名誉毀損の慰謝料の目安。未成年でも賠償責任は発生する?
未成年者であってもスマートフォンを所持して、簡単にインターネットにアクセスすることができるようになった結果、未成年者によるインターネット上での誹謗中傷や名誉毀損(きそん)が社会問題となってきています。
安易な気持ちで書き込みをしたところ、被害者から損害賠償請求をされるだけでなく、刑事事件となり処罰されるおそれもあります。
今回は、未成年者による名誉棄損と訴えられた場合の対処法について解説します。
1. 名誉毀損の成立条件と慰謝料の目安
以下では、未成年者が名誉棄損を行った場合の問題と責任の所在について説明します。
(1)未成年者によるネット上の書き込みが問題に
インターネットの掲示板やツイッターなどに、未成年者が誹謗中傷の書き込みをする事例が増えてきています。インターネットが匿名で利用できることから、未成年者が深く考えることなく安易な動機から書き込みを行っているようです。
インターネットサイトや会員制交流サイト(SNS)で実名を挙げて悪口を書き込み、相手の社会的な評価を下げたような場合には、名誉棄損罪(刑法230条1項)という犯罪が成立し得ます。そして、名誉棄損罪の法定刑は、「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」と規定されています。
また、このような刑事上の責任だけでなく、名誉棄損によって第三者の権利や利益を侵害した場合には、不法行為に該当し、民事上の損害賠償責任を負うことになります。
慰謝料の金額については、どのような加害行為をして、被害者がどのような損害を受けたかにより異なってきますので、一概には決めることはできません。数十万円程度の慰謝料となる事案もあれば100万円以上の慰謝料となる事案もありますので、ケース・バイ・ケースといえるでしょう。
(2)未成年者による名誉棄損は誰が責任を負う?
未成年者が名誉棄損をしたことによって民事上の責任が生じる場合には、誰が責任を負うことになるのでしょうか。
民法では、責任能力を持たない未成年者が第三者に損害を与えたとしても、その損害を賠償する責任を負わないとされています(民法712条)。その場合には、未成年者の監督義務を負う親権者が監督義務を尽くしていないときには、当該親権者が未成年者に代わって賠償責任を負うことになります。
未成年者が責任能力を具備する年齢については個人差がありますが、おおむね12歳で責任能力を持つようになるといわれています。
そうすると、13歳以上の未成年者が第三者に損害を与えた場合には、原則として未成年者が責任を負い、親権者は責任を負わなくてもよいことになります。
しかし、未成年者には、被害者に賠償をするだけの資力がないことが通常であり、親権者が通常果たすべき監督義務を果たしていない場合には、未成年者とともに親権者にも損害賠償責任が認められることがあります。
2. 名誉毀損で訴えられた場合の適切な対処法
名誉棄損の被害者から訴えられた場合には、民事上と刑事上の責任が生じますので、それぞれ別々の対処が必要になります。いずれの対処も専門的な知識が必要となりますので、弁護士に相談をしながら進めていくことをおすすめします。
(1)民事上の責任
民事上の責任としては、被害者から名誉棄損を理由として損害賠償を求められることがあります。
被害者から損害賠償請求をされた場合には、まずは、名誉棄損の書き込みをしたのが本当に加害者とされた未成年者であるかを確認します。そして、それが事実であった場合には、被害者からの請求内容を踏まえてどのように対処するかを検討することになります。
被害者からの請求額が過剰である場合には、同種事案をもとに適正な損害額を算定して、減額交渉を行います。また、加害者側にも正当な言い分がある場合には、それも交渉材料として減額を求めます。
そして、被害者との間で合意に達した場合には、合意内容を示談書にまとめておくようにしましょう。
(2)刑事上の責任
刑法41条では、「十四歳に満たない者の行為は、罰しない」と規定しています。そのため、14歳未満の未成年者に対しては、刑罰は科されません。
他方、未成年者が14歳以上であった場合には、刑事責任能力があります。もっとも、未成年者は精神的に未熟であり、周囲の影響を受けやすいため、大人と同様の刑事裁判で責任を追及することは適当ではありません。そこで、未成年者は、少年審判などの大人とは異なる特別の手続きによって、処分を決めていくことになります
- こちらに掲載されている情報は、2021年06月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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