医療過誤に時効はあるの? 医師(病院)に生じる責任とは?
  • 2022年03月18日 (更新:2022年04月07日)
  • 医療

医療過誤に時効はあるの? 医師(病院)に生じる責任とは?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

病院で治療や手術を受けた結果、思わぬ事態が生じた場合や結果に納得がいかない場合には、「医療過誤ではないのか?」と疑いをもたれることでしょう。医療過誤であった場合には、医師や医療従事者、病院に対して医療過誤によって生じた結果の責任を追及することになります。その場合の責任としては、どのようなものがあるのでしょうか。

今回は、医療過誤によって生じる責任と時効との関係について見ていきます。

1. 医療過誤で医師や病院に生じる責任

医療過誤が発生した場合には、医師、医療従事者、病院には、以下のような責任が生じます。

(1)民事上の責任

病院での治療や手術の結果、患者の生命や身体に対して何らかの障害を与えた場合には医療事故にあたります。そして、医療事故のうち、医師または医療従事者が必要な注意を怠った結果生じたものを医療過誤といいます。

このような医療過誤が発生した場合には、患者および患者の遺族は、医師、医療従事者、病院に対して民事上の責任として、損害賠償請求をすることができます。医療過誤による損害には、治療費、休業損害、慰謝料、逸失利益などが含まれます。

(2)刑事上の責任

医療過誤によって患者が死亡または障害を負った場合には、医師または医療従事者は業務上過失致死傷罪(刑法211条)の責任を問われる可能性があります。また、医療過誤に関連して、カルテなどの改ざん行為などが行われた場合には、証拠隠滅罪(刑法104条)の責任を問われる可能性もあります。

これらの犯罪に該当する可能性がある場合には、警察による必要な捜査が行われたうえで、検察官が事件を起訴するかどうかを判断します。検察官が事件を起訴した場合には、刑事裁判が行われ、犯罪の成否や量刑について判断されます。

業務上過失致死傷罪の法定刑は、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金と規定されています。また証拠隠滅罪の法定刑は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金と規定されています。

(3)行政上の責任

医療過誤による行政上の責任とは、医療過誤を起こした医師が厚生労働大臣から行政処分を受けることをいいます。医師法7条1項では、行政処分の内容として、以下の3種類を規定しています。

  1. 戒告
  2. 3年以内の医業停止
  3. 免許の取り消し

医師法4条3号では、罰金以上の刑に処せられたことを行政処分の事由として挙げていますので、刑事上の責任が認められた場合には、同時に行政上の責任も認められて行政処分がなされる可能性があります。医療過誤による行政処分の例としては、数か月間~1年程度の医業停止処分が多いようです。

2. 医療過誤に時効はある?

医療過誤による民事上の責任を追及する場合には、時効に注意が必要です。医療過誤による損害賠償請求をする場合の時効期間は何年なのでしょうか。

(1)消滅時効とは

消滅時効とは、一定期間権利を行使しない場合に権利が消滅するという制度のことをいいます。

医療過誤による民事上の責任を追及する場合には、被害を受けた患者側で医師、医療従事者、病院に落ち度があったことを証明していかなければなりません。しかし、患者側は、医療に関する知識の乏しい素人ですので、医療行為によって何らかの障害が残ったとしても、それが医療過誤であるかどうかを判断することは難しいといえます。

そのような状況で民事上の責任を追及しようとする場合には、医療過誤かどうかの判断や医療過誤を立証するための証拠の収集に膨大な時間を要してしまいます。

そのため、医療過誤による損害賠償請求をする場合には、損害賠償請求権が時効により消滅しないように注意して進めていく必要があります。

(2)医療過誤の消滅時効期間とは

医療過誤による民事上の責任追及の法律構成としては、債務不履行構成と不法行為構成の2種類があります。かつてはどちらの構成をとるかによって時効が異なっていましたが、民法改正により、2020年4月1日以降に発生した医療過誤については、医療過誤のように生命や身体の侵害による損害賠償請求の場合には、時効期間は同じになっています。

①債務不履行構成

債務不履行構成での損害賠償請求権は、以下の期間のうちいずれか早い方の経過によって時効により消滅します(民法166条1項、167条)。

  • 権利を行使することができるときから20年
  • 権利を行使することができることを知ってから5年

②不法行為構成

不法行為構成の場合には、以下の期間のうちいずれか早い方の経過によって、損害賠償請求権は時効により消滅します(民法724条、724条の2)。

  • 不法行為があったときから20年
  • 損害および加害者を知ったときから5年

①債務不履行構成と②不法行為構成の時効期間の規定は、言葉は異なりますが、同じ期間を定めているものと考えられています。

2020年3月31日以前に発生した医療過誤についての損害賠償請求権の消滅時効については、経過措置も考慮して正確に検討する必要がありますので、弁護士にご相談ください。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年04月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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