圧迫面接を受けた! 会社や面接官に対し訴訟は起こせる?
就活や転職における採用面接はその後の人生を大きく左右する大事な場ですが、そこでは時に「圧迫面接」という理不尽で不愉快な出来事に遭遇することがあります。そうした際、会社や面接官に対して訴訟を起こすことは可能なのでしょうか。
本コラムでは、圧迫面接を理由に訴えられるか、どのような罪に問えるのかを解説します。
1. 圧迫面接とは
圧迫面接とは、求職者に対する面接官の高圧的な態度や発言により、過度なストレスを与える形で行われる面接のことです。具体例としては以下の行為が挙げられます。
- 求職者の回答や人格をひたすら否定する
- 求職者が答えられなくなるまで執拗(しつよう)に問い詰める
- 過去の失敗や経歴を過度に詮索する
- 失礼な態度や不機嫌な様子を隠さない
面接官としては、応募者のストレス耐性や、精神的に追い詰められたときの対応力などを試したいのかもしれません。しかし、求職者にとってこのような圧迫面接は、非常に強いストレスや怒り、屈辱感を与えられ、ときとしてトラウマにもなりかねないものです。面接官の言動が行き過ぎた場合は、名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪などに該当する可能性すらあります。
2. 圧迫面接で訴訟は起こせる?
圧迫面接で理不尽な思いをした経験がある方は、「この会社や面接官を訴えてやろうか」と考えるかもしれません。しかし、面接の場で行われた失礼な言動に対して、法的に罰や制裁を与えることは可能なのでしょうか。
(1)圧迫面接を規制する法律は存在しない
残念ながら、日本の法律において、「圧迫面接」自体を直接禁じている法律はありません。したがって、圧迫面接を受けた事実のみによって訴訟を起こしても、望む結果を得ることは難しいのが実情です。
(2)名誉毀損罪や侮辱罪で告訴することは可能
しかし、たとえ面接官であろうと、人の尊厳をいたずらに傷つける言動は許されるものではなく、民事上の不法行為にあたります。
また、内容や程度によっては刑事上の罪にあたる可能性も出てきます。そのため、面接官が求職者に対して理不尽に侮辱的な言動を行った場合は、名誉毀損罪や侮辱罪で告訴することは可能です。
①名誉毀損罪
衆目の場で「事実の摘示」によって人の社会的評価を貶める行為に適用される罪です。ここで言う事実の摘示とは、人を貶める際に、真偽を問わず何らかの根拠情報を提示することを意味します。たとえば、「こんなレベルの低い大学出身ではわが社だと役に立たないな」とばかにされたとき、その大学のレベルが実際に高かろうと低かろうと事実の摘示に該当します。
②侮辱罪
侮辱罪とは、上記で解説した事実の摘示を伴わずに公然と人を貶める行為に対する罪です。たとえば、ある面接官が、他の面接官も含めて余人にも会話が聞こえている状況で、「君は役立たずだ」「話にならない」など侮辱する言動をとった場合に適用されます。
(3)訴訟には敗訴や費用倒れのリスクもある
ただし、民事・刑事を問わず、訴訟の提起や告訴を考える際には、証拠の存在が非常に重要です。面接官が問題発言を行った具体的な証拠がなければ、訴訟で良い結果を望むことはできません。そのため、面接の録音データや周囲の証言、面接の様子を記録した詳細なメモなど、客観性の高い証拠を集めることが大切です。
とはいえ、たとえ証拠が十分にそろっていても、費用倒れになるリスクもあります。民事訴訟は時間と費用がかかる行為です。企業を訴えるなら弁護士を雇うことを推奨しますが、訴訟で得られる慰謝料を、裁判費用(弁護士費用など)が上回ってしまうことがありえます。
そのため、圧迫面接に対して訴訟を起こすべきか否かは、一概には言えません。もっとも、訴訟を起こすべきかも含めて、弁護士に相談すること自体には一考の価値があります。
3. 圧迫面接を受けた際の対処法
もしも圧迫面接に遭遇したら、ただ我慢するしかないのかと思うかもしれませんが、そうではありません。いくつか対処法がありますので、参考にしてください。
(1)面接を録音しておく
先述の通り、訴訟での結果は証拠の有無に大きく依存します。そのため、もしも応募先の会社に何らかの不信感を事前に抱いた場合は、あらかじめ面接を録音する用意をしておくことが重要です。許可なく録音したとしても、訴訟や告訴で証拠として提出する上では問題ありません。
(2)会社へ苦情や改善の申し入れをする
圧迫面接が会社の体質というより、面接官本人の資質によると感じた場合は、応募した企業に苦情を入れましょう。コンプライアンスを遵守する企業であれば、その担当者に何らかの指導や処分を行うことが期待できます。
(3)ハローワークに苦情を入れる
もしもハローワークを利用してその企業に応募した場合は、ハローワークに対して事情を説明することもひとつの手です。問題視したハローワークから、その企業に対して何らかの指導を行ってくれる可能性があります。
(4)弁護士に相談する
圧迫面接の証拠が残っている場合、または圧迫面接が原因で心の病気などにかかってしまい、医師から診断書を得ている場合などは、弁護士に相談してみるのもおすすめです。
証拠がしっかりそろっており、圧迫面接によって実害が出ているならば、民事訴訟を提起してみる価値があるかもしれません。慰謝料請求できるかどうか自分では判断に迷う場合でも、ひとまず弁護士へ相談してみましょう。
圧迫面接というだけで直ちに民事上の不法行為や犯罪を構成するものではありませんが、面接官による行き過ぎた言動は不法行為を構成し慰謝料請求の対象になるほか、名誉毀損罪や侮辱罪など刑事罰も問える可能性があります。もしも圧迫面接をした会社や面接官に不満を抱いている場合は、ぜひ弁護士に相談してみてください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年12月08日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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