「婚約破棄」と「内縁破棄」、慰謝料請求における違い
婚約破棄(婚約解消)と内縁破棄(内縁解消)は、正当な理由がなければ、いずれも損害賠償(慰謝料)の対象となります。
今回は婚約と内縁の違い、婚約破棄と内縁破棄の慰謝料の金額相場や要件、慰謝料獲得の可能性を高めるためのポイントなどを解説します。
1. 婚約破棄と内縁破棄の違い
まずは婚約と内縁の違いと、婚約破棄・内縁破棄の慰謝料相場について解説します。
(1)婚約とは
「婚約」とは、将来の結婚(婚姻)を約束することを意味し、法的には「契約」に該当します。
正当な理由のない婚約破棄は契約違反であるため、慰謝料請求の対象になります。
(2)内縁とは
「内縁」とは、婚姻届は提出していないものの、実態としては夫婦同然である状態を意味します。「事実婚」と呼ばれることもあります。
内縁関係にある者は、相続や税制優遇(配偶者控除など)などを除き、多くの場面で法律上の夫婦と同じように取り扱われます。
正当な理由のない内縁破棄は、婚姻関係と同様、内縁関係にも適用される同居・協力扶助義務(民法752条)に違反するため、慰謝料請求の対象です。
(3)婚約破棄と内縁破棄の慰謝料相場
婚約破棄の慰謝料は、30万円から300万円程度が標準的です。これに対して、内縁破棄の慰謝料は、100万円から300万円程度の範囲に収まることが多いです。
婚約はまだ夫婦になる前の段階であるのに対して、内縁は夫婦同然の状態です。そのため、婚約破棄よりも内縁破棄の方が、慰謝料が高額になる傾向にあります。
なお具体的な慰謝料の金額は、婚約・内縁を破棄された側の精神的苦痛の大きさによって変わります。
2. 婚約破棄と内縁破棄の慰謝料請求の要件
婚約破棄・内縁破棄を理由に慰謝料を請求するには、それぞれ以下の要件を満たす必要があります。
(1)婚約・内縁の成立
第一に婚約・内縁が成立した事実を証明しなければなりません。
婚約は契約であるため、口約束だけでも成立します。ただし、後から婚約の存在を証明するためには、後述するように、一定の証拠が求められるケースが多いです。
内縁が成立するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 互いに(夫婦として共同生活を営むという意味で)婚姻の意思を有していること
- 法律婚の夫婦と同等の共同生活を営んでいること
内縁の成立を証明するには、長期間にわたって同棲している事実や、周囲に夫婦として扱われている事実などを主張・立証することになります。
(2)正当な理由のない婚約・内縁の破棄
婚約・内縁を破棄した場合、正当な理由がなければ不法行為(民法709条)又は婚姻予約不履行としての債務不履行(民法415条)に該当し、相手方に対して慰謝料の支払い義務を負います。
婚約破棄・内縁破棄の正当な理由として認められ得るのは、以下のような事情です。
- 相手方からDVやモラハラを受けた
- 相手方が不貞行為をした
- 相手方が生活費を全く支払おうとしない
など
基本的には、法定離婚事由(民法770条1項)に相当するような深刻な事情だけが、婚約破棄・内縁破棄の正当な理由として認められます。単なる性格の不一致などは、正当な理由として認められないのでご注意ください。
3. 慰謝料獲得の可能性を高めるためのポイント
婚約破棄・内縁破棄の慰謝料を獲得できる可能性を高めるには、以下のポイントを押さえた対応が求められます。
(1)慰謝料請求の要件を立証できる証拠を集める
慰謝料請求が訴訟に持ち込まれた場合を想定すると、慰謝料を獲得するためには、各要件を立証できる証拠を集めることが重要です。
婚約の成立を立証するには、以下のような事実に関する証拠を集めることが効果的でしょう。
- 婚約指輪の購入
- 結納
- 文書による結婚の合意
- 親族への報告
- 同棲
など
内縁の成立を立証するには、共同生活の実態があったことを示すため、以下に挙げる証拠が効果を発揮します。
- 住民票における内縁の記載(「夫(未届)」「妻(未届)」)
- 生活費の分担を示すもの
- 親族や知人による証言
など
一方、婚約破棄・内縁破棄の正当性を主張する側は、以下の事実に関する証拠を提出して対抗します。
- DV
- モラハラ
- 不貞行為
- 生活費の負担拒否
など
裁判所にご自身の主張を認めてもらえるように、できる限り充実した証拠を準備しましょう。
(2)弁護士に依頼する
婚約破棄・内縁破棄について適正な慰謝料を獲得するには、弁護士を代理人として対応するのがおすすめです。
弁護士は依頼者に代わって、事実関係や裁判例などを踏まえ、法的な根拠に基づく慰謝料請求を行ってくれます。相手方との交渉や訴訟による請求手続きも、弁護士に一任できるので安心です。
婚約破棄・内縁破棄の慰謝料請求をご検討中の方は、弁護士へご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2022年11月30日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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