お墓は相続放棄できない? 遺産相続とは違う「祭祀承継者」の決め方

お墓は相続放棄できない? 遺産相続とは違う「祭祀承継者」の決め方

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

「お墓はどうやって相続すればいいの?」などお墓の相続に関してお悩みの方も少なくないでしょう。お墓や仏壇などは一般的な相続財産とは異なる方法で相続手続きが定められていますので、お墓が含まれる場合には、これらの手続きをしっかりと理解しておくことが大切です。

今回は、祭祀財産であるお墓を引き継ぐ祭祀承継者の決め方について解説します。

1. お墓は相続放棄できない

被相続人がお墓を所有していた場合には、お墓の管理を負担に感じる相続人としては、相続放棄によってお墓の管理義務を免れたいと考えることもあるかもしれません。

しかし、お墓や仏壇は、「祭祀財産」と呼ばれており、現金、預貯金、不動産といった相続財産とは区別された特別な財産になります。相続放棄をすることによって、遺産を相続する一切の権利を放棄することになりますが、祭祀財産は遺産には含まれませんので、相続放棄をしたとしても、お墓の管理義務を免れることはできません。

なお、お墓や仏壇などの祭祀財産を承継したとしても、相続税や贈与税は発生しません。

2. 祭祀承継者とは

お墓は、「祭祀承継者」が引き継ぐことになりますが、祭祀承継者とはどのような人物で、どのような役割があるのでしょうか。

(1)祭祀承継者とは

祭祀承継者とは、お墓や仏壇といった祭祀財産を承継して、その管理をする人のことをいいます。祭祀財産は、相続財産には含まれませんので、祭祀財産の承継は、相続人による遺産分割ではなく、祭祀承継者を決める方法によって行います。

祭祀承継者には、特別な資格などを要求されていませんので、相続人以外の第三者を祭祀承継者に指定することもできますし、相続放棄をした相続人であっても祭祀承継者になることができます。

(2)祭祀承継者の役割

祭祀承継者になった場合には、以下のような役割を担います。

①お墓の維持・管理

祭祀承継者は、お墓を承継することになりますので、お墓の維持・管理を行わなければなりません。具体的には、定期的なお墓参りや管理者として霊園への管理料の支払いをしていくことになります。

また、最近増えてきている墓じまいについても、祭祀承継者が単独で判断することができます。

②法要の主宰

被相続人が死亡すると、初七日、四十九日、一周忌といった各種法要を執り行わなければなりません。このような法要を主宰するのも祭祀承継者の役割です。祭祀承継者は、法要を実施する際に親族との日程調整を行ったり、お布施の支払いなどを行うことになります。

3. 祭祀承継者の決め方

祭祀承継者は、どのように決めればよいのでしょうか。以下では、祭祀承継者の決め方について説明します。

(1)被相続人の指定

被相続人が祭祀承継者であった場合には、被相続人の意思によって後任の祭祀承継者を指定することができます。指定の方法には、特に決まりはありませんので、口頭による方法、書面による方法など任意の方法によって行うことができます。

ただし、祭祀承継者を指定する場合には、後日親族間でトラブルが生じる可能性もありますので、遺言書などの書面により祭祀承継者を指定するのが望ましいでしょう。

なお、祭祀承継者に指定されたからといって、遺産を多くもらうことができるわけではありません。祭祀承継者に指定された人は、管理料やお布施の支払いといった負担が生じることになりますので、遺言書で指定する場合には、法定相続分よりも多くの遺産を相続させるなどの配慮が必要となるでしょう。

(2)慣習

被相続人による祭祀承継者の指定がない場合には、慣習によって、祭祀承継者を決めることになります。慣習とは、被相続人の住所地や出身地などにおいて長年維持されてきた地方的慣習のことをいいます。

(3)家庭裁判所の決定

被相続人による祭祀承継者の指定がなく、慣習でも祭祀承継者を決めることができないという場合には、最終的に家庭裁判所の決定によって祭祀承継者を決めることになります。

相続人から祭祀承継者指定の申し立てがあった場合には、裁判所は、被相続人との血縁関係、被相続人の意思、過去の生活関係、生活感情の緊密度、祭祀承継者の意思・能力などを総合的に判断して祭祀承継者の決定を行います。

(4)関係者による協議

法律上の規定があるわけではありませんが、関係者の協議によって祭祀承継者を決めることも可能であると考えられています。実務上は、関係者の協議によって祭祀承継者が決められることが多いといえます。

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