外国人が日本で税金を払わないとどうなる?

外国人が日本で税金を払わないとどうなる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

日本国内で働く外国人の方は、日本人と同様に日本での納税義務があります。

この記事では、在留外国人の方が最低限知っておくべき税金の種類、二重課税を防ぐための外国税額控除についてまとめました。その上で税金を支払わない場合のリスクも解説しているので、日本の税金システムについて知りたい方はぜひ参考にしてください。

1. 日本に滞在する外国人も税金は支払わなければいけない

日本人ではなくても、日本国内で収入を得ている外国人労働者は、原則として日本の税金を支払わなくてはなりません。日本に長く在住している外国人はもちろんのこと、そうでない外国人も継続して日本で収入を得ている場合は、税金の支払い義務があります。

一方で日本にいる期間が短期であり、以下の条件を満たす場合は「短期納税者免税制度」が適用され免税となります。

  • 出身国と日本が「租税条約」を締結していること
  • 日本に滞在する期間が183日以内であること
  • 雇用主が日本に在住していないこと
  • 雇用主が給与をはじめとした費用の処理をしていないこと

日本はアメリカ、韓国や中国など多くの国と租税契約を締結しています。具体的な締結国については、以下の財務省の公式サイトでご確認ください。

(参考:「我が国の租税条約等の一覧」(財務省))

2. 在留外国人に支払い義務がある基本的な税金の種類

日本で働く在留外国人は、具体的にどのような税金を支払う必要があるのでしょうか。以下は、最低限覚えておきたい3つの基本的な税金です。

(1)所得税

所得税とは、文字通り収入から経費を引いた「所得」に対してかかる税金です。日本国内で所得がある人は必ず支払う税金で、毎年1月1日~12月31日までの所得に対して課税されます。

なお、在留外国人にかかる所得税は、日本国内での所得だけに限りません。以下の通り、区分によっては、海外の所得についても課税の対象となります。

永住者とは、居住者のうち非永住者以外の個人をいい、非永住者とは、居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいい、非居住者とは、居住者以外の個人(1年未満の短期滞在を予定している者)をいいます。

  1. 永住者:日本国内と海外で得た所得全てが課税対象
  2. 非永住者:日本国内で得た所得、海外で得た所得のうち日本国内で支払われた分、海外から日本に送金された所得が課税対象
  3. 非居住者:日本国内で得た所得のみ課税対象

所得税の額は、所得に対して一定の税率をかけて算出されます。所得が多いほど所得税も高くなる仕組みです。具体的な税率については、以下の国税庁の公式サイトでご確認ください。

(参考:「No.2260 所得税の税率」(国税庁))

(2)住民税

住民税とは、お住まいの市区町村が住民に対して行うサービスにかかる税金です。教育、福祉、救急、消防、ごみ処理など、さまざまな行政サービスは市区町村によって提供されています。住民税は、それら行政サービスの経費として使われる税金です。

住民税は、国籍に関わらず、前年の1月1日に各市区町村に住所がある個人に対して課税されます。住民税の計算方法は以下の通りです。

前年の所得金額×10%+均等割(市区町村によって異なるがだいたい5000円)

(3)相続税

相続税とは、亡くなった家族などから受け継いだ(相続した)財産に対してかかる税金です。相続税は相続する財産に対して一定の税率をかけて算出され、相続財産が多いほど税率もあがります。

相続税の税率や詳しい計算方法については、以下の国税庁の公式サイトでご確認ください。

(参考:「No.4155 相続税の税率」(国税庁))

なお、相続税の対象となるのは、日本国内にある相続財産だけではありません。仮に外国にある財産が相続税の対象にならないと、死亡する前に財産を外国へ持ち出せば、相続税を徴収できなくなってしまいます。

そのため、国外にある相続財産も、相続される側、相続する側のいずれかが日本に住んでいる場合は相続税の課税対象となります。反対に両者ともに日本を離れて10年を経過している場合は、国外の相続財産は課税対象となりません。「海外にある財産を日本に暮らしていない人が相続するので、相続税の対象ではない」と判断されるからです。

3. 外国税額控除とは

外国税額控除とは、日本と海外の二重課税を調整するための仕組みです。日本で暮らす外国人の場合、原則としてその人が海外で得た所得に対しても課税されます。一方で所得が発生した国の法律によっては、その国でも税金を支払う義務が発生してしまいます。

この場合は、同じ所得に対してその国と日本の二重で課税されることになってしまいます。そこで外国税額控除によって二重課税を排除しています。

外国税額控除の詳しい条件や計算方法については、以下の国税庁の公式サイトにまとめられています。

(参考:「No.1240 居住者に係る外国税額控除」(国税庁))

4. 在留外国人が日本で税金を支払わない場合のデメリット・罰則

これまで解説した通り、在留外国人は、日本のルールに従い税金を支払う必要があります。それでは、日本で適切に税金を支払わないとどうなるでしょうか。以下が主なデメリットです。

(1)在留資格の更新が難しくなる

在留外国人が日本の税金を支払わないデメリットとしてまず挙げられるのは、在留資格の更新が難しくなることです。きちんと税金を支払っていない場合、在留資格を更新する際の審査が厳しくなります。審査を通過できず在留資格の更新ができなければ、母国へ帰らないといけません。

(2)追加で延滞金を支払うことになる

税金の滞納が続くと、日本人と同様にペナルティーとして延滞金を追加で支払う必要が生じます。さらに滞納の期間が続けば、支払えない税金の補てんとして財産を差し押さえられてしまうこともあります。

5. 支払えない場合は弁護士に相談

税金を支払うのが困難な場合は、弁護士に相談することを検討してみてください。弁護士は、在留資格の更新手続きを含めて相談に乗ってくれるほか、代理で手続きを行ってくれることもあります。

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  • こちらに掲載されている情報は、2023年08月14日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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