の借金がある場合に利用される手続きですが、遺産のなかに空き家が含まれているなど相続したくない財産があるという場合にも利用される手続きです。

(2)相続放棄の手続き

相続放棄をする場合には、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述という手続きをとる必要があります。相続放棄の手続きには期限があり、相続放棄の申述は、相続開始があったことを知った日から3か月以内に行わなければなりません。

また、相続放棄をする場合には、相続財産の処分行為をしないようにしなければなりません。相続財産に空き家があるからといって、取り壊しをしてしまうと、法定単純承認事由に該当し、相続放棄をすることができなくなってしまう可能性があります。

2. 空き家を所有しておくと困ることは?

空き家を相続した場合には、以下のような負担が生じることになります。

(1)固定資産税の負担

毎年1月1日時点で不動産を所有している方(登記簿上の所有者)に対して、固定資産税という税金が課税されることになります。空き家で利活用していない不動産であったとしても、固定資産税の負担は生じます。空き家をそのままの状態にしておくと、税金の負担ばかり生じてマイナスの資産になってしまいます。

(2)相続税の負担

遺産を相続した場合には、相続財産の総額に応じて相続税が課税されることになります。相続税は、相続財産が基礎控除額(3000万円+600万円×相続人の数)を超える場合に、課税されることになりますが、空き家であっても資産であることには変わりありませんので、相続税の算定基礎となる財産に含まれることになります。

(3)空き家の管理義務

空き家を相続した場合には、空き家の所有者として空き家を適切に管理する義務が生じます。空き家の状態で放置をしていると、庭木や雑草が生い茂り、近隣住民に迷惑をかける可能性がありますので、管理者として庭木の伐採や除草をしなければなりません。

また、空き家が老朽化して倒壊のおそれがあるという場合には、費用をかけて取り壊しをしなければならない場合もあります。

3. 実際に空き家を相続放棄する際の注意点

実際に空き家を相続放棄する場合には、以下の点に注意が必要です。

(1)一部の相続人が空き家を相続する場合

相続放棄の手続きは、各相続人が個別に行うことができます。そのため、一部の相続人のみ相続放棄をして、その他の相続人は空き家を相続するということもあります。

相続人のなかに空き家を相続した相続人がいれば、相続放棄をした相続人は、空き家の管理責任を免れることができますが、親族間のトラブルが生じないように注意が必要です。

同順位の法定相続人がすべて相続放棄をした場合には、相続権は後順位の相続人に移ることになります。たとえば、被相続人の子どもが相続放棄をした場合には、被相続人の両親が相続人となり、被相続人の両親が相続放棄をした場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

後順位の相続人としては、空き家の負担を押し付けられたと感じることもありますので、相続放棄をする場合には、後順位の相続人にも事情をしっかりと説明しておくことが大切です。

(2)相続人全員が相続放棄する場合

相続放棄をすることによって、原則として空き家の管理責任を免れることができますが、相続人全員が相続放棄をした場合には、相続放棄をした相続人にも空き家の管理責任が生じることになります。

相続放棄をした相続人が空き家の管理責任を免れるためには、家庭裁判所に相続財産管理人の選任申し立てをしなければなりません。相続財産管理人は、空き家を適切に管理しながら、相続財産を国庫に帰属させるための処理を行う人です。

ただし、相続財産管理人の選任申し立てにあたっては、家庭裁判所に予納金を納めなければなりませんので、一定の費用負担が生じるという点に注意が必要です。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年12月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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