イーロンマスク氏とツイッタージャパン問題から見る退職勧奨

イーロンマスク氏とツイッタージャパン問題から見る退職勧奨

イーロンマスク氏がツイッター社の経営権を取得し、大量解雇などの地殻変動が起きています。ツイッタージャパン社でも“レイオフ”が敢行されたというニュースが飛び込んできました。その際、私は日本の労働法が適用されると解雇は容易ならざることを解説しました。

続報によると、ツイッタージャパン社もその点を理解してか、『退職勧奨』と呼ばれるアプローチを取っているといった情報が出てきました。そこで、今回は退職勧奨について解説してみようと思います。

1. 退職勧奨も基本は解雇に関するルール理解が重要である

『使用者側』がとっている手段が退職勧奨の段階であっても、その意識に解雇のときと大きな差はありません。使用者側は、その人に「やめてもらおう」と意思決定しています。ただし、いきなり解雇に踏み切ってしまう会社と異なり、解雇規制の厳しさを理解しているため、ちゃんと段階を踏もうと考えているわけです。そのため、使用者側は究極的なゴールを解雇に設定しており、退職勧奨を行いながら、解雇が有効になりそうなポイントを集めて行こうとします。

逆に、『労働者側』は、退職に応じない中で生じるさまざまな出来事が、「解雇を有効にさせる形にならない」、「ポイントを決められない」ように振る舞っていく必要があります。

つまり、どちらの当事者も、解雇を意識しながら、交渉や駆け引きをしていくことになるわけです。

労働契約法16条『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。』という条文、そしてそれを具体化させた裁判例の理解が、結局は重要になって行きます。

2. 退職勧奨の段階から弁護士をつけておくメリットは大きい

まだ解雇に至っておらず、会社でも働いているわけだから、弁護士をつけるのはどうなんだろうと考える人は少なくありません。でも、労働者側はまだそこまで極限に至ってないと思っていても、退職勧奨が始まるとき、使用者側は、もう「やめさせる」という意思決定をしています。そのため、状況としては、すでに戦いが始まっていると認識する必要があります。

民事裁判では、しばしば、自白や不利益陳述といった要素が、重要な評価対象になります。「労働者側が述べる使用者側に有利な主張や供述は、議論なしに事実として扱っている評価できる」という、事実認定上のルールがあるのです。そのため、最終的に解雇訴訟に至った場合、一言一句が証拠として取り出され、以上のようなルールに従って使われてしまうリスクがあります。

こういうときに、弁護士を代理人としてつけていれば、「その話は弁護士にだけしてください」として、そもそも対応しないという選択を取れます。余計なもろもろ、自分の退職を前提にしたような話をしないで済むので、有利な事実を取られてしまう危険もありません。また、何よりもストレスが軽減されます。

自分をクビにするような話を延々と持ち掛けられるのは、誰だって気分の良いものではありません。自分が話さなくて良いということは、『法律上の戦略』だけでなく、『メンタル的』にもメリットが大きいのです。

3. 退職勧奨の戦い方 ~仕事内容の変更や配置転換~

使用者側も、ただ純粋に退職条件としての解決金を提示してくるだけでなく、嫌がらせのような手段を取ってくることがあります。もちろん、それがハラスメントなりで、不法行為に基づく損害賠償請求を構成するような手段に出てはだめです。そういう手段を取った場合は、労災問題に発展するなり、泥沼のパワハラ訴訟に展開するなど、企業にとってもやけどでは済まない結果になることもあります。

もう少しスマートな使用者側だと、「業務命令」や「配置転換」を使ってきます。就業規則上の根拠などがあれば、確かにこれは可能だからです。こういう手段が打たれたときは、労働者側の弁護士も直ちに“くぎ”を刺しに行きます。

まず、その配置転換や業務命令を拒絶するという手段も、選択肢に入ります。当然、解雇が有効にならない限度でやっていく必要があるため、その配置転換の拒絶などが、なぜ合理性に欠き解雇回避の努力を果たしたことにならないかを具体的に指摘すること等が必要です。元々の契約条件などから、一定の仕事内容が前提となっていることを示すこともあるでしょう。

また、外国人であれば就労ビザの関係から、一定の仕事内容をさせていないと、使用者側も犯罪になり得ることもあるため、この様な点も労働者が望む仕事内容を維持させるためのけん制としては使えます。もちろん、仕事の内容の幅を狭めるということは、それだけ働ける内容を狭めることになるため、解雇有効の方向で働くリスクもあり、そのような多面的に評価可能な主張を、状況に応じて選択して行くことになります。

ここらの判断は、法律家でないと正しくは行えません。

4. 時には平和に終わるのも退職勧奨

前記は、戦いとしての退職勧奨の様子を示してきましたが、労働者本人が働いている状態である以上、過剰なストレスばかりを生じさせるのも適切ではありません。時には、あらためて一緒に働くことも想定して、丁寧に理を解くこともあります。

たとえば中小企業などで、試用期間といった仕組みと使用者に与えられた裁量を誤解している場合もあります。その場合、懇切丁寧に法制度説明することで、使用者側が労働者に対する向き合い方を変えることもあります。時には、今後、会社に対してどう貢献したいかを積極的に示し、解雇しようとすると受けるダメージ(ムチ)ではなく、端的に企業にとってのメリット(アメ)を示すこともあります。

弁護士が介入すれば常に戦っているというわけではなく、キレイに話を納めて、気持ちよく再度働ける状態になるのも、ひとつの選択肢です。

5. あなたを“孤立”させません

退職勧奨の対応方法は、この通り多様です。共通するのは、職場にいる労働者を孤立させず、常に守護神のように守っていくということです。ツイッター社に限らず、退職勧奨を受けて不安を覚えた方は、弁護士をつけてみるのも一案ですよ。

「自分が会社との間で交渉できる立場」だと、知ることができます。

杉山 大介
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