請求された損害賠償が払えない…家族に影響はある?
他人の財産や心身に損害を与えてしまうと、それが意図的であるか否かにかかわらず損害賠償責任が生じます。場合によっては到底支払いができないような高額請求をされることもあるでしょう。
本コラムでは、請求された損害賠償金が支払えない場合はどうなるのか、家族にも何らかの影響があるのかという点について解説します。
1. 損害賠償金が支払えないとどうなる?
何らかのトラブルが原因で他人の財産や心身に損害を与えてしまった場合、被害者から「内容証明郵便」などを通じて損害賠償請求の連絡が来ることがあります。一般的に内容証明郵便には「何についての請求なのか」「いくら請求するのか」などが明記されています。
しかし、加害者に一定の支払能力がなければ、請求に応じることはできません。では、加害者が損害賠償請求に応じられない場合、どのようなことが起こるのでしょうか。
(1)損害賠償請求を無視すると裁判になる可能性がある
支払いができないからといって損害賠償請求を無視し続けると、被害者が裁判を起こすこともあります。
裁判所から「訴状」が届くと、定められた期限までに「答弁書」(加害者の言い分をまとめたもの)を提出のうえ、指定の日時に裁判所へ出頭しなければなりません。さらに訴状を放置すると、加害者に言い分があったとしても被害者の主張がすべて認められた判決が出され、その判決をもとに給与などの財産が差し押さえられるおそれもあります。
(2)支払わないと遅延損害金が発生する
一般的に訴訟では、元本のみならず遅延損害金についても請求されます。遅延損害金は、1日単位で支払いが終わるまで発生し続けるので、注意が必要です。支払えないからといって放置すれば、時間の経過とともに支払金額はさらに増えてしまいます。
(3)トラブルを周囲に知られてしまうおそれがある
損害賠償請求を受けていることや、その原因となったトラブルを隠しておきたい方も多いはずです。しかし、支払義務を放置すると、督促のための郵便物や電話連絡などによって周囲に事情を知られてしまうことも考えられます。
また、事実の発覚によって家族間や職場で不和や評判の低下といった新たな問題が発生するおそれもあります。
(4)自己破産では対応できない場合がほとんど
自己破産とは、債務の返済をする能力がない場合に、裁判所に支払義務を免責してもらう手続きのことです。借金問題を解決する最終手段として、利用を検討している方もいるかもしれません。
しかし、例えば悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権などは、免責の対象ではなく、自己破産を行ったとしても、支払義務が免責されません。
自己破産による免責を得ることができるのか気になる方は、弁護士にご相談ください。
2. 損害賠償金を支払えない場合、家族が支払う義務はある?
自分が損害賠償金を支払えなければ、家族に迷惑をかけてしまうのでは、と心配になるかもしれません。加害者本人に損害賠償金の支払能力がない場合、他の誰かに支払義務が発生するのでしょうか。
(1)原則家族に支払義務はない
結論から述べると、損害賠償金の支払義務が家族に移ることは原則ありません。これはあくまで加害者本人のみに発生する義務だからです。なかには加害者の家族が自らの意思で賠償金を立て替える場合もありますが、強制的に支払わされるわけではありません。
(2)例外的に支払責任が発生することもある
例外として、以下に述べるようなケースでは家族に支払義務が生じることもあります。
①家族が保証人になっている場合
家族が加害者の保証人になっているときは、家族にも支払義務が生じます。
たとえば雇用契約などで家族が保証人になっていたり、損害賠償金の請求に対して家族を保証人として分割支払いに合意していたりする場合、家族にも損害賠償金の支払いが請求されることがあります。なお、保証契約を結ぶには、保証人本人による書面への署名が必要です。加害者が勝手に家族の名前で契約をしていても、支払いの義務は発生しません。
②加害者が子どもの場合
加害者がおおむね12歳程度以下で責任能力がない場合、その親権者が監督義務者として損害賠償金の支払義務を負います。ただし、監督義務を果たしている場合などは、免責されます。
③交通事故で家族が「運行供用者責任」に問われた場合
自動車事故による損害賠償請求の場合、家族が「運行供用者」と認められると、損害賠償金を支払わなければなりません。運行供用者とは、「加害者が運転していた自動車の運行を管理できた人」のことです。たとえば、家族に借りた自動車で事故を起こしたときは、家族にも支払義務が生じることがあります。
3. 損害賠償金が支払えない場合の対処法
損害賠償金を請求されると、気が動転して何をしたらよいかわからなくなることも多いものです。しかし、問題を放置したり間違った対処をしたりすると、さらなるトラブルの発生や請求金額の増額を招くおそれもあります。そこで、賠償金が支払えないときの対処法を紹介します。
(1)弁護士に相談する
損害賠償金を請求されたら、まずは弁護士に相談してみましょう。相手が請求してきた金額が、状況に対してあまりにも高額な場合や、相手にも非がある場合には、交渉次第で減額できることもあります。また、裁判に発展した場合は引き続きフォローが受けられます。
(2)分割支払い交渉をする
損害賠償金額が高額で一度に支払いきれない場合は、金銭的な負担を分散するために、被害者に分割支払いの相談をしてみるのも手です。本来、損害賠償金は一括支払いが基本です。被害者の厚意で交渉に応じてくれる可能性はありますが、必ずしも合意に至るわけではないので注意しましょう。
損害賠償金が支払えなくても、基本的に家族に支払義務が発生することはありません。ただし加害者は問題を放置せず、適切に対処する必要があります。さらなるトラブルを避けるためにも、まずは弁護士への相談をおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年10月04日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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