信用毀損罪とは|罰則や具体例、罪に問われた場合の対処法を解説
インターネットやSNSの発展によって、個人の情報発信が大きな影響力を持つようになりました。その負の側面が、気軽に発信した誤情報やデマによって他者や企業の社会的信用を大きく損ない、訴えられてしまうリスクの増大です。
本コラムでは、そのような場合に適用される「信用毀損(きそん)罪」について詳しく解説します。
1. 信用毀損罪とは
信用毀損罪とは、個人・法人問わず、虚偽の事実の流布や偽計を用いて他者の信用を傷つける行為に対する罪のことです。ここで言う「信用」とは主に経済面を指しており、支払い能力や商品の品質などに対する信頼性が該当します。
たとえば、「あいつは借金まみれだ」「あそこの料理は賞味期限切れの食材を使っている」など、不特定多数の人にデマを流した場合、この罪に問われる可能性があります。
(1)構成要件と罰則
信用毀損罪の構成要件は、以下の2つです。
- 虚偽の事実を流布し、または偽計を用いること
- 他者の経済的能力や商品・サービスに対する信用を損なわせること
虚偽の事実の流布とは、うその情報を不特定または多数の人に発信することを指します。最近ではSNSへの投稿などが流布に該当しやすい行為です。偽計とは、簡単に言うと、人をだましたり、不知を悪用したりすることを指します。
なお、信用毀損罪は、被害者本人が刑事告訴(捜査機関に対して犯罪事実の申告と犯人の処罰を求めること)をしなくても罪に問われる可能性がある「非親告罪」です。
罰則は、刑法第233条により、3年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金と規定されています。
(2)信用毀損罪の具体例
どのようなことをしたら信用毀損罪に問われるのかイメージしやすいように、信用毀損罪に問われる可能性のある例文や事例を以下に提示します。なお、信用毀損罪が成立するには、ここで示す情報があくまでうそ(誤情報)であることが必要です。
- 「あの企業の商品はすべて不良品だから買ってはいけない」
- 「あのレストラン、衛生管理がまったくできていないから、食べると必ず食中毒になるよ」
- 「Yさんは多額の借金をしていてカード会社のブラックリスト入りしているらしい」
- 「Z氏の経営する会社、実は資金繰りにかなり苦労しているみたいだよ」
- 自分が壊した商品の画像を「購入したときからこうだった」と偽ってSNSに投稿する
このように、企業の商品に関する虚偽の欠陥情報や、個人や法人の支払い能力に疑念を感じさせるような虚偽の情報を広めると、信用毀損罪に問われる可能性があります。口頭での情報発信だけでなく、インターネットやSNSへの投稿でも適用されるので注意が必要です。
昨今ではSNSの普及により、誰でも簡単に情報発信できるようになりました。軽い気持ちでSNSに投稿した誤情報が予想外の影響力を持って他者の信用を傷つけ、訴えられてしまうことは十分にありえます。そのため、上記のような投稿をすることは厳に慎むべきです。
2. 信用毀損罪と関連する犯罪
名誉毀損罪を筆頭に、刑法には信用毀損罪と類似している罪がいくつかあります。以下ではそれらの犯罪について、簡単に紹介します。
(1)名誉毀損罪
名誉毀損罪は、他人の名誉を毀損する行為に対する罪です。経済的な信用が焦点となる信用毀損罪とは異なり、名誉毀損罪の場合は「あいつは浮気している」など、他者の社会的名誉を傷つける行為も含まれます。
その構成要件は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損」することであり、信用毀損罪とは異なり、情報の内容が虚偽であるか否かは問われません。
名誉毀損罪の罰則は、刑法第230条により、3年以下の懲役(または禁錮)、もしくは50万円以下の罰金です。
(2)業務妨害罪
業務妨害罪は、他人の業務を妨害する行為に対する罪です。以下で示すように、「偽計業務妨害罪」と「威力業務妨害罪」の2種類があります。偽計業務妨害罪は信用毀損罪と同じ刑法第233条の後段で、威力業務妨害罪は第234条で定められている罪です。
業務妨害罪の罰則は2種類とも、3年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金です。
①偽計業務妨害罪
偽計業務妨害罪は、虚偽の事実の流布や偽計によって、他人の業務を妨害する行為が該当します。信用毀損罪が人の信用を毀損する罪なのに対し、偽計業務妨害罪は他人の業務を妨害するという点が異なります。
たとえば、「会場に爆弾を仕掛けた」と虚偽の情報を伝えてイベント開催を中止に追い込むなどが典型例です。また、虚偽の情報で信用が毀損されることで、業務が円滑に進まなくなることは大いにあり得るので、信用毀損罪と偽計業務妨害罪は両立しやすいです。
②威力業務妨害罪
威力業務妨害罪とは、暴力や脅迫、物品の破壊や隠蔽(いんぺい)などの行為によって他人の業務を妨害することに対する罪を指します。偽計業務妨害罪が虚偽の事実の流布や偽計を用いるのに対し、威力業務妨害罪は威力を用いて他人の業務を妨害するという違いがあります。
たとえば、店員を長時間怒鳴りつけたり、お店の設備を壊したり隠したりして、通常の業務遂行を妨害する行為などが典型例です。
3. 信用毀損罪に問われたら
信用毀損罪を犯すと、被害者などから刑事告訴され、警察が介入する事件となる可能性があります。つまり逮捕されて刑事裁判になる可能性もあるということです。裁判で罪が認められれば3年以下の懲役、あるいは50万円以下の罰金刑を受けることとなります。
また、被害者に対して経済的な損害を発生させた場合、損害賠償請求を受ける可能性が高いです。被害者が受けた損害が多大であった場合、損害賠償請求の金額も相応に大きくなります。
信用毀損罪に問われた場合、第一に目指すべきは示談を成立させることです。被害者の納得がいく形で謝罪や賠償をすることで、被害届や告訴を取り下げてもらえるかもしれません。これにより、刑事事件化の回避や不起訴処分の可能性が高まります。不起訴処分になれば、刑事罰を受けたり、前科がついたりすることはありません。
示談交渉や裁判にあたっては、弁護士にサポートを依頼するのがおすすめです。法律の専門家である弁護士は、本人に代わって示談交渉の窓口となり、刑事告訴の回避や賠償金額の軽減、あるいは刑事罰の軽減などに取り組みます。早期に弁護士に相談することで、いち早く最適なアプローチを取れるようになるため、事態の悪化を避けやすくなります。
信用毀損罪はインターネットやSNSへの投稿についても適用されます。もしも信用毀損罪について不安を感じた場合は、ぜひ弁護士に相談しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年11月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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