「ブラック部活」の特徴は? 法的問題はないの?

「ブラック部活」の特徴は? 法的問題はないの?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

部活動は学校教育の重要な一部であり、生徒の人生にも大きな影響を与えます。しかし、中には過度の練習や不適切な指導などが横行する部活もあります。

本コラムでは、ブラック部活の特徴をはじめ、ブラック部活が抵触する可能性のある法的問題などについて分かりやすく解説します。

1. ブラック部活とは? 特徴と悪影響

「ブラック部活」とは、過度の練習量や不適切な指導・管理などにより、生徒の心身の健康を害するおそれのある部活動を指す言葉です。ブラック部活には、主に以下の特徴があります。

  • 過度の練習時間や練習量を強制する
  • 体罰や言葉による暴力を指導に用いる
  • 生徒の体調不良や能力差、熱中症などのリスクを無視する
  • 過度に結果を重視して生徒にプレッシャーをかける
  • 特定の生徒をえこひいきする
  • パワハラ・セクハラなどのハラスメント行為をする

これらの行為は教師から生徒だけでなく、先輩から後輩へと行われることもあります。また、特定の部員を狙い撃ちして、部活動内でいじめに近い状態になっているなど、さまざまなケースがあるのが実情です。

このような状況が引き金となって、生徒の心身には大きな負担が生じ、部活動中に事故やけがが発生するリスクが高まります。学校生活を楽しめない、プライベートの時間や勉強時間を確保できないという影響が出るほか、不登校につながることも懸念されます。

2. ブラック部活に法的問題は? 損害賠償請求できるのか

上記のようにさまざまな問題を含んだブラック部活ですが、現状ではブラック部活そのものを取り締まる特定の法律は存在しません。しかし、体罰をはじめとする部活動内での不適切な指導は、以下の刑法上の罪に抵触する可能性があります。

(1)該当する可能性のある罪

①傷害罪・暴行罪(刑法204条・208条)

「殴る」「蹴る」「叩く」などの体罰行為が部活動であった場合、加害者を傷害罪や暴行罪に問える可能性があります。基本的には、その暴力行為によって傷害(負傷)が生じた場合は傷害罪、傷害に至らなかった場合は暴行罪が適用されます。傷害罪の罰則は15年以下の懲役または50万円以下の罰金、暴行罪の罰則は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

②強要罪(刑法223条1項)

強要罪は、脅迫や暴力によって他者を無理やり従わせる行為に対して科せられます。たとえば、「課題が終わるまで休憩や水分補給を禁じる」「部活を休むと公衆の面前で罵倒したり晒(さら)し上げたりする」という行為は、強要罪に抵触する可能性があります。強要罪の罰則は、3年以下の懲役です。

③業務上過失致死傷罪(刑法211条)

部活動の指導者が、業務上必要な注意や措置を怠った結果、生徒が負傷したり亡くなったりすると、業務上過失致死傷罪に該当する可能性があります。猛暑日に休憩や水分補給を許さずに過酷な練習を実施し、生徒が熱中症で倒れた場合などがその代表例です。この罪に該当した場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

(出典:「刑法」(e-Gov法令検索))

(2) 損害賠償も請求できる

教員(学校)の故意や過失が原因で不当な不利益を受けた場合、被害者である生徒やその保護者は、加害者に対して治療費や慰謝料などを求める損害賠償を請求できます。どのくらいの金額を請求できるのかはケースごとに異なるので、弁護士などに相談しましょう。

(3)損害賠償請求の対象

部活動で刑法に抵触するトラブルが発生した場合、そこで刑事罰の対象となるのは直接の加害者(顧問の教員や監督、コーチなど)です。ただし、損害賠償の請求先に関しては、学校が国公立か私立かによって変わります。

国公立の場合、損害賠償責任があるのは、教員個人ではなく学校の設置者である国や自治体です。これに対して、私立の場合は教員個人または学校が賠償責任を負います。

3. ブラック部活に困ったら

自分や自分の子どもがブラック部活に困っている場合、どうしたらよいのでしょうか。もちろん退部するのもひとつの選択肢ですが、その競技やチームメイトに思い入れがある場合は、簡単に決心できるとは限りません。

そこでまずは、自分のクラス担任や学年主任、スクールカウンセラーなど、その他の教職員に相談することをおすすめします。先述のとおり、ブラック部活を放置して深刻な問題が生じた場合は、指導教員だけの責任だけでは済まないので、何らかの改善が期待できます。

もしも学校側に自浄作用がない場合は、教育委員会への相談を検討しましょう。あるいは、競技団体が指導者の体罰などに関する相談窓口を設けている場合もあります。

また、ブラック部活によってすでに深刻な被害が生じており、学校側に対する法的措置を検討している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。ブラック部活の指導が法律に触れるか否かは複雑な問題であるため、法律の専門家に意見を求めましょう。

弁護士ならば適正な損害賠償額なども提案してくれます。また、当事者同士で話し合っていると、感情的になって議論が難航しがちですが、弁護士を交渉役に立てればスムーズに話し合いを進められます。

部活動は学校生活を彩ります。ブラック部活の問題に直面した際には、一人で悩まず、周囲の人へ積極的に相談しましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年01月30日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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