退職代行で辞めたら退職金は受け取れる? 支給条件を解説

退職代行で辞めたら退職金は受け取れる? 支給条件を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

この記事の監修弁護士

折田 忠仁 弁護士
折田 忠仁 弁護士

ベリーベスト法律事務所

近年、退職代行サービスの存在感が増してきました。しかし、実際に利用するとなると、「退職代行を使った場合でも、退職金や未払い給与、残業代は受け取れるのだろうか」といった疑問を抱き、利用をためらう方は少なくありません。

本コラムでは、退職代行の概要をはじめ、退職代行を使った場合の退職金や未払い給与、残業代の支払い可否、退職代行を弁護士に依頼した場合のメリットについてなどを解説します。

1. 退職代行を利用しても規定次第で退職金を受け取れる

(1)退職代行とは

そもそも退職代行とは、何らかの理由により自分自身で退職の申し出をするのが難しい労働者に代わって、退職の意思を伝えるサービスです。たとえば、「退職を言い出しづらい」といった場合をはじめ、「脅迫めいた言動で引き止められるのが怖い」「退職日まで不当な扱いを受けるおそれがある」といった場合などに有効です。

(2)就業規則や退職金規定を確認する

退職代行を利用しても、自分自身で退職交渉をした場合と同様、条件を満たしていれば退職金を受け取れます。いずれの場合でも、まずは勤務先の就業規則・退職金規定に必ず目を通すようにしましょう。そして、退職金の不支給(減額)に関する規定と照らし合わせながら、自分が退職金の支給条件を満たしているかを調べてください。

厚労省は、令和5年に「モデル就業規則」を改定し、不支給(減額)の取り扱いを見直す方向へと動いています。具体的には、退職金の支給を一定年数以上働いた人に限定する内容や、勤続年数が短い自己都合退職者への退職金不支給に関する記載が削除されました。

しかし、現状としては、「勤続○年未満の自己都合による退職者には、退職金を支給しない」などの規定を設けている会社は少なくありません。勤続年数によって支給される退職金の割合が変動することも多いので、しっかりと確認しましょう。

また、退職金制度は、現時点では法律上の義務ではなく、各企業の福利厚生の一環という扱いです。そのため、規模が小さい会社ほど、そもそも退職金制度を設けていない傾向にあります。その場合は、退職金が支払われないことは留意しておいてください。

2. 退職の際に給料や残業代が未払いになっているケースは要注意

残業代などが未払いになっていないかも確かめておきましょう。「退職代行を利用すると、未払いの給与を受け取れなくなるのでは」と心配する必要はありません。退職金と同じように、受け取る権利があります。

労働基準法第24条で、勤務先は、従業員が働いた分の賃金を全額支払う義務を負う旨が定められています。そのため、もしも勤務先から、「自分自身で退職届を出さないなら給与は支払わない」といったことを言われたら、早めに弁護士などに相談しましょう。

ボーナスに関しても同様です。ただし、ボーナスは、「今後の勤務に対するインセンティブ」という意味合いもあるため、就業規則の定めによっては減額される場合もあります。また、ボーナスの支給要件として、就業規則に「支給日に在籍していること」と定められている場合には、支給日前に退職しているとボーナスをもらえません。反対に、そのような規定がなければ、支給日前に退職していても、ボーナスを受け取れる可能性があります。

3. 退職代行は弁護士に依頼するのがおすすめ

「有給休暇を消化したい」など、退職の意思を伝えること以外にも依頼したい事柄があるなら、民間の業者よりも弁護士に依頼するのがおすすめです。

(1)弁護士に退職代行を依頼するメリット

①退職の条件交渉をしてもらえる

弁護士法により、民間の退職代行業者ができることは、「本人の退職の意思を会社に伝えること」のみに限られています。それ以上の退職の条件交渉などは、弁護士法違反となるおそれがあるため、基本的には行えません。

一方、弁護士であれば、退職の意思を伝えるだけでなく、退職の条件交渉も行えます。そのため、「これ以上出社したくないので、退職日まで有給休暇を消化し、そのまま辞めたい」といった方などに適しています。

②未払い賃金の請求ができる

「給与や残業代が未払いになっている」という場合も、弁護士であれば、本人に代わって請求できます。退職金が未払いになっている場合も同様です。その際は、タイムカードなどの証拠をまとめておきましょう。

③ハラスメントの慰謝料の請求などができる

在職中にセクハラやパワハラなどを受けていたなら、それらのハラスメントに対する慰謝料の請求も任せられます。「長時間労働でうつ病になってしまった」など、業務が原因で身体的・精神的な疾患が発生した場合も、労災認定を受けるために動いてくれます。

④損害賠償を請求された場合も対応可能

法的には、2週間前に退職の申し出をすれば会社を辞められます。それにもかかわらず、「損害賠償をする」「退職によって会社の仕事に穴が開く」「ほかの従業員にしわ寄せがくる」と脅迫めいた言動を取る会社は少なくありません。

実際に損害賠償をされるケースはまれですが、もしも不当な賠償金を請求された場合も、弁護士に依頼すれば適切に対応してもらえます。有期で契約していた雇用期間の途中で退職する場合など、実際に損害賠償義務が生じる可能性があるケースでも、弁護士が間に入ることで、減額の交渉などを有利に進められます。

(2)弁護士に退職代行を依頼するデメリット

有資格者である弁護士に退職代行を依頼する費用は、民間の業者と比べると高くなります。また、給与、残業代の請求、慰謝料の請求、労災申請などの退職代行以外の業務には、別途着手金や成功報酬が必要になるのが一般的です。何にどれだけの費用がかかるのか、あらかじめしっかりと確認してから、弁護士と委任契約を結ぶようにしてください。

特にブラック企業の場合、給与、残業代の未払いや各種ハラスメントなどが横行している可能性もあります。弁護士に退職代行を依頼して、それらの問題もあわせて適切に対処してもらいましょう。

4. 弁護士への依頼から退職までの流れ

弁護士に退職代行を依頼した場合には、以下のような流れで進んでいきます。

(1)弁護士が代理人として退職の意思を会社に伝える

弁護士に退職代行を依頼した場合には、弁護士が代理人として労働者本人の退職の意思を会社に伝えます。会社に伝える方法としては、後日の証拠とするために、配達証明付きの内容証明郵便を利用して文書を送付するのが一般的です。

期限の定めのない労働契約であれば、退職日の2週間前までに退職の申出をすれば、退職理由を問われることなく、労働者による一方的な意思表示によって退職することが可能です。

(2)退職条件について会社と交渉

会社に対して退職の意思を伝えた後は、会社との間で具体的な退職条件について話し合いを進めていきます。未消化の有給休暇がある場合には退職日までの処理を求め、未払いの残業代がある場合には支払いを求めていきます。また、退職金規程がある場合には、退職金規程に従って計算をした退職金の請求も行っていきます。

労働者本人に代わってこのような交渉ができるのは、弁護士だけですので、退職代行業者ではなく弁護士に依頼をすることをおすすめします。

(3)話し合いで解決できない場合には労働審判や裁判

退職だけであれば退職の意思を伝えるだけで解決することができますが、退職にあたって未払いの残業代などを請求する場合には、金額や支払い方法に関して合意が得られない場合もあります。

そのような場合には、労働審判や裁判といった法的手続きによって解決を図ることになります。弁護士に依頼をすれば、このような法的手続きが必要になったとしても、引き続き任せることができます。

退職代行業者ではこのような対応ができませんので、発生し得る問題を見据えて最後までしっかりと対応してもらいたいという場合には弁護士に依頼をするようにしましょう。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

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