賃貸でも立ち退き要求は可能? 賃借人が拒否できないケースとは
  • 2021年04月22日 (更新:2021年07月15日)
  • 不動産・建築・住まい

賃貸でも立ち退き要求は可能? 賃借人が拒否できないケースとは

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

相続税対策、不動産投資目的、老後の定期収入確保などのために不動産経営に乗り出す方が増えてきています。

アパートなどの賃貸物件を所有している大家の方の中には、建物を取り壊したいなどの理由で賃借人に立ち退いてもらいたいと考えている方もいるでしょう。しかし、借地借家法では、借地人や賃借人が手厚く保護されている結果、賃借人に立ち退いてもらうことは容易ではありません。

今回は、賃貸物件を所有している方に向けて、賃借人への立ち退き要求が認められるケースや立ち退きにあたっての注意点について解説します。

1. 立ち退き要求が認められるケース

入居者である賃借人が立ち退きに合意してくれればよいのですが、賃借人が立ち退きを拒否しているときには、法律の要件を満たさない限り立ち退きは認められません。

賃貸借契約を終了させ建物を明け渡してもらうためには、以下に挙げるような「正当の事由」が必要になります(借地借家法28条)。

(1)賃貸人が自己使用する必要性があるケース

高齢の賃貸人がひとりで生活することができず、子どもらと賃貸物件に居住し老後の面倒を見てもらうといったケースのように、賃貸人側に当該物件を使用しなければならない必要性が高いときには、賃借人による当該物件の使用の必要性を考慮、正当事由が認められることがあります。

(2)建物が老朽化しているケース

建物が老朽化しており倒壊の危険や耐震上の問題があるようなケースでは、入居者である賃借人にも危険がおよぶおそれがありますので、正当事由が認められることがあります。

(3)建物を売却しなければならないケース

賃貸物件を管理するためには、ローンの返済や修繕費用などさまざまな費用がかかります。アパートが満室の状態で利益が出ていればよいのですが、赤字の状態が続き、賃貸人の経済状況が悪化したようなときには当該物件を売却しなければならないこともあります。
賃貸人において当該物件を維持していくことが困難となり、賃借人が入居している状態では売却することが困難であったり、売却価格が著しく低下してしまうような場合には、正当事由が認められることがあります。

(4)家賃の滞納があるケース

長期間の家賃の滞納があるケースでは、借地借家法の適用によらず、契約期間の満了を待たずに契約を解除し、立ち退いてもらうことも可能です。もっとも、賃貸借契約は賃貸人と賃借人の信頼関係に基づく契約であり、これを解除するということは賃借人の生活の本拠を取り上げることになることになります。そこで建物賃貸借契約の解除には、その信頼関係が破綻したといえるような状況が必要とされ、具体的には6か月程度の賃料未払いがなければ、信頼関係が破綻したとまではいいにくいです。ただし、解除に至らない程度の滞納であっても、更新拒絶の正当事由として考慮されることはあります。

2. 立ち退き拒否の対処法

上記のような「正当の事由」に基づき賃借人に対して立ち退きを求めたとしても、賃借人が立ち退きを拒否することがあります。立ち退きを拒否されたときには、最終的には裁判で争っていくことになりますが、それには時間も費用もかかりますので、できれば話し合いで解決をしたいところです。

賃借人から立ち退きを拒否されたときには、以下の対処をすることで円満に解決することがあります。

(1)立ち退き料の提供

立ち退きにあたっては、賃借人としても、新たなアパートを契約する初期費用や引っ越し代など多額のお金を要するため、立ち退きにあたっては消極的になることがあります。そこで、賃貸人としては、家賃の何か月分かを立ち退き料として提供することで、賃借人に立ち退きを認めてもらうという方法があります。

立ち退き料の提供については、賃貸借契約の更新拒絶の際の正当事由を補強する事情となりますので、立ち退き料を提供したという事実は、将来裁判になったときにも有利に働きます。

(2)代替物件の提供

賃借人としては、突然追い出されても住むところがないため、立ち退きに消極的になっていることもあります。もし、賃貸人が他に提供できる賃貸物件を所有しているようであれば、それを提案してみるのもよいでしょう。

賃貸経営をしている賃貸人の方は、近隣の賃貸物件について情報を持っていることもありますので、賃借人と一緒に新しい物件を探してみるのもよいかもしれません。

(3)弁護士への相談

賃借人との立ち退き交渉では、法律の知識や経験が必要となります。立ち退きにあたってどのような事情があれば認められるか、立ち退き料としてはどのくらいの金額が相当かということは、法律の知識と経験がない方では適切に判断することができません。

当事者同士の交渉では、どうしても感情的になりがちですので、賃借人に立ち退きを拒否されたときには、弁護士に依頼をして、立ち退き交渉を行ってもらうというのも有効な手段となりえるでしょう。

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