
美容整形手術で失敗した場合の相談先は? 実際の被害事例も紹介
美容整形手術を受けてコンプレックスを解消し、前向きな毎日を送る方がいる一方で、手術の失敗などの被害やトラブルに遭う方も少なくありません。
本コラムでは、実際の被害事例、損害賠償請求の判断基準、トラブルを避けるためのポイントやトラブルに遭った際の相談先について解説します。
1. 美容整形・施術に関する被害事例
美容整形手術では、施術に関するトラブルに加え、金銭面でのトラブルも発生しやすいです。発生の傾向や被害の事例を紹介します。
(1)被害・トラブルの発生傾向
美容整形に関するトラブルは、10〜20代の若者を中心に増加傾向にあります。消費者からの苦情相談を収集・蓄積しているPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)というデータベースには、毎年2000件前後の相談が寄せられており、10〜20代の相談件数や割合は2018年以降増え続けています。
特に、20代の相談件数は10代に比べて10倍ほど多く、施術不良の相談よりも、高額な料金に不満を感じる相談が多く見られるのが特徴です。
(2)実際に発生した被害・トラブル事例
美容整形に関する実際の被害やトラブルを、施術によるものと金銭面によるものの2つに分けて紹介します。
①手術・施術トラブル
メスを使わず行える施術、いわゆるプチ整形は手軽に行えるため人気ですが、副作用やリスクがないわけではありません。「手術直後からメイクできるという二重まぶたの整形を受けたが、術後一週間を過ぎても腫れが引かない」「ヒアルロン酸注入による涙袋整形を受けたら、あざとしこりができた」といった被害が発生しています。
レーザー脱毛などの美容外科手術においても「やけどの症状が出て治療が必要になった」「赤く腫れた」など、身体に危害を受けるトラブルが目立ちます。
②金銭的トラブル
金銭的なトラブルでは「今日施術を受けるなら割引できると言われて受けたが、高額だった」「安価なプランを希望したが、別の高額なプランをすすめられて契約してしまった」など、その場の雰囲気に流されて契約してしまい、後悔するケースがあります。
次々にオプションを追加され、当初は2万円と聞いていた施術が40万円に、広告では10万円だった施術が60万円に膨れ上がった事例もあります。「シミ取りの年間契約の中途解約を求めたが、返金はできないと言われた」「流れで契約してしまったが、クーリングオフをしたい」など、料金に納得できず返金を求めるトラブルが多いのが特徴です。
2. 損害賠償請求はできる? 判断の基準は?
美容整形に関する被害やトラブルに遭った場合、損害賠償請求ができるケースもあります。損害賠償請求ができるか否かのポイントは、医師側に治療義務違反や説明義務違反があったかどうかです。
(1)治療義務違反
医師が治療の義務に違反していたことを立証できれば、損害賠償請求ができます。しかし、通常の医療とは違い、美容医療には緊急性や必要性のある処置は少ないです。治療義務違反を立証するには、「術後○日後に必要な処置を怠ったことが原因で、腫れが引かない」などを主張する必要があり、明確な因果関係がない限り難しいのが現状です。
(2)説明義務違反
医師には、施術前に方法や効果、副作用の有無などを患者に説明する義務があります。そのため、患者は基本的に説明を聞いてから施術を受けるかどうかを決められます。医師に説明義務違反があり「説明があれば施術をやめていた」という場合、自分で決める機会を奪われた(自己決定権侵害)として、損害賠償請求ができます。
ただし、自己決定の機会を奪われたことのみが問題である場合、説明の有無とトラブルとの因果関係は認められず、慰謝料が認められるにすぎないこともあり得るため、賠償額は少額です。
3. 美容整形・施術に関するトラブルに悩んだら
美容整形や施術に関するトラブルは、事前に知識を得ることで避けることができます。美容整形を考えている方は、万が一のトラブルを想定して行動することをおすすめします。
(1)トラブルを避けるポイント
トラブルを避けるために重要なのは、事前にさまざまな媒体から情報収集をして、病院や医師、施術方法、リスクなどについてしっかりと知っておくことです。施術方法やリスクに関しては、医療機関や医療安全支援センターから正しい情報を得ることが大切です。本当に手術を受けるかどうかは、情報収集をした上で慎重に判断しましょう。
十分に検討し、美容整形を受けると決めた場合でも、その場で安易に契約するのは危険です。カウンセリング時の説明はしっかりと聞き、わからないことは質問し、料金にも納得した上で契約することをおすすめします。
即日施術を強要されたり、強引に契約をすすめられたりした場合は、いったん冷静になりましょう。お金に余裕がない場合ははっきりと断ることも大切です。また、クリニックはひとつだけを見て決めるのではなく、いくつか比較して決めましょう。
(2)万が一トラブルに遭った場合の相談先
トラブルに遭った場合は一人で抱え込まず、すぐに消費生活センターに相談しましょう。契約期間が1か月超かつ契約金額が5万円超の美容医療サービスは、特定商取引法の規制対象となっており、契約書面を受け取ってから8日以内であればクーリングオフができます。
成人年齢が18歳に引き下げられた影響で、今後さらに若い世代で美容整形を受ける方が増え、被害の拡大が懸念されています。「188(いやや)」に電話をかければ、最寄りの消費者生活センターにつながり、専門の相談員がトラブルの解決をサポートしてくれます。
医療事故による損害賠償請求を考えている方は、弁護士に相談するのもおすすめです。医療訴訟に強い弁護士を選べば、解決できる可能性は高いでしょう。
美容整形手術によるトラブルは、しっかりと情報収集をすることと、医師からの説明をよく聞くことで回避できる可能性が高いです。万が一、被害に遭った場合は、消費生活センターや弁護士に早めに相談しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年09月06日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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