いじめに時効があるって本当? 損害賠償請求の可能性も
学校で他の生徒をいじめた場合、被害者側から損害賠償を請求される可能性があります。
損害賠償請求権の時効期間は3年または5年で、過去のいじめについても、時間がたってから損害賠償を請求されることがあるかもしれません。子どもがいじめの加害者側となってしまった場合は、事態が深刻化する前に、弁護士へご相談ください。
今回は、いじめに関する法律上の取り扱いや、損害賠償請求権の消滅時効などについて解説します。
1. 「いじめ」に関する法律上の取り扱い
学校における「いじめ」は、学校または教育委員会による処分の対象となります。さらに、不法行為に基づく損害賠償や、刑法上の各種犯罪の対象にもなり得るので注意が必要です。
(1)学校または教育委員会による処分
学校においていじめをした生徒は、校長・教員による懲戒の対象となります(いじめ防止対策推進法第25条、学校教育法第11条)。また、市町村の教育委員会により、出勤停止などの処分を受ける可能性もあります(いじめ対策推進法第26条、学校教育法第35条)。
さらに、いじめの態様が悪質な場合には、学則に基づく退学処分を受けることもあり得ます。被害者の心身を深く傷つけるいじめは、それだけ重大な行為であると認識すべきでしょう。
(2)民法
不法行為に基づく損害賠償の対象
いじめは民法上の不法行為に当たり、加害者は被害者に対して損害賠償責任を負います(民法第709条)。
損害賠償の対象となるのは、被害者に生じた損害のうち、いじめと相当因果関係があるものです。具体的には、精神的ダメージに対応する慰謝料のほか、通院治療費などが含まれます。
なお、加害生徒が幼少であるなど、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかった場合には、親が被害者に対する損害賠償責任を負います(民法第712条、第714条第1項)。
(3)刑法
各種の犯罪に該当する可能性あり
いじめの加害者は、刑法上の犯罪の責任を問われることもあり得ます。いじめが該当し得る犯罪の例は、以下のとおりです。
①傷害罪・暴行罪
被害者に対して暴力をふるい、ケガをさせた場合には「傷害罪」が成立します(刑法第204条)。被害者がケガをしなかった場合でも、「暴行罪」が成立します(刑法第208条)。
②名誉毀損(きそん)罪・侮辱罪
何らかの事実を摘示して、被害者の社会的評価を下げるような言動を公然と行った場合には「名誉毀損罪」が成立します(刑法第230条第1項)。事実を摘示しなかった場合でも、被害者の社会的評価を下げるような言動を公然と行えば「侮辱罪」が成立します(刑法第231条)。
③器物損壊罪
被害者の所有物を破損したり、隠したりした場合には「器物損壊罪」が成立します(刑法第261条)。
④窃盗罪
被害者の所有物を盗んだ場合には「窃盗罪」が成立します(刑法第235条)。
なお、加害生徒が14歳未満であれば、犯罪の責任を問われることはありません。ただし、家庭裁判所による保護処分(少年院送致、児童自立支援施設送致など)の対象となる可能性があります。
2. いじめに関する損害賠償、時効は何年?
いじめに関する損害賠償請求権は、一定の期間が経過すると時効消滅します。
被害者が死亡し、またはケガをした場合における損害賠償請求権は、以下のいずれかの期間の経過によって時効消滅します。
- 被害者(またはその法定代理人)が損害および加害者を知ったときから5年
- いじめのときから20年
それ以外の場合(死亡・ケガが生じていない場合)における損害賠償請求権は、以下のいずれかの期間の経過によって時効消滅します。
- 被害者(またはその法定代理人)が損害および加害者を知ったときから3年
- いじめのときから20年
いずれの場合でも、いじめの損害賠償請求権は、すぐに時効消滅するものではない点にご注意ください。
3. 過去のいじめでも損害賠償を請求されることがある
弁護士に相談を
数年前に行ったいじめについても、時効完成前であれば、被害者から損害賠償を請求される可能性があります。
特に、いじめによって被害者が負ったダメージが大きい場合には、損害賠償が多額に及ぶ可能性があるので要注意です。いじめの責任を追及されずに時間がたった場合でも、被害者が損害賠償請求の準備を進めているかもしれません。
過去のいじめについて、多額の損害賠償を命じられるなどの深刻な事態を防ぐためには、早期に弁護士へ相談することをおすすめいたします。弁護士に相談すれば、被害者との示談交渉をはじめとして、いじめ問題を穏便に解決するためにサポートしてもらえるでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年02月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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