不貞行為の証拠を出すタイミングはいつがいい? 注意点や流れを解説

不貞行為の証拠を出すタイミングはいつがいい? 注意点や流れを解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

配偶者が不貞行為をしている証拠をつかんだら、すぐにでも証拠を突き付けて問い詰めたいと考える方も多いでしょう。しかし、焦って行動してしまうと、離婚や慰謝料請求の際に不利になってしまう可能性があります。不貞行為の証拠は、適切なタイミングで出すことが重要です。

本コラムでは、配偶者の不貞行為の証拠を出すタイミングや注意点について解説します。

1. 不貞行為の証拠の重要性

配偶者の不貞行為が疑われる場合には、まずは不貞行為の証拠を集めることが重要です。

(1)相手に不倫を認めさせることができる

証拠がない状態で不倫をしている相手を問い詰めたとしても、相手としても不倫を認めれば不利になることがわかっているため、噓や言い訳をして認めないことがほとんどです。

さらに、証拠がない状態で相手を問い詰めてしまうと、本来得られたはずの不倫の証拠が消されてしまったり、相手が慎重に行動するようになったりしてしまうため、不倫の証拠が集めづらくなってしまう可能性もあるのです。

相手に不倫を認めさせるためにも、まずは証拠を集めてから問い詰めるようにしましょう。

(2)適切な慰謝料を請求できる可能性が高くなる

不貞行為をした配偶者は、法律上の「有責配偶者」にあたる可能性があり、不倫慰謝料を請求することができます。また、配偶者と不倫をした不倫相手に対しても、同様に不倫慰謝料を請求することができます。

慰謝料の金額は、不貞行為の回数、期間などによって変動しますので、それらを立証できる証拠があるかどうかが重要になります。不貞行為の証拠があればあるほど、適切な金額の慰謝料を請求できる可能性を高くすることができます。

(3)自分からの離婚請求が認められやすい

配偶者の不貞行為は、民法が定める法定離婚事由のひとつとされています。「法定離婚事由」とは、裁判になった場合に裁判所が離婚を認めるかどうかを決める要件のことであり、原則として、法定離婚事由がなければ裁判で離婚を認めてもらうことはできません。

反対に、不貞行為をして有責配偶者となった場合、原則として有責配偶者からの離婚請求は認められません。このように配偶者が不貞行為をした証拠があれば、配偶者からの離婚請求を制限しつつ、自分からの離婚請求を認めやすくできます。

2. 不貞行為の証拠を出すタイミングは?

以下では、不貞行為の証拠をつかんだ場合に、その証拠を出すべきタイミングについて解説します。

(1)不貞行為の証拠が十分集まったタイミング

配偶者が不貞行為をしている証拠を入手すると、相手のことを許せない気持ちから、すぐに問い詰めてしまう人も多いです。しかし、配偶者が不貞行為をしている証拠を入手したとしても、すぐに証拠を出すのではなく適切なタイミングを待つことが大切です。

また、不貞行為とは、配偶者以外の異性との間で肉体関係を持つことをいいます。配偶者が異性と親密な連絡を取っている証拠を見つけると「不貞だ」と考える方もいますが、それだけでは不貞行為の立証に十分な証拠とはいえません。

後述するように不貞行為の証拠にはさまざまなものがありますので、十分な証拠が集まるまでは、配偶者を問い詰めるのは避けるべきです。

(2)不貞行為を問い詰めて相手が噓をついたタイミング

不貞行為を立証する十分な証拠が集まったら、配偶者に「不倫をしているよね」と問い詰めていきましょう。その際には、すぐに証拠を突き付けるのではなく、まずは配偶者の弁解を聞くようにしてください。

ほとんどの場合、相手は噓の発言や言い訳をして、不貞行為を否定してきます。相手が不貞行為を否定した時点が、証拠を出すタイミングです。自分の発言と矛盾する証拠を突き付けられれば、本人も諦めて素直に不倫を認めざるを得なくなるでしょう。

3. 不貞行為の証拠を出すときの注意点

以下では、不貞行為の証拠を出すときに注意すべき点を解説します。

(1)不貞行為の証拠は複数そろえておく

不貞行為を直接的に証明することができるもっとも強力な証拠は、配偶者と不倫相手が性行為をしている状況を撮影した写真や動画です。しかし、このような証拠が残っている可能性は少ないでしょう。

