侮辱罪と名誉毀損罪の違いとは? 成立要件や刑罰について解説

侮辱罪と名誉毀損罪の違いとは? 成立要件や刑罰について解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

人と接する中で、思わず相手を侮辱したり名誉を傷つけたりする言動を取ってしまったことはないでしょうか。法的には、そうした行為は侮辱罪もしくは名誉毀損(きそん)罪に当たる恐れがあります。

本記事では、侮辱罪と名誉毀損罪それぞれの意味や成立要件、該当するケース、そして被害者から訴えられてしまったときの対応について解説します。

1. 侮辱罪と名誉毀損罪はどう違う?

「相手を侮辱すること」と「相手の名誉を傷つけること」は、一見すると同じような行為として捉えられます。そのため、侮辱罪と名誉毀損罪が別々の罪として法的に規定されていることに戸惑いを覚える人は多いのではないでしょうか。

そこで、まず、侮辱罪と名誉毀損罪それぞれの意味と違いを紹介します。

(1)侮辱罪とは

侮辱罪とは、誹謗(ひぼう)中傷などによって他者の社会的評価や名誉をおとしめる行為への刑罰です。日本の刑法第231条には、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」と記されています。

ここでの「事実の適示」とは、具体的な事柄のことで、真実かうそかという意味ではありません。たとえば、「お前は仕事をいつもサボる能無しだ!」と上司が部下を罵倒したとします。この場合、「仕事をいつもサボる」という部分が事実の適示になります。

つまり「事実を適示しなくても」という文言は、この「仕事をいつもサボる」という事柄を省略し、単に「お前は能無しだ!」と罵倒しただけでも侮辱罪になり得ることを意味しています。「ばか」「ぐず」といった抽象的な悪口でも侮辱罪に当たり得るということです。

加えて重要なのは、「公然と」という条件です。侮辱罪は、個人の社会的名誉を保護するための法律であるため、他者が存在しない当人同士の会話の中で侮辱してしまっただけなら、基本的に侮辱罪に抵触しません。しかし、どのような形にせよ、周囲の人、あるいは不特定多数の人に知れ渡るような仕方で侮辱すれば「公然と侮辱した」と判断され、罪に問われるリスクがあります。

(2)名誉毀損罪とは

他方で、名誉毀損罪については、刑法第230条で、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」と定義されています。

つまり、名誉毀損罪は、(1)事実を適示した上で、(2)被害者の名誉を傷つける言動を、(3)公然とした場合に問われる罪です。先述の通り、事実の摘示は、具体的な事実を述べることを指し、その内容が真実であるかどうかは成立要件には含まれません。

先の例で言えば、部下が実際に仕事をサボっていようといまいと、その事柄を提示し、他の社員などがいる場所で「お前は仕事をいつもサボる能無しだ!」と罵倒することは名誉毀損罪になり得ます。

(3)侮辱罪と名誉毀損罪の違い

侮辱罪と名誉毀損罪の第一の違いは「事実の適示の有無」です。うそであろうと本当であろうと、相手の社会的名誉を傷つけるようなことを公然と示したなら名誉毀損罪に該当します。対して、侮辱罪の適用は「事実の適示」を必要としません。

また、罰則についても異なります。侮辱罪は1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料が科されるのに対して、名誉毀損罪の場合は3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金です。つまり、侮辱罪より名誉毀損罪の方が、刑罰が重いということです。

2. 侮辱罪と名誉毀損罪に該当するケース

続いて、侮辱罪と名誉毀損罪がそれぞれ該当するケースを紹介します。なお、侮辱罪・名誉毀損罪共に、「被害者自身が告訴しなければ罪にならないこと」「SNSなどインターネット上の言動に対しても適用される可能性があること」に注意が必要です。

(1)侮辱罪の該当例

例えば、他の社員もいるオフィスで部下を「役立たず!」とののしった場合、侮辱罪に当たるおそれがあります。SNSに「○○はばかだ」「仕事ができない」「変態だ」と個人を特定できるような仕方で投稿した場合も同様です。

さらに、たとえ自分では内輪の陰口のつもりでも、そこで言った悪口が人づてに広がってしまう可能性があるならば、それに気づいた被害者から侮辱罪で告訴されるリスクは否定できません。

(2)名誉毀損罪の該当例

例えば、「○○は不倫している」「整形している」「横領している」といった具体的な事柄を公然と言いふらした場合、名誉毀損罪となる可能性があります。その事実が本当のことであろうと根も葉もないうわさであろうと、名誉毀損罪は成立することに注意が必要です。

ただし、名誉毀損罪の特例として、その事実が本当のことで、その情報を発信する理由が専ら公益目的で、事実内容が公共の利害に関するものであれば、罪には問われません。逆に、虚偽の事実によって他者の社会的評価を下げようとすれば、本当の事実を指摘した場合に比べて、より悪質だと判断されて罪が重くなる可能性もあるためご注意ください。

3. 他人を侮辱、名誉毀損してしまったら

万が一、侮辱罪や名誉毀損罪の加害者として訴えられてしまった場合、どのように対処すればよいでしょうか。真っ先に考えるべきは、弁護士へ相談することです。法律の専門家である弁護士なら、被害者の訴えの妥当性を正確に見極め、状況に即した方法を提案してくれます。当人同士で感情的に争って問題が泥沼化することも避けやすいです。

その上で、最初は被害者との示談を検討します。示談は、加害者と被害者が話し合い、互いの合意により事件を解決する方法です。高額の示談金を支払わなければいけない可能性もありますが、示談が成立して起訴前に被害者が告訴を取り下げれば、前科がつくことは避けられます。

逮捕されると、起訴するか否かの判断までに最大23日間も身柄を拘束されてしまいます。そのような状態から早期解放されるためにも、やはり弁護士の支援が不可欠です。

総じて、他者を侮辱したり、名誉を毀損したりすることは、相手だけでなく自分の社会的立場を危うくします。万が一、被害者から訴えられてしまった際は、早めに弁護士に相談し、適切な対策を講じることをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年08月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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