投薬ミスによる医療過誤。請求できる賠償内容を解説

投薬ミスによる医療過誤。請求できる賠償内容を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

投薬ミスによる医療過誤とは、医療従事者の過失により薬が適切に投与されず、患者が被害を受けることです。

本記事では、投薬ミスによって起こりうる症状やミスが起こる原因、請求できる賠償内容について解説します。

1. 投薬ミスによる医療過誤

医療過誤が疑われる場合、原因はいくつかの種類に分けられます。そのうちのひとつに「投薬ミス」があります。

(1)投薬ミスとは

投薬ミスとは、薬物を投与する際に、薬の分量や濃度、投与の頻度、薬の種類自体などを間違えてしまうことです。患者に対する投薬には、医師や看護師だけでなく、薬剤師、介護施設で働く介護士など、さまざまな人が関わっており、処方・調剤・投与がすべて適切に行われなければなりません。

投薬ミスによって患者に被害が発生した場合、医師であれば患者のこれまでの薬剤情報を把握していたか、薬剤師であれば医師の指示にもとづき薬剤を正しく処方したか、服薬時の副作用を説明していたかなどが問われ、疑わしい点があれば医療過誤の可能性が考えられます。

(2)投薬ミスによって起こること

薬が適切に投与されないことで、患者は重大な被害を受ける可能性があります。たとえば、神経や脳が損傷してしまったり、心臓発作を起こしてしまったりすることもあり、いずれの場合も重篤な状態につながります。投薬ミスでこれらの症状を発症させたことにより、重い障害が残ってしまったり、最悪の場合には、死亡に至ったりしてしまうケースもあります。

投薬時の医療過誤としては、アナフィラキシーの発生も大きな問題です。アナフィラキシーとは、牛乳や小麦、ピーナツなどの食物アレルギーの原因物質や蜂毒、抗菌薬などのアレルゲンを摂取することで全身にアレルギー症状が現れ、生命に危機を及ぼす過敏反応です。血圧低下や意識障害といった重篤な症状がともなう場合にはアナフィラキシーショックと呼ばれ、死亡してしまうこともあります。

2. 投薬ミスが起こる原因

前述のように、医師は薬の処方に、看護師は投与に、薬剤師は調剤に、さらに介護施設の職員は服薬介助など、投薬にはさまざまな医療従事者が関わっています。しかし、投薬に関して適切な処置が行われなかったことで、医療過誤が引き起こされる可能性があります。投薬ミスの具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 医師が患者の病歴や服薬履歴を確認せずに誤った薬を処方した
  • 医師が処方した薬を薬剤師が取り違えた
  • 看護師が他人の薬を投与した
  • 薬の副作用などのリスクを説明していなかった
  • 処方された薬が適切な量ではなかった
  • 投薬の頻度や時間を間違えられた
  • 投薬を忘れられた

これらは医療従事者の判断ミスや伝達ミス、知識不足、確認不足など、いずれも人為的なミスで発生します。

3. 請求できる賠償内容

投薬ミスによる医療過誤が疑われる場合、病院や医療従事者などに対し、賠償請求が可能です。

(1)病院側が問われる責任

医療過誤によって病院・医療従事者が問われる責任には、

  • 捜査機関が医療従事者に対して追求する「刑事上の責任」
  • 国が病院に対して追及する「行政上の責任」
  • 患者や遺族が病院に対して追及する「民事上の責任」

があります。民事上の責任における損害賠償請求では、医療従事者や病院に過失があったのか、医療過誤と患者の損害との間には因果関係が認められるのかが重要なポイントです。

医療従事者や病院の過失の有無は、以下の2点から判断されます。

  1. 予見可能性:注意すれば特定の出来事の発生を予測・予見できた可能性
  2. 回避可能性:特定の出来事が発生しないようにすることができた可能性

医療従事者や病院側に過失責任を問うためには、当該医療過誤が予測可能な出来事であったこと、結果が回避可能であったことも条件になります。

(2)請求可能な賠償内容

医療過誤に対して請求可能な賠償内容は内容ごとに異なりますが、主なものは以下の通りです。

  • 現在および将来の医療費(治療費・通院交通費・入院雑費・付添看護費など)
  • 医療過誤による被害で損失した収入および将来損失する収入(休業損害・逸失利益)
  • 精神的苦痛への賠償金(入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料)
  • その他、葬儀にかかる費用など

今回の事案で該当する項目の金額を合計したものが損害賠償金です。医療従事者や病院に過失が認められた場合、病院側から被害を受けた患者もしくは遺族に損害賠償金が支払われることで、医療従事者・病院の民事上の責任が果たされます。

(3)損害賠償請求については弁護士へ相談

医療のプロである病院側に対して、患者および遺族は医療の素人ですので、医療行為の詳細を理解し、医療従事者や病院に責任を追及することには限界があるため、一般的な事件と比較すると、医療過誤事案では損害賠償請求は難しいといえるでしょう。

そのため、医療過誤による損害賠償請求には、法的な専門知識や経験に加え、医学的な専門知識を持つ弁護士や協力医を確保することが重要です。医療過誤を得意分野とする弁護士に相談することで、請求に必要となる資料に関するアドバイスや協力医の確保、交渉や裁判を一任できるメリットがあります。

また、賠償請求できる期間に時効があり、この時効が成立すると請求権が消滅し、賠償請求が不可能になります。投薬ミスが疑われ、賠償請求を検討している場合は、お早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年09月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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