学校の完食指導は体罰になる? 弁護士が解説

学校の完食指導は体罰になる? 弁護士が解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

完食指導は本来、子どもの健全な成長を願って行うものですが、行き過ぎた完食指導は体罰にあたるおそれがあります。

本コラムでは、完食指導の問題点や体罰となるケースを解説すると共に、子どもが体罰を受けていると疑われる場合の相談先を紹介します。

1. 完食指導とは

完食指導とは、一般的に学校などの教育現場で提供された食事(給食)を残さず食べるように、子ども(児童生徒)に指導することです。基本的には「食べ物を大切にする」「食事の好き嫌いをなくす」といった教育的観点から行われることがほとんどです。

食べ物(資源)を大切にしようという教えは、環境問題などに対する目を向けさせることにつながります。また、食事の好き嫌いをなくすことは、児童生徒の健康な発育のうえで大切です。そのため、完食指導それ自体は悪いことではありません。しかし、この完食指導が強引な仕方で行われることもあるために、最近では完食指導のあり方や必要性について疑問視する声が社会で出始めています。

(1)完食指導の問題点とリスク

「給食を食べ終えるまで昼休みに入るのを許さない」「給食を残した児童生徒を晒(さら)しものにする」といったような行き過ぎた完食指導は、児童生徒の心身にさまざまな問題を引き起こすおそれがあります。

たとえば、無理に給食を食べさせられた結果、児童生徒が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症することがあります。これは強い恐怖やショックなどを体験することで、その出来事にトラウマが残ってしまう症状です。PTSDを発症すると、食事のたびにそのときの恐怖を思い出してしまい、拒食症になったり、人前で食事ができなくなってしまったりすることも考えられます。

あるいは、行き過ぎた完食指導の結果、給食の時間や指導した教員、果てには学校そのものに恐怖を感じてしまい、不登校につながってしまうことも否定できません。完食指導は本来、児童生徒の心身を健全に成長させることを目的に行われるもののはずなのに、こうした結果を出してしまうのでは本末転倒です。このように行き過ぎた完食指導は、児童生徒の成長にかえって重大な悪影響を及ぼすリスクがあります。

2. 完食指導が体罰にあたる可能性があるケース

完食指導は場合によっては体罰にあたるおそれもあります。そもそも体罰とは、児童生徒の指導や懲罰にあたり、肉体的な苦痛を与えて従わせる行為のことです。典型的には、殴る、蹴るなどの肉体に直接的な痛みを与える行為が該当します。また、運動させすぎるなど、肉体に過度の疲労や苦痛を与える間接的な行為も体罰です。

ただし、どこからどの範囲までが体罰に当たるかは、児童生徒やそのときの状況などによって左右されます。たとえば、10周、100周と児童生徒の体力の限界を明らかに超えるほど走らせたとしたら、体罰にあたる可能性が高いでしょう。児童生徒が行ったいたずらに対して、その懲罰の程度が適正であるかも問われます。

(1)完食指導が体罰にあたるケース

上記のように、教員による指導や懲罰が体罰か否かの判断は、その児童生徒の状況などの諸条件を個別に考慮する必要があります。そしてこれは完食指導についても同様です。

完食指導が体罰にあたる可能性があるわかりやすいケースとしては、嫌がる児童生徒の口に無理やり食事を押し込む行為が挙げられます。このような行為は、児童生徒に肉体苦痛や不快感を直接的に与えるものであるため、体罰に該当すると考えられます。

また、児童生徒がすでに満腹になっているにもかかわらず、それを無視して精神的な圧力をかけて、強制的に給食を食べさせ続けることも体罰になりえます。どれだけ食事を食べられるか、どのペースで食事を食べることができるのかは、児童生徒それぞれで異なるので、そうした個別事情を考慮せずに無理やり食事させるのは、肉体に過度な負担を与える危険な行為です。そのため、教員は完食指導を行う際には、完食させること自体を目的化しないように注意しなければいけません。

3. 子どもが体罰を受けている場合の相談先は?

体罰に該当するおそれのある完食指導に自分の子どもが直面した際、適切な相談先を知っておくことが重要です。

以下では、このような場合に頼れる相談窓口を紹介します。

(1)学校

まずは、完食指導をしている教員自身に指導方法を見直すようにお願いしましょう。それでも改善されない場合は、校長や教頭、学年主任、保健教諭、スクールカウンセラーなどに相談するのがおすすめです。他の教員から行き過ぎた指導を注意されることで、問題の教員も完食指導のあり方を見直す可能性があります。

(2)教育委員会

学校が対応してくれない場合は、学校の上位機関である教育委員会に相談するのも手です。体罰や過度な完食指導が行われている事実を教育委員会に伝えることで、委員会側で学校へ適切な指導をしてくれる可能性があります。

(3)子どもの人権相談窓口

子どもの人権に関する国や自治体の相談窓口やNPO法人なども、体罰についての相談に対応しています。法務省が管轄している「子どもの人権110番」などが代表例です。

行き過ぎた完食指導はかえって子どもに悪影響を与える体罰になりえます。もしも自分の子どもにそうした問題行為が行われたら、学校やその他の機関に相談し、今後そのようなことが起きないように必要な措置を講じましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2023年10月30日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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