そのため、基本的には、以下のような状況証拠を集めて不貞行為を立証することになります。

  • ホテルや不倫相手の自宅に入る状況を撮影した写真、動画
  • 肉体関係を匂わせる内容のメールやLINEの履歴
  • 不貞行為を認める音声データ
  • ラブホテルに宿泊した領収書やクレジットカードの利用明細

このように不貞行為を立証できる証拠にはさまざまなものがありますので、確実に不貞行為を証明するためにも、不貞行為の証拠は複数そろえておくとよいでしょう。

(2)決定的な証拠は裁判まで提示しない

不貞行為を立証できる証拠が複数ある場合には、決定的な証拠は裁判まで提示しないことをおすすめします。最初から決定的な証拠を提示してしまうと、相手に言い訳をする時間を与えてしまい、対策を練ってくる可能性があるためです。

決定的な証拠を裁判になったときにはじめて提示することにより、相手側の言い逃れを難しくして、有利に裁判を進めることができます。

(3)離婚や別居を考えていない場合は慎重に進める

配偶者が不貞行為をしていたとしても、反省の態度を示している場合には、離婚や別居ではなく関係の修復を図りたい方もおられるでしょう。

離婚や別居を考えていないのであれば、最初からすべての証拠を提示してしまうと、夫婦関係に大きな亀裂を生じさせてしまい、夫婦関係の修復が難しくなる可能性もあります。相手が素直に不倫を認めて反省しているのであれば、あえて証拠は提示しないという選択も検討しましょう。

(4)不貞行為による慰謝料請求には時効が決められている

不貞行為による慰謝料請求を考えている場合には、時効にも注意が必要です。

慰謝料請求の時効は、不貞行為の事実を知った日から3年とされているため、早めに対応することが大切です。ただし、不貞行為の疑いがあるだけで不貞行為の相手を特定できない場合には、不貞行為の相手との関係では時効期間のカウントはスタートしません。

なお、離婚慰謝料として請求する場合には、不貞行為の事実を知った日から3年を経過したとしても、離婚してから3年以内であれば慰謝料請求は可能です。

4. 慰謝料請求や離婚をしたい場合、どのように進めればいい?

慰謝料請求や離婚をしたい場合には、以下のような流れで進めていきます。

(1)当事者による話し合い

慰謝料請求や離婚をする場合には、まずは当事者による話し合いを行います。離婚であれば、離婚をするかどうか、離婚する場合の条件などをどうするかについて話し合いを行います。また、慰謝料請求の場合には、金額や支払い方法などについて話し合いを行います。

当事者同士の話し合いで合意に至った場合には、離婚届に必要事項を記入して、市区町村役場に提出することで離婚が成立します。

慰謝料などの離婚条件の取り決めをした場合には、口約束だけで終えるのではなく、必ず離婚協議書を作成するようにしましょう。また、確実に慰謝料の支払いを受けられるようにするため、離婚協議書を公正証書にしておくことも大切です。

話し合いでどのような証拠を提示するかは、目的や状況に応じて判断する必要がありますので、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

(2)離婚調停

当事者同士の話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行うことになります。

調停では裁判所の調停委員を介して話し合いが進められますので、当事者だけの話し合いに比べて冷静に話し合うことができます。弁護士に依頼をすれば、調停期日に同行して、調停委員に対して法的な説明をしてくれますので、はじめての調停でも安心して対応することができます。

ただし、離婚調停も離婚協議と同じく基本的には話し合いの手続きになるため、相手が不貞行為を認めない場合には、調停での解決は困難でしょう。

(3)離婚裁判

調停が不成立となった場合には、最終的に離婚裁判を起こして解決を図ることになります。離婚裁判では、法定離婚事由である不貞行為があったことを証拠によって立証していく必要があります。

相手が噓や言い訳をしていたとしても、裁判で決定的な証拠を突き付けることにより、有利に裁判を進めることができます。

相手が不貞行為を認めない場合には、裁判まで視野に入れて手続きを進めていく必要があります。そのためには、不貞行為を立証する証拠が重要です。裁判になった場合も見据えた長期的な戦略に基づく対応を行うため、配偶者の不貞行為が発覚したら、早い段階から弁護士に相談しましょう。

5. まとめ

配偶者の不貞行為を理由に離婚したり慰謝料を請求したりするためには、不貞行為を裏付ける証拠が重要です。ただし、証拠を出すタイミングは、夫婦関係をこれからどのようにしていきたいかということや、裁判になる可能性などによって異なってきます。

戦略的な判断も必要になってくるため、配偶者の不貞行為が発覚して離婚や慰謝料請求を検討されている方は、専門家である弁護士に相談しながら対応を考えましょう。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

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