毒親と縁を切りたい! どんな対応ができる?

毒親と縁を切りたい! どんな対応ができる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

近年「毒親」と呼ばれる、子どもに悪影響を及ぼす親、害をなす親の存在が取り沙汰されています。現在も毒親に苦しめられている子どもも少なからず存在します。

そこで本記事では毒親を持つ方に向けて、毒親への対処法について解説します。

1. 毒親とは? 毒親の定義とタイプ

「毒親」という言葉自体は、法律用語や医学的な用語ではありません。過剰ともいえる過干渉や躾(しつけ)という名の暴力、金銭的搾取などがあげる事例を多く見受けられますが、明確な定義はないといえます。

しかし、親から子どもに対して行われる行為が以下の状況に当てはまる場合、それぞれの行為について法的な対応ができる可能性があります。

(1)経済的DV

子どもにお金を要求する、もしく一切与えない、働くことを著しく制限して管理下に置こうとするなどの行為が経済的DVと呼ばれています。

民法では、子どもは親を扶養する義務があるとされています。しかし、親を引き取って同居して扶養しなければならないわけではなく、別居して離れて生活し、生活費を送金するという方法で親を扶養することもできます。

その際の生活費の送金に関しても、子どもが親に対して負う扶養義務は、配偶者や子供に対する扶養義務と異なり、自分に余力がある場合のみでよいとされています。そのため、子どもの経済状況が芳しくなければ、生活費を送金する必要すらないということとなります。

(2)ネグレクトタイプ

食事を与えない、身辺の世話を怠る、無視をするなどの行為をネグレクトといいます。ただし、すでに食事や身辺の世話が必要のない場合は当てはまりません。

なお、ネグレストについては、「児童虐待の防止等に関する法律(通称:児童虐待防止法)」では、以下の文言で定義されています。

児童虐待防止法 第2条第3項
児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。

なお、ここに記載されている「前2号または次号に掲げる行為」とは、児童に対する暴力行為、わいせつ行為、暴言や著しく拒絶的な対応をとることを指します。

(3)児童虐待、家庭内暴力タイプ

加害者と被害者が肉親同士であっても、暴行罪、傷害罪に問われる可能性があります。
また、子どもがまだ小さいにもかかわらず、食事を与ええず、その生存に必要な行為をしなかったときは、保護責任者不保護罪の罪に問われる可能性があります。

殴る蹴るなどの身体的な暴力だけでなく、親の精神的な侮辱行為、ネグレクト等によってPTSDなど重い精神障害が発症したことが立証できるケースなどにおいても、傷害罪に問えることがあり得ます。また、前述の児童虐待防止法において規制される可能性もあります。

2. 毒親の対処法

ご自身の親が毒親に該当して、耐えがたい被害を受けている場合は以下の方法を検討しましょう。

(1)暴力行為がみられる場合

親から殴る蹴る等の暴力を受けている場合、警察への通報を検討しましょう。親子間であっても、暴行罪や傷害罪は成立する可能性があります。

(2)未成年の場合

あなたが未成年の場合は、児童相談所に暴力や暴言、ネグレクトや金銭の搾取があることを相談しましょう。児童相談所が被害の実態を把握して、保護してくれる可能性があります。

3. あなたが成人している場合、毒親と縁を切る方法はあるのか

「とにかく毒親から逃れたい」場合、毒親と縁を切る方法があるのかについて解説します。

(1)親子関係を法的に絶つことはできない

親と子どもの関係を法律的に断ち切ることはできません。子どもが親の戸籍から抜ける「分籍」という手続きは可能ですが、それでも親子関係は継続します。結婚したり養子になったりしても同様です。

(2)逃げる勇気を持つ

子どもは親に対して扶養義務を負っています。扶養の方法としては、親を引き取って同居しながら扶養する方法と、親を引き取らずに生活費を支払う方法の二つがあります。

そのどちらかにするかは、親との協議により決めることとなるのですが、毒親と話したくないもう二度度会いたくないということであれば、家庭裁判所を介して、どちらの方法を取るか決めることができます。

その多くは、親を引き取らずに生活費を支払う方法によっています。親子だから同居する義務があると規定されているわけでもありませんので、まずは「親から逃げてもいい」ということを理解しましょう。

毒親の被害を受けている子どもの多くが、「親と暮らさなければならない」、「親を助けなければならない」と思い込んでいます。毒親と縁を切るための第一歩は、親の呪縛から逃れることです。

なお、子どもが親に対して負っている扶養義務は、配偶者や子供に対する扶養義務と異なり、自分に余力がある場合にのみ援助すればよいこととなっています。そのため、あなたの経済状況が悪化していれば、そもそも親の生活費を援助する必要すらないということとなります。

さらに、親が生活費を支払う必要のないほど裕福な生活を送れているのであれば、たとえ子どもに多少の余力があったとしても、生活費を支払う必要はないといえます。

(3)物理的に逃げる

親に居場所、連絡先を知らせずに逃げることは、ひとつの方法です。携帯電話やメールアドレス、メッセージツールのID等を全て変更してしまえば、親が連絡をとることはできません。

引っ越した際に住民票を移せば、親はその履歴を追って住所を突き止めることは可能です。親からの追跡を回避したい場合は、「住民基本台帳事務における支援措置」という制度の利用を検討しましょう。当該制度を利用するために必要な書類は以下の通りです。

  • 支援措置申出書
    (支援措置申出書には、相談期間等の意見が記されている必要があります。)
  • 本人確認書類
  • 印鑑

4. 毒親についての相談機関とは

毒親について相談できる機関、専門家はこちらです。

(1)子ども専用相談窓口

毒親の被害を受けているのが18歳以下の場合は、子ども専用の相談窓口に相談をしましょう。

  • チャイルドライン:0120-99-7777
  • 子どものSOSの相談窓口:0120-0-78310
  • 子どもの人権110番:0120-007-110

(2)弁護士

親からの暴力、過干渉から逃れたい場合は、弁護士への相談も検討しましょう。弁護士は、警察に相談すべきかどうか、また物理的に逃れる方法があるか等、状況を整理した上で、適切にアドバイスすることが可能です。

親がしつこくお金を要求したり、しつこく介護を求めてきたりする場合には、家庭裁判所を通じて、今後直接会うことなく、生活費を送金して扶養をすると決めることにより、親との関係を一旦清算することができます。

その際、弁護士に依頼することにより、親が生活費を必要とするまで困窮していないこと、子どもに親のために生活費を捻出する余力がないことを適切に家庭裁判所に伝えることができ、親への生活費の送金すら不要となる場合もあります。

親から住居を追跡されないよう、住民票に関する手続きについてもサポートができますので、弁護士への相談も検討してください。

親だからといって必ずしも関わり続けなければならないわけではありません。あなたはあなたの人生を歩むことが、なによりも大切です。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2021年04月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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