遺産分割の流れとは? 協議・調停・審判・裁判の各手続きを紹介
初めて相続手続きを経験する方には、どのような方法で進めていけばよいのかわからないという方が多くいらっしゃるでしょう。遺産分割の手続きには、遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割審判というものがあり、遺産分割に関する前提事実に争いがある場合には訴訟手続きを利用することもあります。
今回は、このような遺産分割の手続きの流れについて解説します。
1. 遺産分割協議の流れとは?
被相続人が亡くなった場合には、遺産分割協議によって遺産の分け方を決めることになります。遺産分割協議は、一般的に以下のような流れで進みます。
(1)遺言の有無を確認
被相続人が亡くなった場合には、被相続人が遺言をしていないかを確認します。遺産分割の手続きは、遺言の有無によってその後の進め方が異なってきますので、きちんと調査を行うようにしましょう。
公正証書遺言であれば、公証役場で申請をすることによって、遺言の有無を検索することができます。これに対して、自筆証書遺言は、自宅に保管されていることが多いため、貴重品が入っている場所や金庫などをよく探してみるようにしましょう。
なお、自筆証書遺言の場合には、必ず裁判所の検認手続きを経なければなりません。勝手に開封したとしても遺言自体が無効になるわけではありませんが、5万円以下の過料に処せられることがありますので注意が必要です。
遺言書がある場合には遺言書に従って遺産分割を行います。
遺言書がない場合や、遺言書はあるが遺言書には記載されていない相続財産がある場合には、以下のように遺産分割を進めていきます。遺言書はあるが遺言書に記載されていない相続財産がある場合には、記載されていない相続財産についてのみ以下の手続きを進めます。
(2)相続人の調査
遺産分割協議を行うためには、相続人全員が参加していることが必要になります。相続人のうち一人でも欠いた場合には、そのほかの相続人で遺産分割協議を成立させたとしても無効になります。遺産分割協議が無駄にならないようにするためにも、正確に調査を行うことが重要です。
なお相続人は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本などを取得して調査します。
(3)相続財産の調査
相続人の調査と並行して、遺産分割の対象となる相続財産の調査も行います。
遺産分割協議の際に相続財産に漏れがあったとしても、相続人の漏れと異なり、遺産分割協議が無効になることはありません。しかし、漏れのあった財産を対象に遺産分割協議を別途行わなければならないこともありますので、正確な調査が重要であることに変わりはないでしょう。
相続財産には、不動産、現金、預貯金、有価証券などの積極財産だけでなく、借金などの消極財産も含まれます。相続放棄や限定承認をするかどうかの判断にあたっても、正確に相続財産調査することが重要です。
(4)遺産分割協議
相続人の調査と相続財産の調査が終わった段階で、遺産分割協議を行います。協議の結果、相続人全員の合意が得られた場合には、合意内容を遺産分割協議書にまとめて、相続人全員から署名と実印による押印をしてもらいます。遺産分割協議書は、その後の相続登記などの手続きで必要になりますので、必ず作成するようにしましょう。
なお「(2)相続人の調査」で触れたように、遺産分割協議には相続人全員が参加することが必要です。しかし、相続人全員が一堂に会して話し合いをすることまでは要求されていません。
最終的に1つの内容に全員が同意できればよいため、話し合いは個別に電話をするなどして行うことでも十分です。合意成立時に作成する遺産分割協議書に全員の署名と実印による押印をすることで相続人全員の合意であることを明確にします。
2. 協議がまとまらないときに利用できる手続きの流れは?
遺産分割協議を行ったものの、法定相続人全員の合意が得られなかった場合には、以下のような手続きを利用して解決を図ることになります。
(1)遺産分割調停
遺産分割方法について相続人同士の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に対して遺産分割調停を申し立てることができます。
遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員が、当事者から事情を聞いたり、資料を提出したりするなどして、当事者の遺産分割に関する意向を聴取します。そして、当事者に譲歩を促すなどして紛争の解決に向けて調整をしてくれます。
当事者全員から遺産分割方法について合意が得られた場合には、調停が成立し、その内容が調停調書に記載されます。しかし、当事者の一人でも反対する人がいれば、調停は不成立となります。
(2)遺産分割審判
遺産分割調停が不成立となった場合には、自動的に遺産分割審判の手続きが開始されます。遺産分割審判では、当事者双方から遺産分割に関する主張立証がなされた後、裁判官が一切の事情を考慮して、審判という結論を言い渡します。
審判では、基本的には法定相続分に基づく遺産分割を前提としていますので、遺産分割協議や調停のように、柔軟な解決はできません。そのため、審判内容に不満を抱く相続人もいるかもしれませんが、不服がある場合には、即時抗告という手続きによって審判内容を争うこともできます。
(3)遺産分割の前提問題についての訴訟
被相続人が遺言書を残していたとしても、遺言を作成した当時被相続人が認知症であったなど、被相続人の遺言能力に疑義がある場合には、遺言の有効性が問題になることがあります。また、被相続人と同居していた相続人が、生前に被相続人の預貯金を不当に使い込んでいた疑いがあるなど使途不明金が問題になることもあります。
これらの遺産分割に付随する問題については、遺産分割調停や審判の中で解決できる問題ではありません。相続人同士の話合いで解決できれば良いですが、解決できない場合には、地方裁判所で民事訴訟を提起して解決を図ることになります。特に遺言書の有効性の確認については、それが確認できないとその後の遺産分割が進められませんので、遺産分割手続きに先立って行う必要があります。
- こちらに掲載されている情報は、2022年05月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
遺産相続に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?
関連コラム
-
- 2024年03月08日
- 遺産相続
-
- 2024年02月19日
- 遺産相続
-
- 2024年02月08日
- 遺産相続