医療過誤の疑いがある…病院のカルテ改ざんを防ぐ方法

医療過誤の疑いがある…病院のカルテ改ざんを防ぐ方法

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

医療事故や医療過誤が疑われる場合、病院にカルテの開示を請求します。その際、カルテが改ざんされる危険性はゼロではありません。

本コラムでは、カルテの法的位置づけやカルテ改ざんの裁判例、改ざんの不安がある場合の対応などを解説します。

1. カルテ(診療記録)の法的位置づけ

カルテとは、患者の主訴や状態、客観的な所見、診察所見、検査結果に加え、これらの情報をもとにした診断および処置内容や処方などの治療方法が記録されたものです。

カルテには、こうした診療経過の記録としての役割だけでなく、保険請求を行う際の資料としての役割や、医療事故や訴訟などにおける法律上の根拠としての役割も存在します。

(1)医師法による位置づけ

医師法第24条1項には「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」とあり、カルテを記載することを定めています。同条2項では、カルテを5年間保存することを義務づけています。さらに、第33条の3には「第24条の規定に違反した場合は罰金に処する」と規定されています。

(2)カルテ開示は法律で定められた権利

受けている治療の詳細について知りたい場合や、医療過誤が疑われる場合などに、カルテの開示を求めることは、すべての患者に与えられた権利です。

個人情報保護法では、自身が識別できる個人情報の開示を請求できると規定されています。すなわち、医療機関に対するカルテの開示請求は法的に認められているということですので、必要な手続きを行えば、誰でも開示請求をすることが可能です。

(3)カルテ改ざんの危険性

医療過誤や医療事故を確認するためにカルテの開示を求めた際に、カルテが改ざんされる危険性はゼロとはいえません。実際、医療事故を隠蔽(いんぺい)するために、カルテが改ざんされた事例もあります。

近年では、修正履歴が残る電子カルテを扱う医療機関が増えており、以前に比べれば改ざんされるリスクは減りましたが、前後の内容が一致しない場合や、修正された日時に不自然さなどが見られる場合は、改ざんを疑わなければなりません。

2. カルテ改ざんの裁判例

ここでは、実際にあったカルテ改ざんの裁判例をご紹介します。

(1)紙カルテの改ざん

ある医療機関の眼科に通院し、両目とも白内障と診断されたAさんは、同医療機関で3回の手術を受けたのち、左目を失明してしまいました。

カルテには「患部の線維が術前から断裂していた」と記載されていましたが、裁判では「信用性の高い手術記録と整合せず、事実認識と異なる内容を意図的に追記して改ざんした」と認められました。

(2)電子カルテの改ざん

うつ病と診断された患者が精神安定剤の過量服用で亡くなった事案で、電子カルテの改ざんが争点となった事例です。

医師は、患者であるBさんが過量服用をしたことから、Bさんの夫に対して薬剤の管理を依頼しました。しかし、その後も過量服用が続き、Bさんは亡くなってしまいます。このことを受け、Bさんの夫は医師の服薬管理に関する指導義務違反で損害賠償を請求しました。

裁判では、患者の死亡後に書きかえられている点や、カルテの訂正に関する医師の説明が不合理であることなどから、電子カルテの改ざんが認定されました。

3. カルテ改ざんの不安がある場合の対応

カルテの開示を請求した場合、カルテが改ざんされたり、カルテの開示を拒否されたりする可能性があります。カルテの改ざんをできるだけ防ぐためには、どのような対応が求められるのでしょうか。

(1)カルテ開示を拒否される可能性もある

患者および亡くなった患者の遺族には、個人情報保護法に規定されたカルテの開示請求権を持っていますが、医療機関側が正当な理由がないにもかかわらず、カルテの開示を拒否する可能性もあります。その際、各自治体に設置されている「医療安全支援センター」へ相談することも有効ですが、裁判所による「証拠保全」がカルテ改ざんの防止に役立ちます。

(2)裁判所による証拠保全

証拠保全とは、医師や医療機関が保管しているカルテを、裁判所に申し立てて、現状のまま記録することです。申し立ては、示談交渉や訴えを起こす前に行い、申し立てが認められれば、医療機関に事前予告することなく、カルテが記録されます。

カルテの記録は裁判所の決定後、裁判官が医療機関に出向き、写真撮影などによって行われますが、事前予告がないため、医療機関はカルテを改ざんする時間がなく、ありのままの状態を記録することが可能です。

カルテの開示請求は患者が持つ権利です。医療過誤を疑ってカルテの開示請求をする場合、カルテの改ざんを防止するためにも証拠保全を申し立てることが有効です。もし、ご自身で証拠保全を申し立てることに不安がある場合やどのように対応したらよいのかわからない場合は、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

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  • こちらに掲載されている情報は、2023年07月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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