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レーシック手術が失敗……病院を相手に訴訟を起こすことはできる?
レーシック手術は、視力改善に大きな効果がある眼科手術として注目されていますが、合併症のリスクが存在することも無視できません。仮にレーシック手術後に合併症を発症した場合、医療機関に対して損害賠償を請求することは可能なのでしょうか。
この記事では、レーシック手術の失敗に関して、訴訟で損害賠償を請求する際のポイントについて解説します。
1. レーシック手術にはトラブルが多い
レーシック手術などの近視矯正手術(屈折矯正手術)は、視力改善の効果ばかりが注目されがちですが、その一方でトラブルが多いことでも知られています。
(1)さまざまな合併症リスクが存在する
レーシック手術は、角膜を削ることによって視力を矯正する手術であることから、さまざまな合併症を発症するリスクがあるとされています。
レーシック手術の主な合併症として、次のような症状があげられます。
-
ドライアイ
目が乾いてしまう -
ハロー・グレア
夜間に光がにじんだり、まぶしく感じたりする -
リグレッション
近視状態に戻ってしまう -
過矯正
術後に遠視(遠くのものも近くのものもはっきり見えない)の状態になること
など
こうした合併症は、その後長期間にわたって症状が残存してしまうケースも多いようです。
(2)病院から十分なリスク説明が行われないケースも多い
医師は、レーシック手術を希望する患者に対して、上記のような合併症リスクがあることを適切に説明する必要があります(インフォームド・コンセント)。
しかし、患者にレーシック手術を受けることを促すあまり、十分なリスク説明を行わない医師や医療機関が存在することも事実です。患者の側としては、医師に対してレーシック手術で生じるリスクをきちんと説明するように求めたうえで、本当に手術が必要かどうかを慎重に検討する必要があるでしょう。
2. レーシック訴訟で損害賠償を勝ち取るためのポイント
レーシック手術により合併症が残ってしまった場合、医師や医療機関に対して損害賠償を請求できる可能性があります。損害賠償を勝ち取るための論拠は、大きく分けて「手技上の過誤」と「説明義務違反」の2つです。
(1)医師に手技上の過誤があったかどうか
レーシック手術の実施に当たって、医師による施術に手技上の過誤があったと認められれば、診療契約違反(民法第415条第1項)または不法行為(民法第709条)に基づき、医師や医療機関に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
手術室で起こった医療ミスを立証するためには、合併症の症状について別の医師の診察を受け、レーシック手術における手技上の過誤がその原因となった可能性が高いという証言を得ることが有効です。もっとも、医療ミスの立証には、専門的な知識が求められることと、カルテなどの証拠が医療機関側にしかないという問題があり、訴訟で認められるハードルは高いといえます。
(2)合併症に関するリスク説明が十分に行われたかどうか
レーシック手術には、一定の確率で合併症が発生するリスクが常に存在するとされています。
言い換えれば、医師に手技上の過誤がなかったとしても、合併症が生じる場合があり得るということです。もし医師に手技上の過誤がないのであれば、いわゆる医療ミスを理由とした損害賠償請求は認められません。
しかし患者には、医師からレーシック手術についてのリスク説明をきちんと受けたうえで、適切な情報に基づき、手術を受けるかどうかを選択する権利があります。
医師が、レーシック手術についてのリスク説明を十分に行わなかった場合には、このような患者の自己決定権を侵害していると評価される場合があります。この場合、患者は医師や医療機関に対して、診療契約に基づく説明義務違反を理由とする損害賠償請求を行うことが可能です。
なお、説明義務違反に関する損害賠償の金額は、手技上の過誤を理由とする場合に比べると、低く抑えられる傾向にあります。
(3)訴訟準備はしっかりと行うことが大切
レーシック手術の失敗に関して、医師や医療機関に対して訴訟を提起して損害賠償請求を行う場合、どのような主張・立証を展開するかの明確なビジョンを事前に持っておくことが大切です。
しかし、医療過誤の立証は簡単ではありません。そのため、どのような法律構成であれば勝算があるのか、医療機関側の過失を立証するための証拠をどのように集めればよいのかなど、弁護士のアドバイスを受けながらしっかりと準備を進めるべきといえるでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2022年01月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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