
- 国際・外国人問題
オーバーステイ(不法残留)とは? 対処法を解説!
海外の方が日本で生活を営むには、在留資格が必要です。在留資格には期間のない「永住」と、期間のあるものとがあり、後者による場合は期間を過ぎることで不法残留状態となってしまいます。
そこで、この不法状態をどう解消するか、日本に残るための方法とあわせて解説します。
1. オーバーステイ(不法残留)とは?
オーバーステイとは、不法滞在の種類のひとつです。元々は適正な方法で日本に滞在していた外国人が、在留資格切れにより不法な滞在となってしまった状態を指します。在留資格切れとなったケースを「不法残留」と呼びます。これに対し、入国当初から在留資格をもたずに不法に入国した外国人が日本国内で暮らすのは、「不法在留」です。
オーバーステイは「出入国管理および難民認定法」により以下の罰則が定められています。
第七十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。
なお、刑罰さえ受ければ引き続き日本国内への在留が許される、という訳ではありません。刑罰を科された上で、退去強制処分を受けます。初めて退去強制処分がなされた場合、5年間は日本への入国ができなくなります。ただし、不法残留者の場合、当初の滞在が不法ではないことを踏まえ、出国命令制度という制度が設けられています。
2. 外国人が日本でオーバーステイになってしまったときの手続き
日本で外国人が意図せずオーバーステイになってしまった場合には、「特別受理」に向けた申請か、「出国命令制度」を活用する方法があります。それぞれ詳しく解説していきます。
(1)特別受理
在留期間の更新申請に関する救済措置である「特別受理」に向けて申請する方法です。30日を超える在留期間で日本に滞在していた外国人であれば、在留期間の最終日から2か月を超えない間に更新申請をすることで、特別受理をしてもらえる可能性があります。
ただ、うっかり在留期間の更新が遅れた場合には、受理されないこともあり得るため、確実な方法ではありません。
(2)出国命令制度
出国する意思がある場合には、出国命令制度を活用する方法があります。出国命令制度とは、不法残留者がいくつかの要件を備えていたときに、入国管理局に収容されることなく自主的な出国ができる制度です。出国命令制度による出国では、再入国の拒否期間は1年間となります。
出国命令制度の対象となるには、以下の5つの要件を全て満たしていなければなりません。
- 自主的に入国管理局へ出頭したこと
- 不法在留ではなく、不法残留であること
- 一定の犯罪行為によって懲役・禁錮の判決を受けていないこと
- 以前に退去強制処分や出国命令を受けていないこと
- 速やかに出国できることが確実であると見込まれること
(参考:「出国命令(入管法第24条の3及び第55条の2から第55条の6まで)」(出入国在留管理庁))
3. 在留特別許可で日本に残ることができる
特別受理が期待できず、出国もしたくない場合には、在留特別許可を受ける必要があります。しかし、在留特別許可は要件が明確に定まっているものではなく、あくまでも法務大臣の自由な裁量に委ねられるものです。したがって、望めば確実に許可を得られるとは限りません。
入国管理局が公開しているガイドラインでは、
在留特別許可の許否の判断に当たっては、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、家族状況、素行、内外の諸情勢、人道的な配慮の必要性、更には我が国における不法滞在者に与える影響等、諸般の事情を総合的に勘案して行うこと
として記載されています。
(参考:「在留特別許可に係るガイドライン」(法務省入国管理局))
そのうち、許可を認める方向に働く積極要素と、認めない方向に働く消極要素をそれぞれ評価し、積極要素が上回る場合には許可の方向で検討するということです。
積極要素としては、
- 日本人または特別永住者の子であること
- 日本人または特別永住者と婚姻していること
- 難病などにより日本での治療を必要としていること
といった事情が挙げられます。
また、オーバーステイとの関係では、外国人が自ら地方入国管理官署に出頭したことも、積極要素となります。
なお、特別永住者とは、1991年に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により規定された在留資格を有する者を指します。
法制定の背景には、第二次世界大戦及び戦中日本の植民地政策が存在し、1952年のサンフランシスコ講和条約の発効により、日本国籍を離脱した在日朝鮮人、韓国人、台湾人及び子孫などが対象です。
消極要素としては、
- 重大犯罪により実刑に処せられたこと
- 売春や人身取引などを行ったこと
- 不正入国や退去強制処分を受けたこと
などが挙げられています。
詳しくは、以下のガイドラインをご確認ください。
(参考:「在留特別許可に係るガイドライン」(法務省入国管理局))
前述の通り、オーバーステイの場合はさまざまな手続きが必要です。在留特別許可は退去強制手続きの中で行われるものであり、必要書類も多岐にわたります。そのため、専門知識をもった弁護士へ相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年08月31日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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